中村勘九郎:直情型の佐助に「早死にするかも」 映画「真田十勇士」主演

映画「真田十勇士」について語った中村勘九郎さん
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映画「真田十勇士」について語った中村勘九郎さん

 2014年に上演された同名舞台を映画化した「真田十勇士」(堤幸彦監督)が22日に公開された。今作は、天下の名将と名高い真田幸村が実は腰抜けの武将だったという設定で、幸村を本物の立派な武将に仕立てるため、猿飛佐助ら十勇士が奮闘する姿を描く。舞台に引き続き主人公・佐助を演じるのは歌舞伎俳優の中村勘九郎さん。霧隠才蔵を松坂桃李さんが演じるほか、大島優子さん、永山絢斗さん、石垣佑磨さん、加藤雅也さんらも出演。映画公開と同時期には舞台も上演される。佐助役の勘九郎さんに話を聞いた。

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 ◇映画と舞台では佐助の演じ方に違い

 今作で佐助を再び演じた勘九郎さんは、「初演のときは回し役やボケ担当、ツッコミだったり(佐助を演じるにあたり)いろいろ入れるなど、割と自由にいることが佐助でした」と振り返り、「映画ではそれは封じました。映画をやりながら(舞台でいろいろやったことは)やり過ぎだったかなと自分で反省していました(笑い)。(映画は)余計なことは一切やっていないです」と演じ方の違いを語る。

 その違いはセットや世界観にもおよび、「舞台ではプロジェクションマッピングを使っていましたが、岩のセットがあって、それが動いて大坂城の中になったり、籾蔵(もみぐら)になったりとお客さまにもイメージをしていただく」といい、それに比べて「映画は作り込まれたセットの中で演じたお陰で役者同士のイメージが合うというか、籾蔵は特にそうですけど堤さんはこういうイメージでやっていたんだなというのが分かった」と語る。

 さらに、「舞台でも目というのはうそをつけないので、籾蔵をイメージして見ていたけれどおのおのイメージが違ったと思うんです。しかし、今度の舞台版では、(役者同士が映画で見たセットをイメージして)籾蔵を同じような感じで見られるので、リアリティーというか入りやすくはなるのでは、と思います」と分析する。

 ◇撮影現場で滑舌をよくするためのゲームで盛り上がる

 今作では「エアラム」という圧縮した空気の力でワイヤを引っ張り人や物を飛ばすスタント機材を使っているが、「ロイター板(踏み切り板)とも違って、ポンプにエアを注入して圧縮させて、乗ると発動して押し上げてくれるのですが、まあ怖かった」と勘九郎さんは苦笑い。続けて、「レベルによって飛ぶスピードが違って、細かい秒数で調節しないと後ろに吹っ飛ばされちゃう」と説明し、「エアラムは後藤又兵衛(佐藤二朗さん)の頭を飛び越えるところで使ったのですが、ワイヤに見えてしまうかも。あれは(エアラムを使って)ちゃんと飛んでるんです(笑い)」と力を込める。

 ほかにも爆発の中を走ったり飛び跳ねたりと多彩なアクションを披露しているが、「冬の陣では真田丸攻略のために徳川兵が来るシーンの中で、櫓(やぐら)の上から参戦するところで階段をジャンプして飛び降りたんです」と明かすも、「映像を見たら僕のミスで全然映っていなかったので階段で下りればよかったし、そうすればそのあと息切れしないでアクションができたなと(笑い)」と振り返る。

 冬場に行われたという撮影現場では十勇士のメンバーと口を動かしてせりふをかまないように、「『炙(あぶ)りカルビ』など、言いにくい言葉を言うゲームをしていました」と話し、「“あぶりかぶり”になっちゃうのですが、うまくなってくると5回連続で言ってみたりしていました。ほかにも『シャア少佐』というのもありましたが、『きゃりーぱみゅぱみゅ、はまだばみゅばみゅ』というのが一番難しかった」と楽しそうに笑う。

 ◇堤監督の演出に「気が抜けなかった」

 真田幸村が実は腰抜けだったという衝撃の設定に、初演時に脚本を読み笑ったという勘九郎さんは、「特に今年はNHK(の大河ドラマ)でもやっているので、映画で初めて見る方は幸村のキャラクターに驚くのでは」と指摘し、「教科書に書いてあったり、いろんな方たちが調べているけれど、武将たちの性格などは本当のところは分からない。だから、うそか真(まこと)か、真かうそかというのがテーマなんだなと思いました」と持論を語る。

 そんな幸村を演じるのは加藤雅也さんだが、「最高です。普段の雅也さんが、まさにもう幸村です」と評し、「二枚目なのにしゃべりは面白いという加藤雅也さんの魅力をどれだけ伝えられるかというのが、僕たちのこれからの最大の目標。本当に面白い人です」とたたえる。

 舞台と映画を共に手がける堤監督については、「初演のとき(脚本の)マキノ(ノゾミ)さんがお書きになった十勇士のキャラクターを、より深めてあのキャラクターにしたのは監督」と勘九郎さんは言い、「それだけでもすごいと思いましたが、映画の撮影では出てくる言葉が面白い」と言ってうなずく。「仙九郎(石垣さん)が逆さまで登場するのですが、本番の直前に『逆さまじゃねーか』とツッコんでほしいと」と監督からオーダーされ、「普通のことをツッコむだけですけど、なんか面白かった(笑い)。そういうのが本当に直前に出てくるので、気は抜けませんでした」と振り返る。

 ◇映画の見どころは「親子の愛」

 今作について、「スケールが大きくてエンターテインメント超大作となっていますが、核となっているのは親子の愛」と勘九郎さんは切り出し、「幸村と(真田)大助(望月歩さん)もそうだし、淀殿(大竹しのぶさん)と(豊臣)秀頼(永山さん)という関係もある」と説明する。幸村が大助に思いの丈を明かすシーンでは、「幸村の親子関係を見ていて憧れだったり、うらやましさ、ああよかったという気持ちが自然と出てきた」と勘九郎さんは明かし、「愛に飢えている人たちが十勇士として集まっていた、そういう人たちを佐助は集めたのではと思いました」と分析する。

 自身の子供との関係性を聞くと、「妻にはずるいと言われます」と明かし、「普段、何かあれば妻が怒るのですが、家に帰ってきた僕がちょっと優しかったりすると、(子供が)『お父ちゃま』ってなってずるいと(笑い)」と勘九郎さん。来年には子供たちの初舞台が決まっているが、「稽古(けいこ)するのも楽しみ。今は子供たちといる時間が一番楽しいし、疲れます」と優しそうな父の顔を浮かべる。

 佐助という役の魅力を「気持ちがいい」と目を輝かせ、「気持ちがすぐに行動にいく人なので、こういう人になれたらいいなと思いますし、こういうふうになったら早死にするんだろうなと思ったりもします(笑い)。自由な人なので、憧れもあります」と思いをはせる。舞台の再演も控えるが、「映像になるとものすごくカッコよくなるので、再演するのは恐怖とプレッシャーでしかないです」と話し、「あとは一幕を映画のようにアニメーションにしていただきたいなと。一幕が大変なのでぜひアニメーションに(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに語った。映画は22日から全国で公開中。

 <プロフィル>

 1981年10月31日生まれ、東京都出身。87年に二代目中村勘太郎を名乗り初舞台。2012年には新橋演舞場「二月大歌舞伎」で六代目中村勘九郎を襲名。歌舞伎だけではなく、現代劇や映画、ドラマなど幅広く活躍。17年には出演した映画「銀魂」の公開を控えている。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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