ミュージカル俳優でユニット「StarS(スターズ)」としても活躍する井上芳雄さんが、柴咲コウさん主演のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」に、5日放送の第5回「亀之丞帰る」から登場する。演じるのは、高橋一生さん扮(ふん)する小野政次の弟・玄蕃(げんば)。今回が時代劇初挑戦で「普段から日本人を演じることすら少ないですし、最初は海外旅行に来ているみたいだった」といいながらも、「着物を着て、かつらをかぶった瞬間、自分は日本人であって、何の努力をしなくても日本人にしか見えないっていうのが新鮮だった」と驚いたという井上さんに、大河ドラマや役への思いを聞いた。
ウナギノボリ
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「おんな城主 直虎」は56作目の大河ドラマ。激動の戦国時代に男の名を名乗り、井伊家の家督を継ぎ“おんな城主”となった女性・井伊直虎の生涯を描く。直虎は、幕末の大老・井伊直弼(なおすけ)の先祖で、徳川家康の重臣・井伊直政の養母にあたる人物。井伊家当主・直盛の一人娘として生まれるが、幼くして許婚(いいなずけ)と生き別れ、その後、出家。やがて男の名で家督を継ぎ、今川、武田、徳川が領地を狙う中、知恵と勇気を頼りに、仲間と力を合わせて国を治め、幼い世継ぎの命を守りながら、生き延びていく……というストーリー。
井上さんは今回が大河ドラマ初出演で「最初とてもうれしくて。大河に出られるって、これはすごいことだなって」と大喜びしたという。所作(しょさ)など「知らないことばかりで、ドキドキした」というが、「人間を演じるという意味では変わらないので、分からないことはたくさんあるんですけれど、とても興味深いと思いました。セットもすごくて、観光客のようにキョロキョロしながら(笑い)、とても楽しくやっています」と明かす。
ミュージカルでは「外国人を演じることが多い」という井上さんは「いかに顔の彫りを深く見せるかとか、日本人じゃなく見えるかを努力してきた」といい、「着物を着て、かつらをかぶった瞬間、自分は日本人であって、何の努力をしなくても日本人にしか見えないなっていうのが新鮮だった」と真逆の世界観を満喫している様子。「そのままで日本人に見えるなんて、なんてすてきなことなんだろうって」と笑う。
時代劇ならではの様式や動きの制限、気持ちの表し方についても「制約があるからこそ面白いですし、やっていくうちに(『演じる』という意味では)やっぱり変わらないなってところに戻る」といい、「初めて甲冑(かっちゅう)を着た時もうれしくて。殺陣も“和モノの殺陣”は初めてだったんですけど、出来上がったものを見たら、うまく切り取ってくださって、すごい迫力だなって」と振り返っていた。
玄蕃は、井伊家筆頭家老で“親今川派”の小野政直(吹越満さん)の次男。屈託のない朗らかな性格で、かつての父と同じような立場に追い込まれていく兄の政次が唯一、本音をもらすことができる人物として描かれていく。井上さんは「立場、生まれ、家柄がほとんどを占める時代で、思ったことを素直に口にする現代っぽい人物」と印象を語る。「弟の気楽さというのか分からないんですけれど、出世を望むわけでもなく、妻のこともすごく愛して、すごく今っぽい。『愛』って言葉をすぐ使ってしまうような、すごいすてきな人ですね」と共感する。
政次役の高橋さんより実は年齢が一つ上で「弟に見えるのかなって、考えたりもした」というが、「一生君はすごくどっしりとしているというか、落ち着いていて、すごみもある。コントラストはつけやすかった」と話す。また「同じ立場で同じ苦しみを分かち合いつつ、玄蕃はお兄さんほど背負っていない。だからこそ見える景色、出せる意見はあると思う。お兄さんのプラスにもなっているので、いい弟だと思う」と“自画自賛”し、愛する妻・なつについては「(演じている)山口紗弥加さんとは同い年で、出身も一緒で、隣の中学だったらしくて、運命のようなものを感じました」とうれしそうに語った。
大河ドラマで時代劇に触れ、「家の問題ってすごく興味深いなと思った」という井上さん。「その存在の大きさ、誰についているのか、政治的な問題ですよね。多少違いはあれど現代でもあることで、ある種、会社みたいなものなのかなって。大会社があって、子会社があって、監査役がいて。構造としてはいつの世も強いものについていかざるを得ない。でもどこかで反旗を翻す人たちがいて。桶狭間なんかそうですけど、『こんなのは楽勝』と思っていたら、『こんなはずじゃなかった』ってなる……。歴史は繰り返されているんだな」としみじみと話す。
また昨今、井上さんのようなミュージカル俳優がドラマや映画、時代劇へと活躍の場を広げていることについては、「それこそ(昨年の)『真田丸』には新納慎也さんとか出ていたので、すごいな、よかったなっていうのと、あんまりいい役じゃなければいいなってちょっとジェラシーもあった(笑い)」と冗談めかして語りつつ、「『StarS』の中では僕が最初に大河に出られて、(山崎)育三郎が先じゃなくてよかったなって(笑い)。心が狭い話なんですけど、すごく気になります」とライバル心をのぞかせた。
最後にこの「おんな城主 直虎」でどんなところに注目してほしいかと聞くと、「まずは和装の自分を見てほしいし、日本人だったんだなって思ってもらえたらいいなって」とにやり。さらに「役柄としては若く、弟の役っていうのもあまりやったことはないので、やっていて新鮮で楽しいですし、普段の役柄とは違うところを見てほしいです。志半ばで亡くなってはしまうけれど、『もっとこの人を見たかったな』って思っていただけたら」とアピールしていた。
NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」はNHK総合で毎週日曜午後8時ほかで放送。
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