タイガーマスクW:34年ぶり新作の復活の裏側 異色のルーマニア出身プロデューサーの素顔も

「タイガーマスクW」を手がけるギャルマト・ボグダンプロデューサー
1 / 36
「タイガーマスクW」を手がけるギャルマト・ボグダンプロデューサー

 正義の覆面プロレスラーとして知られるアニメ「タイガーマスク」の約34年ぶりの新作「タイガーマスクW」。テレビ朝日ほかで放送中で、4日深夜放送の第17話「甘ったれんじゃねえ!」の平均視聴率が1.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、深夜アニメとしては異例の高視聴率を記録するなど人気を集めている。同作のプロデューサーを務めるのが東映アニメーションのギャルマト・ボグダンさんだ。ボグダンプロデューサーに、復活の経緯、新作の魅力、ルーマニア出身で大学進学のために来日したという自身の“異色の経歴”について聞いた。

ウナギノボリ

 ◇これまでも復活を望む声もあったが…

 「タイガーマスク」は、梶原一騎さんと辻なおきさんのプロレスマンガが原作で、1969年にテレビアニメ化。81~82年に「タイガーマスク二世」も放送され、2013年には俳優のウエンツ瑛士さん主演で実写映画化された。「タイガーマスクW」は「タイガーマスク二世」以来、約34年ぶりの新作テレビアニメで、現代を舞台に、初代タイガーマスク・伊達直人が残した“遺産”を受け継いだ2人の若きプロレスラーの活躍を描いている。

 「タイガーマスクW」は、約34年ぶりの新作だが、これまでも東映アニメーション内で、復活させる企画が度々挙がることもあったという。ボグダンプロデューサーが「復活したい作品の中で名前はよく挙がっていたし、アニメーターから『やりたい!』という声も多かった。ただ、当時とはプロレスが変わっているし、中身も今の時代にはリアリティーがなさすぎるなど、ハードルが高かった」と話すように、なかなか実現しなかった。

 今回、復活に至った経緯を「テレ朝さんの方でもプロレスに力を入れたいという人が多く、新日本プロレスにスポンサーになっていただけた。スポンサーができたことで、ハードルを突破できた」と説明する。

 プロレス好きの女性の“プ女子”が話題になるなど、最近プロレスが再注目されているが、ボグダンプロデューサーは「確かに女性ファンは増えていますが、私たちとしては、あんまり意識はしていないですね。テレ朝さんの方は、そういう意識はあるかもしれませんが。私たちは中身、クオリティーのことを考えています。プロレスファンとアニメファンはちょっと違う。技や実況など細かいところにこだわることで、プロレスファンが見ても楽しめるようにしています」と語る。

 ◇熱さが伝わるアニメに

 そもそも「タイガーマスク」は子供向けだった。「『W』は、深夜アニメなので大人向け。主人公を2人にすることで、ストーリーが複雑になるし、深みも出る。現代性も意識した」と現代的なアレンジを加えることで、リブート(再起動)できた。

 「タイガーマスクW」は、迫力のあるバトルシーンが魅力の一つだ。ボグダンプロデューサーは「プロレスシーンを描く絵の枚数が1話の3分の1くらいを占める。大変ですよ。ただ、東映アニメーションはバトルシーンの演出のノウハウがたまっている。アクションは得意ですからね」と自信を見せる。

 スイーツ好きの真壁刀義選手が本人役で登場した回は、スイーツに関するコミカルなシーンもあるなど“ネタ”もファンの間で話題になっている。「多少ではありますが、たまに変化球を入れています。女性からも好評なんですよ」と話す。

 また「プロレスの深さ、面白さを感じてほしいですね。スタッフ、声優、みんながプロレスの大ファン。アニメーターから『やりたい!』と連絡が来ることもあります。熱さが伝わるとうれしいですね」と作品への思いを語る。

 ◇ボグダンPが来日した理由

 ボグダンプロデューサーの経歴は異色だ。1968年12月30日生まれの48歳で、ルーマニア出身。父がハンガリー人、母がルーマニア人である。「ルーマニア出身ですが、社会主義のドタバタに巻き込まれて、ハンガリーに亡命しました。それから日本に留学したんです。千葉大に入り、大学院まで行きました」と来日の経緯を説明する。

 子供のころはルーマニアで「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」「フランダースの犬」「カリメロ」などが放送していたことから、日本のアニメに親しんでいたという。大学での専攻は、工業デザインで「日本伝統工芸のデザインを勉強していました。2年間くらい職人の方と和紙を作ったり。今は(その経験が)あまり生かされていないですね(笑い)。地道に作業するところくらいでしょうか?」と笑う。

 アニメ制作に関わることになったのは「大学を卒業し、知人から(アニメ制作会社の)ゴンゾが作ったGDHという会社に『入らないか?』と誘われたんです。短かったですが、2年間くらいいて、三船敏郎さんの三船プロダクションに入りました。その後、東映アニメーションに入った。かなり変わった経歴ですね」と明かす。

 日本のアニメの魅力について聞くと、「アニメはいろいろある。3DCGも人気ですが、2Dもなくならない。アニメと一くくりにするのは難しいですね」と話す。「タイガーマスクW」の今後の展開はもちろん、“異色”の経歴のボグダンプロデューサーの今後の活躍にも注目したい。

 「タイガーマスクW」はテレビ朝日で毎週土曜深夜2時半に放送。

写真を見る全 36 枚

アニメ 最新記事