マイケル・ファスベンダー:“世界で最も美しい顔”が「アサシン クリード」主演&プロデュースで得たもの

映画「アサシン クリード」について語ったマイケル・ファスベンダーさん
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映画「アサシン クリード」について語ったマイケル・ファスベンダーさん

 映画「X-MEN」シリーズ(2011、14、16年)や「スティーブ・ジョブズ」(15年)などに出演していたことで知られるマイケル・ファスベンダーさんが主演し、人気ゲームを基に作り上げた映画「アサシン クリード」(ジャスティン・カーゼル監督)が3日に公開された。現代を生きる主人公が、遺伝子を操作する装置“アニムス”によって自らの祖先の運命を追体験しながら、秘宝“エデンの果実”を巡る戦いに身を投じていくミステリーアクションだ。米映画サイト「TCCandler.com」が毎年発表する“世界で 最も美しい顔100人”の男性部門1位に輝いたことがあるイケメンで、今作では主演のほかプロデュースも担当したファスベンダーさんが作品について語った。

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 ◇「居心地悪かった」ワイヤアクション

 映画「アサシン クリード」は、人間の暴力性を取り除く力があるとされる歴史的秘宝“エデンの果実”を巡るテンプル騎士団とアサシン教団の戦いを描いている。エデンの果実を手に入れ、人間から自由意志を奪い人類を支配しようともくろむテンプル騎士団と、それを阻止しようとするアサシン教団。ファスベンダーさんは、15世紀ルネサンス期のスペインで戦うアサシン教団の一員であるアギラールと、現代を生きるアギラールの末裔(まつえい)カラム・リンチの二役を演じている。

 ファスベンダーさんは、「アギラールは肉体的、カラムは心理的」とそれぞれのキャラクターを位置づける。その上で「アギラールには仲間がいるし、所属する組織もあり、(エデンの果実の機密を守るという)使命感を持っている。一方のカラムは人間不信で、使命感どころか何をしていいかも分からない。そのカラムが、アギラールの運命を追体験することで渋々ながらリーダーになっていき、やがては人生における大きな意義を見つけていく」と両者の特徴を説明する。

 ストーリーは映画のために書き下ろされたが、リンチが“アニムス”につながることで祖先の体験を追体験するのはゲームと同じだ。とはいえ、「ゲームの中では(アニムスは)単なるイス。それではカラムが受け身の人間になってしまう」ことから、映画ではロボットアームにつり上げられる設定にした。アームはCGで付け足したそうだが、ワイヤにつられてのアクションは、「かなり居心地が悪かった」と打ち明ける。にもかかわらず時に爆発的、時に静謐(せいひつ)さを伴う「伸縮するゴムのような」洗練されたアクションには圧倒される。

 ◇白いTシャツを着ているわけ

 ファスベンダーさんは、今作でプロデューサーも務めた。「マクベス」(15年)で一緒に仕事をしたカーゼルさんを監督に推薦したのもファスベンダーさんだ。過去にもプロデューサーを務めたことはあった。例えば、自身の会社が製作した「スロウ・ウェスト」(15年)。しかし「あれは小さい作品で、今回はスケールが違った。その意味ではまったく新しい体験だった」と話す。

 今回の経験で得たものを聞くと、いの一番に「白髪(笑い)」を挙げたあとで、こう続けた。「例えば、すごく重要だと思って脚本に書いたシーンが、実際撮影してみるとビジュアルとして面白くなかったり、逆に、ほんの1行しか書いていなかったものや即興でやったことが、撮影するとすごくよかったり。そういうチャンスを逃さないよう常に意識していなければならなかった。あと、交渉力も学んだ。情熱だけでは映画はできない。外交的手腕というのかな、そのへんの技術も必要だった」と話す。

 アニムスにつながる時、カラムは白いTシャツを着ているが、実はファスベンダーさん自身は「本当はシャツなしでやりたかった」という。なぜなら、「肉体の曲線や動きが見えるし、美的にもその方がいいと思った。白いシャツでは動物的なものが表現できず面白くない」からだ。アスリートが身に着けるような体に密着したボディスーツも考えたそうだが、「うまくいかなかった」という。ただ、上半身裸になると「毎回追体験のとき、体につないだハーネスやワイヤを消さなければならず、それにはすごくお金がかかる」という。そんなふうに製作費について言及するあたりにプロデューサーの顔がのぞく。ともかくそんな理由からシャツを着用したアクションとなったわけだが、最後の戦いに関しては例外だった。「カラムが自分の意志で戦いに挑むんだ。あそこでシャツを脱いだのは、ここで行くぞ!という彼の決意表明なんだ」と明かした。

 ◇女性に強いポジションを与えた

 ところで今作には、マリオン・コティヤールさん演じるアニムスの開発者ソフィア・リッキン博士や、アギラールと行動を共にするアサシン教団のメンバーで、アリアーヌ・ラベドさん演じるマリアなどの女性キャラクターも登場する。いずれも己の信念で行動する魅力的な女性だ。

「10年以上、俳優業をやっているけど、強い女性のキャラクターというのはすごく少ない。自分で決断し行動するのではなく、だいたいが、男性のリーダーシップの下にいるとか、男性のためにいるとか、そういう役のことが非常に多い。そこでこの映画には、自立した女性を入れようということになったんだ」と、彼女たちを登場させた経緯を語る。中でもマリアについて、「彼女はアギラールの師で、彼女がアギラールを指導した。彼の上に立つ存在にすることで、女性に強いポジションを与えたんだ」と説明する。ちなみに、ファスベンダーさん自身が考える魅力的な女性は「強くて、自立していて、ユーモアがある人」だそうだ。

 実はインタビュー前、写真はワンポーズ、短時間で撮るようにと指示されていた。そのため気難しい人だったらどうしようかと身構えていたが、実際のファスベンダーさんは終始にこやかで、筆者がアニムスを「アムニス」と言い間違えたことを謝ると、「大勢が言い間違えているから大丈夫(笑い)。マリオンは一度も正しく言えてなかったんじゃないかな」とジョークを交えてフォローしてくれた。ワンポーズ、短時間でという指示も、ファスベンダーさん自身、写真が苦手で、あれこれポーズをとらされると照れてしまうからで、それを避けるための配慮と判明。気さくな人柄と、時にはファンの間で“シャークスマイル”と呼ばれる笑顔を浮かべながらの受け答えで、その場にいた女性スタッフはもとより男性スタッフをも魅了していた。映画は3日から全国で公開。

 <プロフィル>

 1977年、独ハイデルベルク出身。2歳で母方の祖国アイルランドに移住。テレビシリーズ「バンド・オブ・ブラザース」(2001年)で注目され、映画デビューは「300<スリーハンドレッド>」(07年)。「SHAME-シェイム-」(11年)でベネチア国際映画祭男優賞受賞。「それでも夜は明ける」(13年)、「スティーブ・ジョブズ」(15年)で、それぞれ米アカデミー賞助演男優賞、主演男優賞にノミネートされた。他の出演作に「イングロリアス・バスターズ」(09年)、「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(11年)をはじめとする「X-MEN」シリーズ(14、16年)、「プロメテウス」(12年)、「悪の法則」(13年)、「FRANKーフランクー」(14年)など。「光をくれた人」(16年)の日本公開を3月31日に控える。また「プロメテウス」の続編「エイリアン:コヴェナント」は9月に公開予定。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)

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