注目映画紹介:「小さな命が呼ぶとき」 難病の子を持った父の家族愛と新薬開発の裏側

「小さな命が呼ぶとき」の一場面。(C)2009 CBS FILMS INC.
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「小さな命が呼ぶとき」の一場面。(C)2009 CBS FILMS INC.

 実話の映画化は、創作した物語よりも数奇なものが多い。これもそんな作品の一つだ。米映画「小さな命が呼ぶとき」(トム・ボーン監督)が24日、全国で公開される。難病の我が子を救うために製薬会社を設立した父親の奮闘を、新薬開発の舞台裏とともに描き出し、見事社会派とエンターテインメントを融合させている。ハリソン・フォードさんが製作総指揮で映画の企画段階から参加し、治療薬の開発に挑む変わり者の博士役を演じている。

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 会社員のジョン・クラウリー(ブレンダン・フレイザーさん)と妻の間には、3人の子どもがいる。長女と次男は、グリコーゲンが分解されず体内に蓄積される難病「ポンペ病」にかかっている。決定的な治療薬はなく死を待つのみ。長女は8歳の誕生日に容体が急変する。ジョンは苦悩したのち、ポンペ病研究者のロバート・ストーン博士(ハリソン・フォードさん)に連絡をとり、博士のいるネブラスカ大学にやって来る。やっとのことで博士をつかまえたジョンは、研究資金を出すので治療薬の開発にあたってほしいと切り出す……。

 難病の子どもはとっかかりに過ぎず、これは一つのビジネスを立ち上げる父親と研究者の一大プロジェクトのドラマだ。映画を支えているのは「何もしないで死を待つだけでいいのか」という父親の必死の思い。彼の熱意ある行動に見ていてグイグイと引き込まれる。一方で、ジョンのビジネスを冷静な視点で追っていて、普段見られない新薬開発の舞台裏にも興味がそそられる。ハートフルな家族の物語と、ベンチャー企業経営の難しさ、温かさとクールさの両面が味わえる映画だ。

 果たして薬はできるのか。研究には熱心だが協調性に著しく欠けるストーン博士のお陰で、一層ハラハラさせられる。タッグを組んだ父親と博士の関係が、一筋縄ではいかないあたりにリアリティーがある。

 「ベガスの恋に勝つルール」のトム・ボーン監督がメガホンをとった。骨太な脚本は「ショコラ」でアカデミー脚色賞にノミネートされたこともあるロバート・ネルソン・ジェイコブスさんが手がけた。24日からTOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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