「ナショナル・トレジャー」シリーズなどで知られるニコラス・ケイジさんと、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーさんによる超大作「魔法使いの弟子」(ジョン・タートルトーブ監督)が13日、公開された。「映画にはテレビドラマとは違う特別なものがなければならない」と語るブラッカイマーさんに話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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善なる魔法使いマーリンが邪悪な魔法使いモルガナに殺され、1000年以上もの間、後継者を探し続けてきたマーリンの弟子バルサザール(ケイジさん)。彼は、現代のニューヨークでついに後継者を見つけるが、それは気弱な物理オタクの大学生デイブだった。一方、モルガナの弟子たちもまた、世界を破滅させようと現代によみがえる。善の“マーリニアンズ”と悪の“モルガニアンズ”による魔法大戦争が、現代のニューヨークで巻き起こる。
今作は、1940年に製作されたディズニーの名作アニメ「ファンタジア」に収められた一編「魔法使いの弟子」が基になっている。この物語に魅せられていたケイジさんが、脚本家たちと第一稿を仕上げ、敏腕プロデューサーのブラッカイマーさんに持ち込んだ。
ジェイ・バルチェルさん(「トロピック・サンダー 史上最低の作戦」などに出演)ふんするデイブに魔法を教えるバルサザールをケイジさんが演じた。長髪に革のロングコートというダンディーな格好で、ユーモアが分かる弟子思いの師匠を好演している。そのケイジさんについて、「ザ・ロック」以来15年近くの付き合いになるブラッカイマーさんは「彼は、米アカデミー賞も受賞している才能あふれる俳優。どんな役にも完全に成り切ることができる。ニコラス・ケイジが演じていることを観客に忘れさせてしまう、賢い俳優だ」と賛辞を惜しまない。
ブラッカイマーさんといえば、ハリウッドではヒットメーカーとして有名だ。最近では、映画のみならず「CSI:科学捜査班」や「FBI失踪者を追え!」といったドラマシリーズの制作総指揮も務めている。ドラマではリアリズムに徹した犯罪捜査ものを、映画ではスケール感のあるダイナミックなエンターテインメント作を好んで制作する。テレビにせよ映画にせよ、「面白いキャラクターとテーマは必要」というが、映画はさらに、「劇場まで出向いてもらうという手間とお金を観客にかけてもらっている。そのため特別なものがなければいけない」と力を込める。
その“特別なもの”が、今作においては、ニューヨークを舞台に魔法戦争が巻き起こるというダイナミックな設定だ。その一方で、現代のニューヨークを舞台にしている以上、ある程度のリアリティーが必要となる。「だから、化学や物理学の考え方を取り入れることで、魔法を荒唐無稽(こうとうむけい)ではない、現実に根ざしたものとしてとらえるようにしたのです」という。
チャイナタウンのど真ん中で、中華祭のドラゴンが暴れ出したり、摩天楼がそびえる大都会の空を、生命を宿したクライスラービルのワシの彫像が飛び回ったりと、特撮を駆使したアクションシーンが次々と繰り出される。ブラッカイマーさん自身は、タイムズスクエア付近でのカーチェイスを「とてもよくできている」とお気に入りだ。その撮影は、深夜に道路を封鎖し、延べ10日間をかけたという。
今作は、話題の3D(三次元)映画ではなく2D(二次元)のみの上映。これにはブラッカイマーさんも「実は3Dで撮りたかった」とちょっと残念そうだ。「でも、これの製作に入ったときには、『アバター』がまだ世に出ていなくて、3Dにどれほどのインパクトがあるのか分からなかったし、(配給元の)ディズニーも3Dで撮る方針ではなかった。それにもちろん、製作費もかかるしね。いまなら迷わず3Dで撮るよ」と断言する。とはいっても、作品には「面白い脚本とキャラクターこそが大事」が持論のブラッカイマーさんだから、3Dでなくても十分楽しめる作品に仕上がっている。
「一つの作品にかかりきりになる監督より、いろんな作品にかかわれるプロデューサーのほうが性に合っている」と語るブラッカイマーさんが、現在製作中なのが、11年5月に全米公開予定の「パイレーツ・オブ・カリビアン4(原題Pirates of the Caribbean:On Stranger Tides)」だ。スタッフによる台本の置き忘れでネタの流出が懸念されたが、6月に撮影が始まり、「とても順調に進んでいて、(ハワイ諸島の)カウアイ島での撮影が終わり、先ごろ、オアフ島に移ったところ」といい、今回もハワイから来日した。多忙を極める中でのプロモーションだが、「この『魔法使いの弟子』は、日本のみなさんに楽しんでいただける映画だと思う。日本では、我々の作品はヒットしているので、今回もヒットを期待しています」と笑顔で語った。
<プロフィル>
1945年、米ミシガン州デトロイト生まれ。広告業界でキャリアをスタートさせたのち、映画界に進出。「フラッシュダンス」(83年)、「トップガン」(86年)といったヒット作を連発。ニコラス・ケイジさんと組んだ「ザ・ロック」(96年)、「コン・エアー」(97年)、ブルース・ウィリスさん主演の「アルマゲドン」(98年)などが大ヒット。ほかに「パール・ハーバー」(01年)、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ(03、06、07年)など。「ブラックホーク・ダウン」(01年)や「ヴェロニカ・ゲリン」(03年)といった社会派作品も手掛ける。「CSI:科学捜査班」「FBI失踪者を追え!」「コールドケース」など犯罪ドラマシリーズで高視聴率をマークしている。
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