女優の穂のかさん(21)が出演する舞台「結婚狂想曲」が、8~12日に新宿シアターサンモール(東京都新宿区)で上演される。舞台に立つのは、3月の「カフカの変身」での主人公グレゴール(森山未來さん)の妹グレタ役に次いで2作目。シュールな前作に対し、今回はラブコメディー。けいこの合間に、穂のかさんに話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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「結婚狂想曲」は、劇団「PU−PU−JUICE」の第10回公演で、脚本・演出を劇団の山本浩貴さんが務める。結婚式当日に、突然、新郎が結婚をやめたいと言い出し、新婦や集まった人々は大騒ぎ。なぜ新郎は結婚をやめたがるのか。そこには思いがけない秘密があった、というストーリー。新郎にドタキャンされる長女を浅見れいなさんが、次女を長渕剛さんの娘の長渕文音さんが、そして、三女を穂のかさんが演じている。
「浅見さん演じる長女が婚約を破棄されて、次女の文音さんは、結婚しているけど夫婦関係が冷え切っていて、私は私でバツイチ子持ちの役。3人それぞれがダンナさんとの間にいざこざを抱えている中で、ほれ薬が出てきて、みんながバラバラの相手を好きになっていく。そこからまた物語が二転三転していくんです」とストーリーを紹介した穂のかさん。09年の映画デビュー作「The Harimaya Bridge はりまや橋」でも、その後の初主演作「アンを探して」でも、演じたのはおとなしい少女だったが、今回は、バツイチ子持ちで、しかもバリバリのキャリアウーマン。
「しゃべれるくらいの子どもが2人もいるんです(笑い)。元夫のセリフの中に、結婚3年間は夢のように幸せだったじゃないか、とあるから、たぶん学生結婚して、17歳で妊娠して、いまは24歳か25歳くらい」と役を分析する。穂のかさん自身は、「ラブコメディー自体をやるのが初めてなので、ワクワク、ドキドキしつつ。今回は、怒ったり、声を荒らげたりする場面が多いので、どちらかというとこれまでの役より素に近いので、楽しんでやっています」とリラックスした様子だ。
実は、今回の三女役は、ある舞台のオーディションを受けたところ、残念ながらそこでは役を手にすることはできなかったが、今作のキャスティングディレクターの目にとまり抜てきされたという経緯がある。本人は「棚ぼた」と笑うが、穂のかさんの明るい性格と演技力が決め手になったことは間違いない。
共演の浅見さんと長渕さんについては、「お2人ともサバサバしていて、私も含めて男勝りの3姉妹という感じです。現場の雰囲気も和気あいあいとして、笑いの絶えないけいこ場です」と話すなど、本当に楽しそう。
初舞台作「カフカの変身」では、「舞台での演技の仕方が分からなかった。(英国人演出家の)スティーブン・バーコフさんから、それは映像の演技だといわれても、何が映像の演技なのかが分からなかった」と振り返る。だがそこでの経験が実となり、内容も役柄もまるで違う今作の舞台を「すごく楽しい」と言えるまでになった。
演劇と映画の違いについて、「映像は太く短い。舞台は長く細い」と語る。「映像は、毎回毎回、瞬発力と集中力を試される。一方の舞台は持久力が必要だし、全体のバランスとチームワークをより求められる」。さらに「(舞台は)カメラによるアップなどがない分、声や体で表現しなければいけないという点で、映像とは根本的に違う。演技する上ですごく勉強になります」と話す。
もともと度胸はあるほう。初舞台を踏んだときも、幕が上がるまでは緊張していたが、幕が上がった瞬間、その気持ちはなくなった。「舞台は、本番のために練習をしてるわけですけど、死にものぐるいで練習してきたものを披露できる場があるんだということが、すごく幸せで、すごくぜいたくなことだと思えたんです」
2度めとなる舞台は「観客のみなさんには、このお芝居を通して、結婚に対してなんらかの価値観の変化があったり、結婚に対してもう一度向き合ってもらえたらうれしい。私自身は結婚願望はまるでないんですが(笑い)、この舞台をやることで、自分の結婚観がどう変わるのか楽しみです」とメッセージする。そして自身の演技については、「初めての気性が激しい役。みなさんにはじけた私を見てほしい。ラブストーリーもコメディーも初めてづくしなので一緒に楽しんでください」と意気込みを語った。
今年の穂のかさんのテーマは「追い詰められたい」。その言葉通り、「カフカの変身」では、バーコフ氏に「かなり追い詰められました」。そして、7月31日には21歳の誕生日を迎え、目標に挙げたのは「ステップアップすること」。デビューからこれまで2度、穂のかさんをインタビューする機会があったが、受け答えやコメントの内容は確実にステップアップしている。女優としての穂のかさんの成長がますます楽しみだ。
<プロフィル>
1989年7月31日、東京都出身。07年からCM、雑誌、PVに出演するなど活動を開始し、09年に日米韓合作映画「The Harimaya Bridge はりまや橋」(アロン・ウルフォーク監督)で映画本格デビュー。その後、主演を務めた「アンを探して」(宮平貴子監督)は、第5回アジアン・フェスティバル・オブ・ファースト・フィルムでグランプリにあたる最優秀作品賞と最優秀監督賞を受賞。また、3月には、「カフカの変身」で初舞台も踏んだ。