仲村トオル:「1本目の映画があって今日がある」俳優25年、亡き恩人の妻からの手紙に感動

 志水辰夫さんの傑作ミステリー小説が原作の「行きずりの街」(阪本順治監督)が20日公開され、丸の内TOEI1(東京都中央区)で行われた初日舞台あいさつに、主演の仲村トオルさんら出演者が登場した。俳優生活25年、50本目の映画に出演した仲村さんを祝って、映画出演デビュー作となった「ビー・バップ・ハイスクール」の故・那須博之監督の妻で脚本家の那須真知子さんからの手紙が紹介された。仲村さんは「25年前のあの1本目があって、いろんな意味で救われて、みんなに助けられて今日がある。いや、ありがとうございます」と感激した。

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 手紙が読み上げられた際、仲村さんは「僕にとっては、最初に出会った映画監督と脚本家だった。親とはちょっと違う、恩人という言葉以外見つからない。恩人です」と言葉を詰まらせる場面もあった。那須監督が何て言うと思うかと聞かれ、仲村さんは「『25年、結構続くもんだね』っていうと思います。俳優が続くか続かないなんて、可能性しか考えられない感じでしたから」と当時に思いをはせていた。

 今回、仲村さんが演じるのは名門女子高の教師を務めていた波多野和郎。生徒の手塚雅子(小西真奈美さん)との卒業後の結婚をスキャンダル扱いされ、教職を追われ、雅子とも離婚したという過去を持っている。その後、郷里で塾講師を務めていたが、東京で音信不通となっている塾の教え子広瀬ゆかり(南沢奈央さん)の行方を追ううちに、事件に巻き込まれていく……という物語。

 舞台あいさつには、仲村さんのほか、小西さん、南沢さん、窪塚洋介さん、主題歌を歌うジャズシンガーのmegさん、阪本監督も登場した。小西さんは、現場での様子を「すごい高い緊張感が続いていた」と明かし、「クランクインが12年ぶりに会うシーンだったので、仲村さんに一度も会わずに芝居したのが逆によかった。女子高生役最後の制服姿を見に来てほしいです」とアピールした。南沢さんは「発する言葉一つ一つが大切だと思ったんですが、現場に入ったらまったく余裕がなくなった」と演技の難しさを話した。窪塚さんは「実直を越えて、愚直なぐらいの波多野を成立させた仲村さんの誠実さ、真摯(しんし)な姿勢に刺激を受けた。ハードルの高い、いい映画だったと思います」と仲村さんの演技を絶賛した。

 阪本監督は「原作は人の心をちゃんと描写して、なぜ人がこう動くのか、こう語るのかをちゃんと書かれていたので、なんとかその言葉を映像で表せないかチャレンジした。他に似たもののない作品になったと思います」と自信を見せ、仲村さんは「やるべきことはすべてやったというすがすがしい気分で初日を迎えられます」と充実した笑顔だった。

 映画は11月20日から全国で公開。映画の主題歌「再愛~Love you again~」は、湯川れい子さん作詞で、小室哲哉さんが作曲とアレンジを担当している。(毎日新聞デジタル)

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