塩谷瞬:「支援と教育が必要」東ティモールを訪問 「なんとかしなきゃ!プロジェクト」で

東ティモールへの訪問について語った塩谷瞬さん
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東ティモールへの訪問について語った塩谷瞬さん

 俳優の塩谷瞬さん(28)が、開発途上国の実情を伝え、市民参加型の国際協力活動を推進する活動「なんとかしなきゃ!プロジェクト」(JANIC=国際協力NGOセンター、JICA=国際協力機構、UNDP=国連開発計画)のメンバーとして1月に東ティモールを訪れた。日ごろからボランティア活動を「ライフワーク」と語り、現地を8日間にわたって視察した塩谷さんに話を聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 東ティモールはバリ島の東に浮かぶティモール島の東部と周辺の島々で、国土は岩手県ほどの大きさ。長年の植民地支配と軍事占領、そして99年の住民投票後の破壊と暴力という数々の苦難を乗り越え、02年5月20日に独立を果たした。21世紀に入って初めて独立した国。

 塩谷さんは3日夕方に日本を出発してシンガポール経由で現地時間の4日午後に東ティモールの首都ディリに到着、11日の午後に帰国の途についた。現地では在東ティモール日本大使館を表敬訪問して北原巌男大使と面談。JICAの支援を受けて母子保健衛生の保健ボランティアの育成とサポートが行われているアイレウ県コトラウ村や、現地のNGOが運営する青少年センターなどを訪問したほか、国連東ティモール統合派遣団(UNMIT)のフランス人契約カメラマンや在留邦人らと会談した。また山村でのホームステイも体験した。

 塩谷さんは、初めて訪れた東ティモールの感想を「ニュースで独立運動をしていたという情報しか知らなかった。実際に行ってみると、国自体に流れている空気や人の笑顔、話し方などがいいなと思った。緊張感や危機感が意外になくて、治安も回復していると感じた」と語り、「(人々は)元気で笑顔。ディリでも山村でも人と話せば話すほど、シャイだけどまじめで、これからどういうことをしたいかという芯がすごくあった」と話した。ただ物価が高く、日本とあまり変わらなかったことについて「なんとかしなければと思った」という。

 視察地には、水と衛生の問題解決に取り組むユニセフの「WASH」プロジェクトが進むエルメラ県のポニララ村とフンボエ村があった。ポニララ村では、6世帯に一つの共同水道を整備し、王子ネピアのCSR活動「nepia千のトイレプロジェクト」で村の全世帯にトイレ整備と衛生教育をする活動が行われ、フンボエでは、村民が自分たちでトイレを整備する活動が行われている。塩谷さんはポニララ村の平均的な家庭にホームステイし、現地の生活を体験した。村で過ごした時間について「写真を撮りながら走っていると、豚や犬、鶏がついてきたり、日本では体験できない懐かしい気分になった。それは今僕たち(日本人)にとってすごく必要だし、僕たちが今まで得てきた知識が(東ティモールの)彼らには大切なんだと思った」という。「WASH」プロジェクトの成果を目の当たりにし、「インフラの大切さを再認識した。水や環境が整うだけで、衛生的にもすごくきれいだし、食事も安心して食べられて、おなかも壊さない。水がきれいになることでどれだけ村に恩恵があるかが分かった」と振り返った。

 自らの希望でディリの小学校と孤児院も訪問した。小学生の時から児童福祉施設などで芝居などをしてきたという塩谷さんは、現在も子供を対象にしたイベントなどを行っており、その一環で訪問に至ったという。現地での様子を「歌や踊りで迎えてくれた。みんなで人文字を作ってみたり、ギターを弾いてもらったり、僕も1曲歌ったりした。子供たちの目標や夢を聞いてお互いのことも話した」と振り返り、「言葉なんか通じなくても、すぐ分かり合えた。自分の表情をすごく見ていてくれる。僕らが常に教えられていた」と笑顔を見せた。紙ふうせんや折り紙、シャボン玉などでも子供たちと交流を深めたという。

 一方で、憤りを感じたこともあったようで、ある村で住民から「今ミシンが足りないので(寄付して)ください」という話をされたり、道の手入れや整備を「国の仕事だ」と言う人々に対し、「僕たちは支援をしたい、助けたいという気持ちはある。ただ、施しをしている団体ではない。僕らは助けるけど、本当に何が必要でこれからどういうふうにしていきたいというプランを設計してほしい。東ティモールの人たちが国内でそういう気持ちを作っていかなければいけないと話した」と明かした。人々はその話に真剣に耳を傾けていたといい、塩谷さんは「話してよかった」と振り返った。これらの出来事を通じて「僕らがきちんとした支援と教育のサポートをしてあげなければいけないと強く思った」と話した。

 社会貢献や国際支援に関心の強い塩谷さん。今後も「ブラジルやラオス、ベトナム、カンボジアなどを訪れたい」と話している。「今回の訪問で僕が全く見えていなかった保健の大切さや、道の大切さが見えてきた。民間の人にも知ってもらって、実際に活動している専門家が解決策を作っていかないと(問題は)なくならない」と訴え、自身も「子供の時、たくさんの大人たちが無償の愛でいろんなことを伝えてくれた。それは自分の人生にとってものすごく大きなこと。自分もそういう人になって、たくさんの人々に伝えたい」と意気込んでいる。

 写真が趣味という塩谷さんは現地でもさまざまな写真を撮影。「なんとかしなきゃ!プロジェクト」のロゴマークにも描かれているジャンプをテーマに、人々がジャンプする姿などを収めた。写真は特設サイト「なんとかしなきゃ.jp」(http://nantokashinakya.jp/)で公開予定。また、2月5、6の両日、大阪国際交流センター(大阪市天王寺区)で行われる国際協力の祭典「ワン・ワールド・フェスティバル」で、国際協力に関するトークショーを行う。入場無料。

 「なんとかしなきゃ.jp」では、多くの著名人が国際協力をテーマに「なんとかしなきゃ!」という思いを発信。著名人が海外での国際協力活動を訪問するリポートや、身近にあるNGOの活動やインターネットチャリティーなど一般市民が簡単にできる国際協力についても紹介している。

 <プロフィル>

 しおや・しゅん。82年6月7日生まれ、石川県出身。15歳で俳優を目指し、上京。02年に俳優デビュー。05年の映画「パッチギ!」で日本アカデミー賞新人賞を受賞した。映画、テレビドラマ、舞台など幅広く活動する傍ら、ライフワークとしてボランティア活動を続けている。

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