黒川文雄のサブカル黙示録:法律でコンテンツが救えるのか?

 違法配信と知ってインターネットのサイトから音楽などのコンテンツなどをダウンロードした場合に、2年以下の懲役または200万円以下の罰金を科す改正著作権法が、6月に参議院本会議で可決・成立しました。賛否はさておき、コンテンツ産業はメディアの変遷に伴い変化し、新しいものを生み出してきました。今回は音楽に焦点を当てて、著作権とエンタメの未来を考えてみたいと思います。

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 日本の音楽コンテンツの最大の転換期の一つは、何と言ってもレンタルレコードのシステムです。80年代の前半、レコードを月に何枚も買えない学生や若いサラリーマンを中心に浸透しました。後のエイベックスの創業メンバーも貸しレコード業界出身であることは、有名な話です。

 レンタルは安価で音楽を入手でき、保管する手間も場所もいらないため、爆発的に普及しました。同時にCDというメディアの導入で、そのシステムはさらに加速しました。もちろん、制作側や流通側も最初は反発し、さらに対策を練り、それが難しいとみるや「新譜は貸出禁止期間を設ける」などの条件付きで受け入れました。このなし崩し的に新しいシステムができるのは、インターネットの仕組みと非常に似ています。

 そしてもう一つ触れたいのが、ユーザーとアーティストを驚かせた「コピーコントロール(CC)CD」です。メーカー側はレンタル対策や複製対策の“切り札”と考えて導入を図ったのですが、再生音質が問題視され、特定の機器での再生を保証しないことも問題になりました。これがユーザーだけでなく、アーティスト側からも反旗を翻されてしまい、CCCDはすっかり「今は昔」の話となりました。そのときも「ウィニー」などの共有ソフトがネットで流通し、コピーの歯止めはかからず、結果として音楽や映像はネットに集約されている状況です。

 こうして、音楽などコンテンツのデジタル化が進み、情報の多様化と均質化が加速し、10年前のようにヒットの指標としての「ミリオンセラー」はほぼ成立しなくなりました。こんな中で「法律で規制したから」といって、音楽のCDが元のように売れるわけではありません。そもそも、今の実態そのものが既にユーザーとアーチストの壊れた関係性を象徴しているように思うのです。壊れたものが元には戻らないことは明らかで、また新しい関係性が出来上がるのでしょう。それが収益性のあるビジネスになるか分かりませんが、音楽が魅力あるコンテンツであり続けることは信じていたいと思います。

 ◇著者プロフィル

 くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。

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