難病の息子を持った若い夫婦の話だが、よくある「難病もの」とは一線を画す仏映画「わたしたちの宣戦布告」が公開中だ。斬新な音楽の使い方や夫婦の関係性の描き方など、独創的な作りの作品だ。個性派女優のバレリー・ドンゼッリさんの監督2作目。自身が主演し、体験を基に製作したという。
ウナギノボリ
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ロメオ(ジェレミー・エルカイムさん)とジュリエット(ドンゼッリさん)は出会ってすぐに恋に落ち、子どもをもうけた。しかし、息子のアダムに脳腫瘍(しゅよう)が見つかる。手術で腫瘍は取り除かれたが、「ラブドイド腫瘍」という難病だった。回復する可能性はおよそ10%。がんセンターの無菌室に入ったアダム。夫婦は一緒に闘う決意で仕事を辞めて、保護者用施設に泊まり込み、毎日看病し続けた……という展開。
カップルがアツアツに恋しているシーンから一転、「息子が病気かも?」となるのだが、悲劇的な映画ではない。病気、つまりは「試練」を、日常の中に描き出している。これは、試練に向かって闘うカップルの話だ。
神様はその人に乗り越えられない運命を与えないというが、なんてたくましい母親なのだろうか。この母親が、映画をパワフルなものにし、観客の気分も上げてくれる。実際にお世話になっていた病院で撮影したという。外科医の告知シーンなどを見ると、リアリティーをとても大事にしているのが分かるが、それでいてドキュメンタリータッチでもなく、ファンタジーっぽさもうまく溶け込ませた。体験を基にしているのに、感情にまみれていない。病児を持つ親に真の希望をもたらす映画だ。15日からBunkamuraル・シネマ(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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