J.R.R.トールキンによる原作小説を映画化した「ホビット 思いがけない冒険」が14日に公開された。世界的大ヒット作「ロード・オブ・ザ・リング」3部作の60年前を描いており、今後2作が順次公開される。メガホンをとったのは、「ロード・オブ・ザ・リング」と同じピーター・ジャクソン監督。「ロード・オブ・ザ・リング」の成功による周囲からの期待を、どう受け止め今作に挑んだのか。また、今作のテーマや魅力について語った。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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映画「ホビット」3部作を作るに当たってのプレッシャーは、「もちろん感じた」と語るジャクソン監督。最初は、「ほかの監督に頼もうと思ったほど」だったとか。にもかかわらず、自らメガホンをとる決心をしたのは、「『ホビット』は、『ロード・オブ・ザ・リング』とは違ったトーンの作品で、ビルボのリアクションの中には、コメディーの要素がたくさん存在する」からだ。
ジャクソン監督が口にした「ビルボ」とは、今作の主人公、ビルボ・バギンズ(マーティン・フリーマンさん)のことだ。ビルボは、平和を愛するホビット族で、魔法使いガンダルフ(イアン・マッケランさん)に誘われ、かつて凶暴なドラゴンに王国を奪われたドワーフ族とともに、彼らの王国を取り戻す旅に出る。そのビルボがもたらすコメディーの要素を、ジャクソン監督は「ビルボ自身が人を笑わせるようなことをするキャラクターではないけれど、彼のドワーフに対するリアクションや、気の狂いそうな状況の中での反応から、たくさんのユーモアが生まれてくる」と説明する。
一見頼りなく、ヒーローものの映画でなら主人公のサポート役に回りそうなキャラクターであるビルボが、今作のような壮大なファンタジーアドベンチャーの主人公になりえたのは「彼が、戦士でもなければ、冒険好きでもない。家の中の暖炉の前で本を読んでいるのが好きな、最もヒーローらしくないキャラクター」だからだ。そのらしくないキャラクターが「危険な旅をすることで、望郷の念や旅の大切さや意味、仲間の大切さを理解し、勇気と自信、戦い方を学び、徐々に成長していく。そんなホビットの気持ちに寄り添い、私たちも旅ができる。そこが、この映画の魅力なんだ」とジャクソン監督は分析する。
ジャクソン監督に改めて、「ホビット」と「ロード・オブ・ザ・リング」のテーマの違いについてたずねると「その差は歴然としている」といい切ったあとで、次のようにコメントした。
「『ロード・オブ・ザ・リング』は、産業による自然破壊を憂慮する観点で描かれている。だからこそ、世界を救うために、指輪は滅ぼされなくてはならない。その意味で、『ロード・オブ・ザ・リング』は非常に世紀末的な物語といえる。一方、『ホビット』は、ドラゴン退治や自分の土地を取り戻すための冒険の旅が物語が中心になっている。いわばこちらは、冒険ファンタジー、おとぎ話なんだ」
冒険ファンタジー、あるいは、おとぎ話としての「ホビット」。だからこそジャクソン監督は、「これまでとは違う、より軽く、コメディーともいえるような物語を語る機会を与えてもらえる」と、今作のメガホンをとったのだ。そしてその結果、私たちもまた、こうして新たなる冒険ファンタジー3部作を見ることができる。映画「ホビット 思いがけない冒険」は全国で上映中。
<ピーター・ジャクソン監督のプロフィル>
1961年生まれ、ニュージーランド出身。8歳のときから8ミリカメラで短編映画を撮り始める。87年「バッド・テイスト」で監督デビュー。その後、脚本も書いた94年の「乙女の祈り」が米アカデミー賞脚本賞にノミネートされ、96年、米映画「さまよう魂たち」を監督、脚本、製作。その後発表した「ロード・オブ・ザ・リング」3部作(01~03年)が世界的大ヒットとなり一躍時の人に。05年、「キング・コング」、09年、「ラブリーボーン」を監督、脚本、製作。そのほかに、「第9地区」(09年)、「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」(11年)などの製作を担当している。
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