北野武監督の最新作「アウトレイジ ビヨンド」のDVDとブルーレイディスク(BD)が12日、発売された。「アウトレイジ ビヨンド」は、10年にヒットした「アウトレイジ」の続編。今作で息の合ったチンピラコンビを演じた俳優の桐谷健太さんと新井浩文さんに、「念願だった」という北野映画への初出演の感想や作品に対する思いを聞いた。(毎日新聞デジタル)
あなたにオススメ
“あの頃”のジャンプ:実写ドラマ化も話題「ウイングマン」 1983年を振り返る
「アウトレイジ ビヨンド」は、「アウトレイジ」から5年後が舞台。先代亡き後、会長が交代して新体制となり、関東の頂点を極めた暴力団「山王会」はついに政治の世界にまで手を伸ばしはじめた。巨大ヤクザ組織の撲滅を企てる警察組織は、その勢力拡大に業を煮やし、関西最大の暴力団「花菱会」との対立を仕掛けることで相殺をもくろむ。そこで、利用されたのは“死んだはずの男・大友”だった。やがて、各人のだましや裏切りの火種がくすぶりはじめ、巨大抗争へと発展していく……というストーリー。
前作に引き続き、大友はビートたけしさん、山王会の会長は三浦友和さん、同若頭は加瀬亮さん、暴力団の壊滅をもくろむ刑事は小日向文世さんが演じ、新キャストとして、花菱会の若頭で西田敏行さん、同組員で高橋克典さんらが登場するなど豪華キャストが顔をそろえている。
そして、桐谷さんと新井さんは、山王会に恨みを持つ「元・村瀬組」の若頭・木村(中野英雄さん)の手下となって、木村や大友のために働くチンピラ役として北野監督作品に初出演。「もともと北野監督の映画はたくさん見ていましたし、『BROTHER』や『ソナチネ』とか、あの“痛い”暴力表現がすごく好きなんです」という新井さんは、「ふだんは台本を読んでから出演を決めるんですけど、今回は即座に『やります!』って答えました」とオファーを受けた際の喜びを語る。
一方、桐谷さんは「けっこう前なんですけど、武さんの作品に出たら自分が変わる……と直感的に思ったことがあったんです。それが何かは分からなかったけど」と今回の出演以前に特別な“予感”を抱いたことを明かす。
実際の撮影現場では新井さんはうれしさの半面、緊張感もすごかったようで、「緊張するなーとは思ってたんですけど、特に初日はものすごい緊張感で、せりふが飛びました(笑い)。そんなこと、デビュー作以来の出来事だったんですけど」と振り返る。
桐谷さんは、北野組について「独特の空気感があるんですよね。役者もスタッフさんも、武さんに喜んでもらうためにみんながそれぞれの立場からいいものを作ろうって同じ方向に向かってる気持ちがあって。それがすごく快感でした」と語り、「すべてが楽しかったですし、もっとあの現場にいたかった」と純粋に現場を楽しんだようだ。また、桐谷さんが抱いていた予感は、撮影を通して「ホンマにその通りになった」といい、興奮気味にこう続ける。
「今回の役はせりふが少なかったし、そこまで説明が必要な役でもなかったし、人物像を考えたんですけど、結局『考えてもしゃーないな』って思って。そんな小手先で考えたところで、武さんにはたぶんバレるやろな、と。それやったら、ヤクザとしてのし上がっていきたいっていう気持ちと、武さんと中野さんを命がけで守るっていう二つの軸さえあれば、現場で自由に感じたままでいいわって思った。本当に今までで一番何も考えずに臨めた現場でした。それで、芝居をやったときに、『あ、(自分は)こういうふうにもできんのや』って思えて。なんか武器が1個増えたみたいな気持ちになったんですよね」
桐谷さん演じる嶋と新井さん演じる小野は絶妙なコンビだった。嶋と小野は、子供のころからのツレで“地元では負け知らず”のチンピラコンビ。仲間への裏切り行為も辞さないヤクザ同士のだまし合いの世界にあって、親分の木村を思って純粋かつ必死に働く2人は今作で異質な存在だ。映画を見た周囲の人たちからは「めっちゃいいコンビ」という評価を受けたといい、特に演技の相談はしなかったという2人だが、「役柄はもちろん、芝居の仕方にしても、新井くんとは出力の方向性が全く違ったんですけど、立ってる場所が一緒みたいな感じがあったんで。そう言ってもらえるのは、なんかうれしいですね」と桐谷さんは素直に喜び、それに新井さんも大きくうなずく。
また、2人の少年らしさが残る発言や行動は、悪人ぞろいの緊迫したシーンが続くストーリーの中では、ある種の癒やしと、時折、笑いまでをも提供してくれる。その点について新井さんは、「ウチらが失態をおかしたのに凝りもせず、『親分、行かせてください』って懇願するシーンがあるんですけど、海外の映画祭では大爆笑が起こったっていうのをチラッと聞いて。『お前らにできるか!』っていう笑いだったらしいんですけど(笑い)。本来は全然笑うべきところじゃないはずなんですけど、そういうのは面白いなって思って」と語り、桐谷さんは「台本を読んだときに『こいつら、可愛いな』って思ったし、その後の大友を動かす原動力にもなる存在なので、僕らは非常に重要な立ち位置にもいるんです」と愛情たっぷりに語る。
2人の役柄は、撮影を進めるうちに親分役の中野さんにも影響を与えたようで、「さっき話した『親分、行かせてください』っていうシーンで、中野さんは『お前ら隠れとけ。なんでいるんだ』って怒鳴ってるんだけど、その言い回しがすごく優しくて。2人を思っての演技に、すごくグッときた」と新井さん。
続けて、桐谷さんは「最初はそういう演出ではなく、普通に怒って思いっきりどついて……って感じやったんですけど、中野さん的にもそうじゃないとね。やっぱり2人は可愛いから、演技をしている間に愛情が芽ばえてきて。台本にはなかった2人へ愛情が垣間見られるシーンが増えたりもしてるんです」と明かす。
今作の見どころについても、「そういう人間の心の流れみたいなものも入ってるので、暴力描写だけではなく人情も見てほしいですね。僕らはそのまっただ中にいさせてもらったんで、一番ある種、愛のあるところにいた2人なんで」と桐谷さんはアピール。新井さんは「まず万が一、前作を見てないんだったら絶対に見たほうがいい」と前置きし、「映画館で見逃した方には『見てないの?』って後悔させるだけの自信がある作品に仕上がっているので、ぜひぜひご覧いただきたいと思います」と力をこめた。
DVD&BD「アウトレイジ ビヨンド」は12日から発売中。スペシャルエディション初回限定版のDVDは6300円、BDは7350円。通常版のDVDは3990円、BDは5040円。いずれも発売・販売元はバンダイビジュアル。
<桐谷健太さんプロフィル>
1980年2月4日生まれ、大阪府出身。02年、ドラマ「九龍で会いましょう」(テレビ朝日系)で俳優デビュー。主なドラマの出演作に「ROOKIES ルーキーズ」(08年・TBS系)、「JIN−仁−完結編」(11年・同)、「Wの悲劇」(12年・テレビ朝日系)、映画は「パッチギ!LOVE&PEACE」(07年)、「BECK」(10年)、「黄金を抱いて翔べ」(12年)がある。14日スタートの新ドラマ「空飛ぶ広報室」(TBS系)に出演する。また、6月に放送されるドラマ「激流」(NHK)への出演も控えている。
<新井浩文さんプロフィル>
1979年1月18日生まれ、青森県出身。01年に行定勲監督の映画「GO」に出演して以来、映画を中心に活動。主な出演作に、「青い空」(02年)、「ジョゼと虎と魚たち」(03年)、「血と骨」(04年)、「ゆれる」(06年)、「「クヒオ大佐」(09年)、「告白」(10年)、「モテキ」(11年)など。12年は、「アウトレイジ ビヨンド」のほか、「セイジ−陸の魚−」「ライアーゲーム−再生−」「赤い季節」「宇宙兄弟」「ヘルタースケルター」「闇金ウシジマくん」「莫逆家族 バクギャクファミーリア」「その夜の侍」に出演。13年は、6月に「さよなら渓谷」、12月には「永遠の0」の公開を控えている。
ディズニー・アニメーション・スタジオの最新作「モアナと伝説の海2」(12月6日公開、デイブ・デリック・ジュニア監督ほか)のモアナを取り巻く個性豊かな新キャラクターの日本版声優が1…
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」に登場する機関車の玩具「超合金 THE TRAIN(仮)」が、11月15~17日に東京・秋葉原で開催されるイベント「TAMASH…
今年8月に最終回を迎えた特撮ドラマ「仮面ライダーガッチャード」の続編となる、Vシネクスト「仮面ライダーガッチャード GRADUATIONS」に、仮面ライダーヴァルバラド/黒鋼スパ…
11月11日に発表された8~11日の映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)によると、諫山創さんの人気マンガが原作のテレビアニメ「進撃の巨人」の最終章となる「The Final …