沖縄の離島・南大東島を舞台に、15歳の少女の親への思いと旅立ち、心の揺れを描いた映画「旅立ちの島唄~十五の春~」(吉田康弘監督)が18日、全国で公開された。実在する少女民謡グループ・ボロジノ娘の歌う「アバヨーイ(さようなら)」が心にしみ、地元の子どもたちがいい表情をしている。「ヒーローショー」(10年)、「黄金を抱いて翔べ」(12年)など井筒和幸監督作の脚本を手がけた吉田さんの監督作。
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南大東島に住む優奈(三吉彩花さん)は、さとうきび農家を営む父親(小林薫さん)と2人暮らしの15歳。母親・明美(大竹しのぶさん)、兄(小久保寿人さん)、姉(早織さん)は沖縄本島で暮らす。明美はもう2年も島に帰って来ていない。中学3年生になった優奈はボロジノ娘のリーダーを引き継いだ。学校からは進路について家族で相談するようにと言われた。島には高校がない。優奈は高校進学とともに島を出なくてはならない。ある日、姉が娘を連れて帰ってきた。何かあったのかもしれないと思う優奈。島を挙げてのイベントで恋が芽ばえたり、島での最後の1年の暮らしは明るく彩られていく。そして、南大東島のPRのために那覇で野外演奏に参加した優奈のところに、1年も会っていなかった母親が現れる……という展開。
「成長物語」という言葉はよく使われるが、こんなに細やかに成長が描いた映画にはなかなかお目にかかれない。15歳の1年間がこれほど多くの出来事に彩られていたことを見る人に思い起こさせる映画だ。那覇から360キロも離れたこの島は、八丈島からやって来た人々が開拓したという。この島に暮らす人々の中に家族がいて、そしてその中心に15歳の優奈がいる。島の映画だからホンワカな雰囲気かと思いきや、それだけではない。母と姉のふるまいや、好きになった彼の選択などにシビアな現実をにじませている。壊れるもの、島にとどまらないものがあることを優奈は知る。だからこそ思い合う親子の姿にホロリとさせられる。主人公を演じる元「さくら学院」の三吉さんがどんどんりりしくなっていくほか、父親役の小林さんが島民にしか見えないほど、地元に溶け込んでいるのにも驚いた。18日からシネスイッチ銀座(東京都中央区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに単館映画館通いの20代を思い出し、趣味の映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心に活動するライター業のほか、ときどき保育士としてとぼとぼ歩き中。
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