桜 稲垣早希の補完計画:「ヒカルの碁」 熱闘の裏で報われないヒロイン

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 アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のヒロイン・アスカの物まねで知られるお笑い芸人の桜 稲垣早希さん。「エヴァ」だけでなくさまざまなアニメやマンガ、ゲームが大好きという稲垣さんが、熱い思いを語ります。(毎月25日更新)

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 こんにちは! 今回は「ヒカルの碁」です。なんで今さら?と思うかもしれませんが、最近私、囲碁を覚えまして、ほとんどの空き時間は囲碁をやっているんですが、それで囲碁といえば「ヒカルの碁」だな~と思って。

 連載当時ジャンプで読んではいましたが、最近また読み直したらさらに面白い! 囲碁に興味をもってからの「ヒカルの碁」は面白さ倍増です!

 まずなんで碁に興味を持ったかというと、本当に偶然なのですが、夜中になんとなくネットサーフィンというか動画サーフィンをしていたんです。そこに囲碁の解説の動画がありました。男性と女性が大きな碁盤を挟んで試合の解説をしている、よく見る動画です。今まできちんと見たことなかったのですが、その女性の仕草と声がものすごくすてきでしばらくその動画を見ていたんです。そしたら、なんとなく基本的な囲碁のルールが分かってきて、「あれ?今までまったく知らなかったけど、これは陣取りゲームなんやー、なんか楽しそう……」と思って、さらにネットでルールを調べたり、簡単なゲームのアプリをやったりしました。

 どんどん興味が出て来て、とりあえず囲碁のことをもっと知ろう~と思って「ヒカルの碁」を読みました。以前読んだ時は、ジャンプで読んでたこともあって、1週飛ばしたら、取っ付きにくい囲碁だからついて行ける気がしなくなって途中で断念してたんですが、今読み直したらなんと面白い! 最後まですぐに読んでしまいました。

 「ヒカルの碁」は、進藤ヒカルという男の子がおじいちゃんの家の倉をあさっていると、一つの碁盤を発見します。この碁盤には血のようなシミがついてて、そのシミはヒカルにしか見えません。そこでどこからともなく「私の声が聞こえますか?」と声が聞こえます。この声が平安時代の天才棋士・藤原佐為(サイ)の声でした。

 そこから、サイはヒカルの体でいろいろな強豪と対局していきます。その中にヒカルのライバル、塔矢アキラがいます。サイの指示通り打つヒカルにアキラはボロ負けしてしまいます。サイの影響で、ヒカルは囲碁にハマっていき、どんどん強くなります。サイを宿すヒカルを追うアキラ、アキラを追うヒカルという奇妙な関係が生まれます。でもサイはもう死んだ人なので自分で囲碁を打つことができません。

 自分を置いてどんどん強くなっていくヒカルに、サイが焦りと不安を感じ悩む場面は心が痛くなります。「なぜヒカルが! なぜヒカルだけが! 私は消えるのに! ヒカルだけが!」「未来を持つヒカルへの嫉妬が抑えきれない……、それだけじゃない……。ヒカルと別れたくない」もう消えてしまう自分の運命に困惑する場面ですが、最初は、大昔に自分で死んでおいて、ヒカルに宿ったら、「自分に碁を打たせて!」だなんて、結構わがままなんだな~と思ったのですが、サイが消えてからは、可愛くてクールなサイの最後の最後のリアルな必死のわがままだったんだな……と私は思いました。

 サイは物語の中盤で消えてしまうのですが、一時的に消えるのかと思いきや、全く出てきません。これはちょっと驚きました。ヒカルの打つ「碁」の中にサイがいると思ったヒカルは、サイの分までずっと碁を打ち続けることを誓います。そこから国際的に話が広がっていくのですが、この作品はもっともっと続いてほしかったなあと思いました。もうずっと読んでいられます!

 ただ、「あれ?これで終わっていいの?」と思ったことがあるんです! それは何かというと、中学から囲碁に目覚め突っ走ってきたヒカルですが、ここで報われないキャラが1人……。ヒカルの幼なじみのあかりです。

 ヒカルが囲碁にハマっていく姿を見て、それを支えたり、自分から囲碁部に入ったりと、常にヒカルのことを考えている可愛いヒロインなのに、ヒカルといい感じになるというシーンが一つもない!! こんなヒロイン初めて見た! 「ちはやふる」でさえ、少しはドキドキな場面が出てくるというのに……。

 本当のプロの棋士の人はこんな感じなのでしょうか? もう囲碁しか目に入らないくらいじゃないと厳しすぎる囲碁の世界ではやっていけないというのを描きたかったんでしょうか? でも、「序盤から出てくる幼なじみとはなんやかんやで進展する!」と当たり前に考えていた私の“常識”が覆ったので、最終巻を読み終わった瞬間に笑ってしまいました。囲碁を描くマンガというのもあまり他にありませんが、ストーリーの展開も独特です。

 私はこのマンガで余計に囲碁に興味が出たので、ヒカルが通っていたような碁会所に実際に行ってみて、そこでいろいろ教えてもらおうと思っていました。ところが、入ってみると高齢の方がものすごく真剣な顔で打っていて、「初心者はすぐにここで対局は難しいからとりあえず、教室に行きなさい」とスクールを進められてしまいました。

 3カ所まわりましたが、どこもそんな感じで、決まった曜日の決まった時間に囲碁教室に通えなさそうなので、今は周りで打てる人を探して対局してもらったり、ネットでだれかとやったりして遊んでいます。でもゆくゆくは吉本で囲碁部を作りたいな~。

 ◇プロフィル

 桜 稲垣早希(さくら いながき・さき)=1983年、神戸市生まれ。07年2月に、お笑いコンビ「桜」を結成。07年の「M−1グランプリ」で3回戦に進出するなど活躍していたが、09年末に相方がコンビを卒業し、ピン芸人として活動。アニメ「エヴァンゲリオン」のヒロイン、アスカの物まねで知られ、バラエティー番組「ロケみつ」(毎日放送)でブレーク。「R−1ぐらんぷり」で4年連続準決勝進出を果たしている。最近ではバラエティー番組などでナレーションもこなすなど、芸の幅を広げている。また、6月26日には「ブログ旅」で30枚目となるDVD「ヨーロッパ横断ブログ旅 イタリア編 その(2) 」(3500円)も発売される。また、6月26日には「ブログ旅」で30枚目となるDVD「ヨーロッパ横断ブログ旅 イタリア編 その(2) 」(3500円)も発売される。

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