山田孝之さんがジャーナリストにふんし、埋もれていた殺人事件を掘り起こし凶悪犯を追い詰めていく映画「凶悪」が21日に公開された。月刊誌「新潮45」編集部によるノンフィクション「凶悪−ある死刑囚の告発−」を映画化したもので、実話を基にしている。2人の凶悪犯を演じるのは、ピエール瀧さんとリリー・フランキーさん。ほかにジャーナリストの妻を池脇千鶴さんが演じている。
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ジャーナリストの藤井修一(山田さん)は上司から1通の手紙を渡される。それは死刑囚・須藤純次(ピエール瀧さん)からのものだった。拘置所に会いに行った藤井は須藤から、自分は他に3件の殺人事件に関わっており、その背後にいる “先生”が無罪放免であることが許せない。ひいてはそれらの事件を探り、記事を書くことで先生を追い詰めてほしいと告白される。半信半疑で調査を始めた藤井だったが、やがて須藤の“告発”に信ぴょう性があることに気付き始め……という展開。
前半は、須藤が藤井に一連の犯罪について話し、その裏取りをする藤井の姿が描かれる。話を過去にさかのぼらせることで、藤井の目の前に座る従順な須藤のかつての鬼畜ぶりが際立つ演出だ。同時に藤井自身が抱える問題についても触れ、彼が仕事と家庭の板ばさみとなり、精神的に追い詰められていく様子も描かれる。
後半から終盤にかけては法廷劇が展開する。先生こと木村孝雄が姿を見せるのは後半になってからだ。先生は藤井のことを「純次くん」と呼び、あくまでも心優しい中年男性を装う。演じているのはリリー・フランキーさんだ。28日に公開される「そして父になる」では虫も殺さないような柔和な顔付きでよき父を演じているリリーさんが、ここではスタンガン片手にとんでもない悪事を働く極悪人をひょうひょうと演じている。かと思えば、須藤役のピエールさんは放送中のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」での不器用ながらもお人よしのすし屋の大将とは打って変わって、人殺しをなんとも思わない凶悪犯を器用に演じる。普段は愛すべき俳優2人の想像を軽く超える演技に注目だ。21日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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