注目映画紹介:「バイロケーション」 もう一人の自分に命を狙われるホラー 結末が異なる2編公開

「バイロケーション」の一場面 (C)2014「バイロケーション」製作委員会
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「バイロケーション」の一場面 (C)2014「バイロケーション」製作委員会

 女優の水川あさみさん主演のサスペンスホラー「バイロケーション」(安里麻里監督)が、18日から全国で公開された。突然発生した“もう一人の自分=バイロケーション”によって命を狙われるという今作は、2010年の第17回日本ホラー小説大賞を受賞した法条遥さんの小説が原作。バイロケーションに悩まされる人間に、人気グループ「Kis−My−Ft2(キスマイフットツー)」の千賀健永さんやジャニーズJr.の高田翔さん、昨年話題になったドラマ「半沢直樹」(TBS系)に出演していた滝藤賢一さんがふんしているほか、浅利陽介さんや酒井若菜さん、豊原功補さんが出演している。観客の予想を裏切る結末が用意されており、しかもその結末には「表」と「裏」の二つがある。同時期に公開される両作を見ることで、異なる余韻が味わえそうだ。

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 画家を目指す忍(水川さん)は、あるとき、もう一人の自分が存在することを知る。バイロケーション(バイロケ)と名付けられたそれは、人間が相反する感情で精神的に引き裂かれたときに生まれるもので、その人格は“オリジナル(本物)”よりも凶暴で、やがてはオリジナルの命を奪いにやって来るという。忍は、同じ境遇の人間たちと協力し合い自分の身を守ろうとするが……という展開。

 登場人物の表情や室内の雰囲気など随所に張り巡らされた伏線が、人間の固定観念を覆すラストで見事につながる。バイロケのギョロリと動く眼球や、ひとたび凶暴化したときのバイロケの憎悪の表情など、観客を震え上がらせる視覚的演出も特徴的だ。半面、バイロケに人生を脅かされていくオリジナルの悲哀をも描き、見る者の共感も誘う。もう一人の自分が存在するという設定はとっぴだと思われがちだが、人間は少なからず、人には見せない“別の顔”を持っている。普段はそれをうまくコントロールしながら生きていることを考えると、あながち荒唐無稽(むけい)のホラーとは思えない。18日から角川シネマ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。別エンディングの「バイロケーション 裏」は2月1日から同劇場で公開。(りんたいこ/フリーライター)

 <プロフィル>

 りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。

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