冤罪(えんざい)で捕まった知的障害を持つ父親と幼い娘の絆を、監獄という場を舞台にして描き出した韓国映画「7番房の奇跡」(イ・ファンギョン監督)が公開中だ。今作で映画デビューを飾り、韓国のペクサン芸術大賞新人賞に最年少でノミネートされた子役カル・ソウォンちゃんの熱演が光る。「王になった男」のリュ・スンリョンさんが父親を、大人になった娘を大ヒットドラマ「美男<イケメン>ですね」のパク・シネさんが演じている。
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法廷で模擬国民参加裁判が始まった。検察側からイ・ヨング(リュさん)の罪状が語られると、若い女性が立ち上がった。彼女はヨングの娘イェスン(パクさん)。事件の再調査を願い出たのだ。幼いころのイェスンは、店のショーウインドーに飾られた黄色いランドセルがほしかった。父のヨングは買ってあげると約束してくれたが、偶然にも目の前で売れてしまう。ある日、ヨングは子どもに呼び止められる。それは、あのランドセルを買ってもらった少女だった。「ランドセルを売っているところを教えてあげる」という少女に案内され、ついていくヨング。しかし少女は突然、滑って転んで動かなくなってしまう。ヨングは容疑者と勘違いされ逮捕されて……という展開。
「権力VS弱者」という構図を背景に、父と娘の深い絆を盛り込んでいる。なかなかベタだが、舞台である監獄の様子が明るい色調でコミカルに描かれ、おとぎ話のような手法も飛び出してユニークだ。次第にヨング親子に肩入れしていく刑務所の課長の存在も大きく、彼が背負ってきた人生もサラリと描かれていて、ドラマを盛り上げる要素になっている。監獄の7番房の仲間たち、それぞれの性格も個性的だ。房長役のオ・ダルスさんは「グエムル−漢江の怪物−」(2006年)や「10人の泥棒たち」(12年)など、数々の作品に出演する名脇役で、顔も芝居も味わい深い。そして、子役の力はやはり偉大だ。クルクル変わる表情と子どもならではの率直な物言いで、房のワルたちの目尻も思わず下がる。父親役のリュさんとの息もぴったりで温かさがにじみ出ている。しかし、ただ温かい映画ではなく、社会の不条理を告発する奥深い内容だ。25日からシネスイッチ銀座(東京都中央区)、新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほか全国で公開中。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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