livetune:レディー・ガガのDJと共作も 海外展開「わりと真剣に狙ってますよ!」

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 2013年は、T.M.Revolutionさんのアルバム「UNDER:COVER 2」に参加、またSEKAI NO OWARIのFukaseさんをボーカルに迎えたシングル「Take Your Way」がヒットするなど、多彩な活動を行っている「livetune」が、シングル「FLAT livetune adding Yuuki Ozaki(Galileo Galilei)」と、シングル「DECORATOR EP livetune feat.初音ミク」を5日にリリースした。楽曲についてや制作に対する考え方やこだわりについて聞いた。

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 −−最新シングル「FLAT」は、自分らしくあるようにと、背中を押してくれる前向きな楽曲になりましたね。

 「FLAT」は、テレビアニメ「ハマトラ」のオープニング曲なんですが、「ハマトラ」のストーリーには、超能力を持った人と持ってない人との対立という構図があって、それを自分たちに置き換えると、勉強ができるとかスポーツが得意とか何かの才能を持っている人と、そうでない人になると思ったんです。それで、他人の持っている才能に憧れるのではなく、自分の中にある才能に目を向けてほしいと思って。誰でもきっと何かしらの才能を持っているのに、それに気付いてなかったり、才能を発揮する術がなかったりすると思うんです。でも、そのことに気付くだけでも、人生がもっとポジティブなものになるんじゃないかって。そうやって今ある価値観を一度フラットにして、改めて自分というものを見直そうとか、才能があるとかないとかを超えた先に、もっと違うものが見つけられるんじゃないかという願いを込めました。

 −−ボーカルには、ロックバンド「Galileo Galilei」の尾崎雄貴さんが参加。カップリング曲の「オール・オーヴァー」には、モデルのやのあんなさんが参加していますが、ボーカルは曲のイメージに合わせて選ばれたのですか?

 はい。「ハマトラ」はカッコいい作品だったので、ここは男性ボーカルで、僕の大好きなバンドの雄貴くんにぜひお願いしたいと。あんなちゃんは、昨年彼女のシングル「Shape My Story」をプロデュースさせていただいたご縁もあったし、可愛い女の子が活躍する「魔法少女大戦」というアニメとゲームのタイアップなので、アニメ好きの彼女に絶対合うと思ってお願いしました。

 −−声ありきで楽曲を作られることが多いですか?

 そうですね。基本的に声とか、関係するアニメの作品性とか、外的な要因に引っ張られて作ることが多いです。“これを表現したいんだ”みたいなところで作ると、押しつけになる気がして、そういうのはあまり好きじゃないです。あんなちゃんのときも、実際に会って話をしてレコーディングをしてという、その雰囲気が出せたらいいなと思って作りました。

 −−相手の人柄とか相性も、楽曲制作に大きくかかわってきそうですね。

 話して楽しければ、当然楽しい雰囲気の曲になりますよね。実際にレコーディングを通して仲良くなって、ちょくちょく会うようになった人も多くて。その場限りで終わりっていうのは、ちょっと事務的で嫌なんです。昨年一緒にやったSEKAI NO OWARIのFukaseくんとも、レコーディング以降、よく一緒に飲むようになったし。雄貴くんとも、終わってから「一緒にゲームやりましょう」と約束して。彼らは北海道在住なんですけど、ゲームだけをしに、北海道に行くのもいいかなって(笑い)。そういう、みんなでやってる感とか楽しい様子が伝わったほうが、聴いてくれる人もきっとうれしいと思うし。

 −−もう1枚、livetune feat.初音ミク名義の作品「DECORATOR EP」も同時リリースされますが、初音ミクもボーカルの一人という考えですか?

 それはまったく違って、単なるシンセサイザーですね(笑い)。初音ミクにシンセサイザーということ以上の意味を持たせる作業は、僕以外のボカロPの方がたくさんやっているので、その人にお任せすればいいかなって。もし僕がそういう目線でやり始めてしまったら、今まで僕がやって来たことを覆すことになってしまう。だからシンセサイザー音源であること以上の意味はありません。なんだかんだ言って、初音ミクでの作品発表は7年やっているので、僕の中での重要なファクターではあるけど、表現方法の一つでしかないという感じですね。

 −−その「DECORATOR EP」には、初音ミクが英語で歌っている曲が2曲あって、これもポイントになっていますね。

 まず「Connection」は、英語版の初音ミク(「初音ミク V3 ENGLISH」)で制作しました。昨年の夏にベルギーで開催されている「Tomorrowland Festival!!」という、EDMのフェスに遊びに行って。帰国してすぐそのノリで作った曲なんですけど、ベタなEDM楽曲だから、英語がいいなって。でも英語版って、ネイティブに話せるような人でないと打ち込みが難しいんです。だから、楽曲データを送って海外のクリエーターに打ち込んでもらいました。

 逆に「Pink or Black」は、いつも使っている日本語版の初音ミクで、自分で英語の歌詞を打ち込みました。これは、一度自分でやってみて分かったことですが、英語版で英語を打ち込むと、ちょっとクールでアダルトな歌声になるんです。でも「Pink or Black」は可愛い印象にしたかったので、日本語版を使って、頑張ってなんとか英語で打ち込みました。同じ初音ミクでも、聴き比べると違いがわかって面白いと思います。

 −−アニソン、アイドル、ロックバンドなどさまざまな方と仕事をしていらっしゃいますが、今の音楽シーンで必要だと思うことはなんでしょうか?

 例えば僕の年代はインディーズバンドブームを体感していて、自分たちと距離感の近い人にシンパシーを感じるんです。実際に “俺たち、私たちでもできそうだ”というものが、コンテンツとしてすごく成長していますよね。そういう意味では、ボカロも理にかなったムーブメントだったと思うし。EDMのシーンにもそういう感覚があって、ベルギーでデビッド・ゲッタのステージを見たとき、“俺たちはみんな一つだ”みたいなメッセージをずっと発してたんですよ。きっと、そういう“トゥゲザー感”みたいなものは、大事なのかなって思います。

 −−livetuneさんは「Google Chrome」のCMの楽曲「Tell Your World」を手がけたこともあり、昨年はレディー・ガガさんのリミキミサーであるDJのZEDDさんの作品で、リミックスを手がけていましたが、今後海外に向けては?

 最近は、海外のアニメコンベンションなどでDJをやることもあるし、ZEDDのリミックスをきっかけに、ダンスミュージック界隈の人からも知ってもらえるようになりました。ゆくゆくはレディー・ガガとかマドンナとか、最終的にはそういうレベルの人たちと直接仕事ができるようになったらって思います。そのへんは、わりと真剣に狙ってますよ(笑い)!

 <プロフィル>

 音楽プロデューサーのkzによるソロの音楽ユニットである。ボーカロイドの「初音ミク」を使用して制作した楽曲が話題となり、動画共有サイトで累計350万回以上の再生数を記録。音楽業界からも注目を集め、2008年にアルバム「Re:package」でデビュー。同作はオリコン初登場5位を記録した。ClariS、RO−KYU−BU!、中川翔子さん、May’nさん、嵐などの楽曲提供やプロデュースも手がける。DJ活動も行っており、4月6日にEX THEATER ROPPONGI(東京都港区)で開催されるイベント「二重スリット実験」に出演予定。

 (インタビュー・文・撮影:榑林史章)

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