甲斐よしひろ:デビュー40周年を迎えた甲斐バンド「変わることが成長の証し」

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 結成とデビュー40周年を迎える甲斐バンドが、2月にリリースしたセルフカバーアルバム第2弾「ROCKS2」を引っさげ、7月から40周年記念ツアーを開催する。バンドの人気曲をセレクトし、新たにレコーディングしたというアルバムの話や、アニバーサリーイヤーを飾るツアーへの意気込み、40年間の思いなどについて、フロントマンでボーカルの甲斐よしひろさんに聞いた。

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 −−2013年発売の「ROCKS」に続くセルフカバーアルバム第2弾「ROCKS2」は、主にファン投票で選曲されたそうですね。

 第1弾の「ROCKS」はシングルのナンバーが多くて、売上枚数を全部合わせると500、600万枚以上というヒットチューンが入ってたんで、(「2」は)それ以外でということもあったと思うんですけど、ベスト3は全部シングル曲じゃないんですよね。3位が「ブライトン・ロック」、2位が「100万$ナイト」、1位は「この夜にさよなら」という曲で、結局ライブで人気の高い曲が上位に来ている。あと、甲斐バンドの40周年は甲斐の40周年でもあるんで、KAI FIVEの「風の中の火のように」を僕のリクエストで入れてます。

 −−30年以上前の楽曲を改めて今のメンバーでレコーディングした感覚はいかがでしたか?

 どんな方法が一番バンドにとっていい形なのかなって考えた結果、一発録音で2日間で全曲をとったんです。やっぱり時代とともに曲のテンポやリズムも変化してきてるんで、今僕らがやっているライブの形をそのまま切り取ったということですね。ただ、勢いだけでいけるライブとは違って、ある程度自分の中で整理しながらエモーショナルな形で臨まないとダメなんですけど、結果的に骨太で緊張感のあるサウンドがとれてよかったですね。

 −−60歳(現在は61歳)という年齢を感じさせない歌声で、キーも変わっていないそうですが、何かケアはしているんですか?

 いや、僕はボイストレーニングもしたことないんです。まあ、20代後半からジムに行って泳いだり、ダンベルのセットとかは自宅に置いてあってやってますけど、でもそれはステージのためだけじゃなくて、気持ちをフラットにするためにっていうのもあって、精神をクリアにする要素のほうが強いと思いますね。

 −−さまざまな場所でライブをやってきたと思いますが、そういう意味で、今作の中で思い出深い曲は?

 「破れたハートを売り物に」は、(東大阪市の)花園ラグビー場(1981年の公演)でいきなりこの曲をやったら暴動が起きたことがあったり。結局5曲目くらいまでやって、危ないなと思って1回(ライブを)止めなきゃいけなくて。僕ら、ライブを止めたのはそれ1回しかないんですよ。そういう意味では印象的なライブでしたね。やっぱり、デカいイベントやコンサートで1曲目に何をやったかというのはありますね。今の都庁が建っている、当時はまだ何もない原っぱだったところで3万人くらい集めてやったTHE BIG GIG(83年)というライブは「ブライトン・ロック」から始めたり。

 −−この40年間で作品の変化は感じますか?

 結局、普段自分がどうやって生きてるかということが表現になっていくわけだから、結婚したり家族ができてからと、一人で生きていた20代とは絶対違う。逆に変わっていく様を見せていくのがプロだと思っているので、変わることを恐れずに、その時の自分を表現していくっていうのが一番正しいと思うし、変わることが成長の証しだと思ってるんです。

 −−キャリアが長いバンドは、解散・再結成を何度か経てきているケースがよくありますが、甲斐バンドのスタンスは?

 86年に1回解散したんですけど、その10年後、誰かがいなくなるとヤバイから集まろうっていって1回ライブをやったんです。それでまた何年かたってアルバムを作ろうということになって。そのあとはリードギターの大森(信和)さんが亡くなったことが大きかったんですけど、そこから本格的にやろうということになったんですね。だから解散を何度か繰り返してるというイメージではなく、何かのタイミングで離合集散してる感じなんです。

 −−ところで、音楽活動でお忙しい中、オフの過ごし方は?

 (サッカーの)ワールドカップを1カ月間追い続けたりとか。ドイツ大会のときは2週間現地に行ってましたし、日韓ワールドカップは1カ月日本中を追っかけて、韓国にも行きました。今度のブラジル大会もどうしようかなと思ってます。

 −−7月からは40周年のアニバーサリーツアーが始まりますね。40年間という歳月に対する感慨はありますか?

 お客さんが3世代ぐらいにわたってきて、いろんなお客さんを見ると「40年やってきたんだな」という感じはします。アニバーサリーツアーは、甲斐バンド40周年という意味合いが深く込められたライブにしたいと思っていて、最終日は日比谷の野音(東京都千代田区の日比谷野外大音楽堂)でやるんですけど、そこでは78年に1回だけライブをやってるんですよ。だから、36年の時を経てやるという。

 −−今後の甲斐バンド、あるいは甲斐さんご自身のビジョンを教えてください。

 このツアーが始まったらたぶんもう次のことを考え始めてますね。それがくせなんですよ。ライブをやるとオーディエンスからすごく熱をもらうんです。最初の3曲は僕らが熱をバーッて浴びせるんだけど、終わってみると僕らが一番元気で、それでまた次の発想が生まれる。何が出てくるかは分からないですけど、ツアーが始まってしばらくしたら次のスイッチを入れていると思いますね。

<プロフィル>

 1974年に甲斐よしひろさん(ボーカル)、大森信和さん(ギター)、松藤英男さん(ドラム)、長岡和弘さん(ベース)で結成し、シングル「バス通り」でデビュー。78年に「HERO(ヒーローになる時、それは今)」、79年に「安奈」を発表。現メンバーは甲斐よしひろさん、84年に加入した田中一郎さん(ギター)、松藤英男さんの3人。甲斐さんが初めてハマったポップカルチャーは、映画全般。「小さいころから何を聴いたか分からないぐらい音楽を聴いていたんですけど、映画もずっと見てました。小学校に上がる前から一人で映画館に行ったりしてたんで。ディズニー映画、『モスラ対ゴジラ』、若大将シリーズとかも見てましたけど、7割以上は洋画。だから、みんなが『字幕が見づらい』って言ってるのを『何言ってんだコイツ』って思ってた(笑い)」と話した。

 (インタビュー・文・撮影:水白京)

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