ベストセラー作家、スティーブン・キングさんの小説を基にスティーブン・スピルバーグ監督の制作会社アンブリン・テレビジョンが映像化した海外ドラマ「アンダー・ザ・ドーム」のDVDが発売中だ。キングさん、スピルバーグさんが制作総指揮を務め、ドラマ「LOST」を手がけたブライアン・K・ボーンさんが制作総指揮・脚本で参加するなど豪華なスタッフが顔をそろえた。ドラマは、ある日突然出現した巨大なドームに閉じ込められた町を舞台に、複雑にからみ合う人間ドラマと不可思議なドームの謎を描き話題を集めた。
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DVD発売を記念し、アニメやマンガ、ゲームといった空想の世界に存在する建造物を現実の技術や材料で建設するとしたらどうなるかについて議論し、工期、工費を検討する「前田建設ファンタジー営業部」が、劇中に登場する“ドーム”を議題に座談会を開催した。これまでも「機動戦士ガンダム」に登場する地球連邦軍の基地・ジャブローの建造見積もりなどを出してきた同営業部は、建設会社という立場から見たドームの存在やドラマの世界観など、さまざまな意見を飛び交わせた。
前田建設工業株式会社(東京都練馬区)で行われた座談会には、岩坂照之さん、堂森宏三さん、綱川隆司さんら各部門から集まったファンタジー営業部のメンバーが出席。通常では劇中に登場するドームを作るためにはどうしたらいいのかを話し合うそうだが、さすがに今回は作るのは難しいということで、「ドームが出現したとき、ドーム内に前田建設の現場があったら建設会社職員として何をすべきか」「ドームを自在に使えるとしたらどのような建築に利用、または建造物を作りたいか」「登場人物の中で前田建設に来てほしい人とその理由」という三つの議題で討論した。
ドームを見て岩坂さんは「閉鎖空間で人間はどのぐらい生存できるのか」にまず意識が行くという。「もし東京にドームができたら、食料や空気の汚染といった問題から、生存するのが大変かな」と話を続け、「米国の都市にしろ東京にしろ(ドームが)どこをどう切り取るかで人々の生存確率がずいぶん変わるのでは」と提起し、議論がスタートした。まずは「前田建設の現場にドームが出現したら一体何をするか」という議題で、岩坂さんはトンネル工事の現場を想定し、「ドームは地下にまで行っているようなので、トンネルの筒があって輪切り状にドームができてしまうとトンネルの先端とドームの間に閉じ込められ、最初の犠牲者になってしまいそう」と苦笑する。トンネルの切られ方もポイントで、輪切りではなく縦にトンネルが切られた場合は「土圧のバランスが崩れるので完全に(トンネルが)崩壊して即死してしまう」とドーム出現による危機を分析する。
ドラマの中では家が切れている描写が出てくるが、綱川さんは「切られ方によるのではと思います。たまたまセンターで切られてお互い寄り添っているようなシーンもありましたが、ものによっては(切断された時点で中央に向かって)崩れちゃいますね」という。発言を受けて「ドラマの舞台は低層の建物が多いのであれぐらいの描写で終わるけど、例えば東京だったら高層の建物がある中でドラマのような切られ方をしたらどうなるんだろうというのはある」と岩坂さん。「逆にあの切断技術はいろいろと使えそう」という意見には「好きなところに出せないのが問題だけどダムを作ろうとした時にドームが出現したら、水を止めるという意味では即工事完了だね」といった意見も出た。
話題はドームが出現した場合に前田建設としてどのような行動パターンが考えられるかに移り、「ドームの正体を突き止めようと動く」ということで、ドームの正体を確かめるための手段について岩坂さんが出席者に案を求めた。出席者の谷昌明さんからは「どこを突いたら壊れるかなど弱点を探す。建設機械があればボーリングなどを使いたいですね」「どこまであるか分からないから掘ってみる。ユンボを持ってきて掘れるだけ掘って底を確かめる」などの方策や、ドラマ内で登場人物が三角法を使って測量をする場面があるが、「俺らに任せてくれれば瞬時にやれる」といったいずれも建設会社らしい発言が行き交った。
ほかにも登場人物たちがドームに触れた際にビリッと感じたものが電気かを調べる、ガスで鉄骨を切る溶断機を使うといった意見が出る中、「多分、僕らは切ったり壊したりしたくなる」と切り出した岩坂さんは、「ドラマ内の登場人物は建設関係の知識がなかったのでそういった行動には出なかったと思いますが、僕らの現場であればいつかのタイミングで専門器具を使って壊そうというフェーズになると思います」とまとめる。すると綱川さんは「建設会社の人間が仮にいたら本当に何ができるのかなというのはあり、閉鎖空間で警察や消防士といった職能みたいなものがあぶり出されてきている」といい、「我々は安全に関してはものすごく配慮している業界なので、衝突すると危ないからドームに“衝突防止”のシールを貼らないとダメですね」と熱弁。ほかの出席者も「それは真っ先にやらないと」と賛同した。
「そういった意味では僕ら建設会社の人間がいれば、もう少し犠牲者を減らせたのではないかという思いはありますね」と岩坂さん。そして「最初のパニック段階を越えてくると、ドームがどういうものか調査したり実験したり、あとはどうやって生存していくのかというフェーズになる」と行動パターンを分析。さらに「いろいろな職業の人がいる中、僕らなら下水処理場や発電所が生きているかを調べたり、(ドラマでは)雨は降るみたいなので揚水式の発電所があれば多少は生き残れるかなといったことをチェックしていくと思います」といい、「原作者のスティーブン・キングさんにはアナザーストーリーとして、建設会社の活躍みたいなのを書いていただきたいなと思ったりしました」と笑いを誘った。
続いては「ドームを自在に使えたら」というテーマで議論。「音が遮断されるのがいい」という綱川さんの意見に対しては賛成の声が即座に上がり、岩坂さんは「これさえあれば中でどんなに大きな音を出しても近隣の方に迷惑が掛からないので、建設会社のイメージは本当によくなると思います」と、音の遮断という設定を絶賛する。しかし、劇中ではドーム内外を行き来することができないため、材料などは事前にすべて搬入しておかなければならず、「一度入ったら出て来られない現場はつらい」と岩坂さんがうめくように言うと、堂森さんも「24時間働かされますよ」と実際にドームがあったら過酷な事態になると悲観する。
水をほぼ通さないという設定にも着目し、「水で使うのをすごく見てみたくて、水がきれいに見える中で仕事ができるのは非常に美しい」と岩坂さん。続けて、「アーチ状のダムのアーチ部分をドームに肩代わりさせて、美ら海水族館のイメージのようなダムは美しいなと思う。そういうダムを作ってみたい」と持論を展開する。さらに温度が調節できるのであればという前提で、岩坂さんは「閉鎖空間を自在に使えるなら農業の革新とか、貴重な生態系を保存するといった実験や博物館に使うようなことは個人的にやってみたい」というようなアカデミックな用途も提案。ほかにも熱に強いことから溶岩内にドームを設置して見学、またエンジンが搭載できるなら宇宙旅行といったユニークなアイデアも出た。
ドームの活用方法を討論する中で、綱川さんから「(ドームに)閉ざされているというよりは“守られている感”を感じた。そこがドラマのカギになっているのでは」と発言。岩坂さんは「ドームがどこにできたのかに意味があるような気がする」と言えば、綱川さんは「あの場所にあるのが意味があると思う」と返し、堂森さんが「閉ざされた中で協力し合えば生きていけるけど、そうでなければみんな死んでしまうみたいな気がする」と劇中でのドームの存在についても議論が白熱する。「(ドームは)人間関係の試金石というか、リトマス試験紙のような役割なのでは。どこを区切られるかで行動が大きく変わってしまう」と岩坂さんは自身の見解を述べた。
ここまでドームについて建設業からの視点で議論を重ねてきたが、最後は「ドラマの登場人物の中で誰に前田建設に来てほしいか」という少々変わったテーマで話し合った。堂森さんが「(主人公の)バービーが一番頼りになりそう」と口火を切ると、次々に同意の声が上がる中、「(劇中で)火事が起きたときの冷静さとリーダーシップは頼りになる。それにドラマの冒頭で、真四角に土を掘っていましたからね」と人格と建設業向きの能力を評価。出席者からも「あれは土木屋だ」と称賛の声が上がる。同じくバービーを推す岩坂さんは「前田建設にはミステリアスでクールな人間がなかなかいないので、一人くらいカッコいい人がいてくれるといい」と社内で物議を醸すような理由を挙げ、続けて「現場では近隣の方々といかに仲良くさせていただくかが重要で、バービーさんみたいな人にお願いすれば効果てきめんなのではと思います」と人材活用術まで披露する。
ほかの登場人物では出席者の一人、由井三平さんから「ビッグ・ジムは何でも手を尽くして仕事を取ってきてくれる」という意見が出ると、「たしかに営業マンぽい一面もある」と同意の声。ビッグ・ジムは街を仕切る町政委員という役どころからか、岩坂さんは「前田建設の職員というよりは、協力して仕事をしてくださる下請け会社の社長という感じがします」と印象を語る。そして、「自分が入社5~6年目でビッグ・ジムの会社に行ったとしたら『違うよ、お前』としかられているイメージがあります」と笑う。綱川さんは劇中でドームが球形であることをいい当てた高校生のジョーを推薦し、「ちゃんと観察ができて結論が出せる。ぜひ、設計にほしい」と理由を説明。岩坂さんはジョーについて「危機予知や読み解く能力は一番ある」と評し、面接官として選ぶなら「バービーはルックスで採りますが(笑い)、登場人物の中でジョーは一番に採用しますね」と高評価だった。
最後に劇中のドームが現実的なものなのか改めて聞くと、綱川さんからは「おそらく球体なのは理にかなっている」と切り出し、「ただ中に何も支えがないので、そればかりは現在の技術ではどうしようもない」という。岩坂さんは「すごくざっくりと言ってしまえば、ドームという形は押しつぶされることに耐えられればできる」といい、発言を受け「大きさや厚みの問題はありますが作ることは可能なのでは」と持論を展開する。「水族館でも昔は考えられないようなものすごい大きな水槽ができるようになって、アクリルの厚さはとんでもないことになっている。それをドーム型にしていけばできなくはなさそうですし、なんらかの必然性があって総力をあげて取り組めば、案外いい線は行くかもしれない。ただなんのために作るのかと経済的な問題がありますね」と岩坂さんが結論づけると、綱川さんが「透明のドームは作れますが、ジョイントの部分の“線”はゆるしてもらわないと……」と語り、笑いを誘った。
*海外ドラマ「アンダー・ザ・ドーム」……DVD(6枚組み)9300円(税抜き)、アマゾンで先行発売中、発売・販売:パラマウント・ジャパン
<前田建設ファンタジー営業部プロフィル>
アニメ、マンガ、ゲームといった空想の世界に存在する建造物を前田建設が本当に受注し、現状の技術および材料で建設するとしたらどうなるかについて、工期、工費を公開するコンテンツ。これまでに「マジンガーZ」の光子力研究所格納庫兼プール建設、「銀河鉄道999」の銀河鉄道株式会社メガロポリス中央ステーション(仮称)発着用高架橋建設、「機動戦士ガンダム」もジャブロー基地建設、「宇宙戦艦ヤマト2199」のヤマト建造などを取り上げ、幻冬舎から「前田建設ファンタジー営業部」「前田建設ファンタジー営業部NEO」として書籍が出版されている。
(取材・文・撮影:遠藤政樹)
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