お笑いコンビ「次長課長」の河本準一さん、「フットボールアワー」の岩尾望さん、「NON STYLE」の井上裕介さんを中心にした、ユニットコントの全国ツアー「CONTS」が28日にスタートする。出演だけでなく、脚本と演出も手がけている河本さんが、コントについて熱く語った。
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−−今回の「CONTS」全国ツアーは、2011年の公演を発展させたものと考えていいでしょうか。
はい。そのときはツアーではなく、東京で単独の公演だったんですが、ユニットコントという形式のライブがめずらしかったし、お客さんも入ってくれたので、会社内でも評判がよかったんです。それで、携帯サイトだけで見られる番組で、コンテンツという言葉と掛けて、「CONTS」と題してネタをいくつも配信していて。今回は、それをさらに発展させ、全国ツアーという形になりました。ただ、今回のツアーも1回だけで終わりにするつもりはありませんよ。1年に何回できるか分かりませんけれども、定期的にやっていけたらと思っています。すでに来てほしいと、手を挙げてくれている地方も、チラホラ出て来ていますので。今後の展開も楽しみにしていてほしいです。
−−フットボールアワーの岩尾さん、NON STYLEの井上さんをメンバーに選んだのは?
僕に持っていないものを持っているからです。的確なツッコミを安定してやれる井上、僕が持っていないボケを全部持っている岩尾。そして、この2人にできないボケが、僕にはあって。この3人がつながれば、きっと面白いものが生まれるんじゃないかって。ただ、僕の中にしっかりとやりたいものがあるので、2人の個性に引っ張られないように意識していますね。というのも、まず人選を考える前にネタを書いているので。これは通常とは逆のやり方なので、2人にしてみれば、普段求められるものとは違うことをやることになるので、戸惑いもあると思います。でも、そこから別の新しい笑いが生まれると思っています。そこは変なプライドは捨てて、頭を柔らかくしてやってもらえればと。
心配はしていませんよ。吸収していけるメンバーだと信じているので。アドリブネタ、シリアスネタ、会場ごとのご当地ネタ、いろいろ用意しているので、楽しみにしていてほしいです。まあ、一番楽しみにしているのは、僕ら自身なんですけどね。
−−楽しみな分、同じくらいプレッシャーもあるのでは?
ほどよいプレッシャーは常に必要だと思います。でも地方でこういうコントライブをやること自体、僕らも初めてなので、何がどうなるかは幕が開いてみるまで分からない。お客さんには、気楽な気持ちで見ていただきたいです。じゃないと僕らが緊張しちゃうんで(笑い)。ただメンバーには「リハで使ったようなアドリブを、そのまま本番でやったりするなよ」ってメッセージを送っているので、そこは相当プレッシャーを感じていると思いますけどね。でも僕自身も、そこは新しいアドリブを考えていって実践してやっていこうと思っているし。そうやってメンバー内で化学反応が起きて、お客さんと対峙(たいじ)したときにまた違う化学反応が起きて、どういう空気感が生まれるか。ええ匂いになるのか、刺激臭になるのか、それは僕ら次第なんですけど。
−−河本さんは、出演だけでなく脚本と演出も手がけていますが、負担が大きそうですね。
負担には感じていないですよ。やっぱり自分でやりたい気持ちのほうが、強いですから。もともと、人から出されたネタでも、本番では少し変えてやるとか、少し頑固な面があるので……。それに出演するメンバーは、ほとんどが東京か関西出身で、岡山出身は僕だけなので、負けたくないっていうのもあります。もしかすると、それが一番のモチベーションかもしれないですね。自分が生まれ育った岡山で培ってきたものが、全国でどれくらい通用するのか試してみたいです。
コントというのは発想なので、生まれ育った環境が違えば、発想力も違ってくるわけで、生まれて2、3歳のときから新喜劇を見て育った関西の人間と、僕みたいに18歳でよしもとに入ってから、初めてまともにお笑いに触れた人間とでは、そもそも年季に違いがあるんです。それでも、僕が岡山ではぐくんできたものだって、絶対に負けないくらい面白いんだという自負がある。それは今回の「CONTS」に限らず、常にそういう気持ちです。コンプレックスがバネになっていますね。
−−では、河本さんにとってコントとは?
たとえば、漫才が小説だとしたら、コントは映画だと思うんです。漫才は小説のように、言葉だけで笑いを伝えていく。その手法の最たるものが落語。コントは、役や設定や動きで、絵とともに笑いを伝えていく。衣装を着て、役に入らないとできないわけです。そういう意味では、マイク1本で表現する漫才はすごいと思うし、憧れもありますが、それは僕にはムリなので……。今は、自分は一生涯コント師としてやっていくんだと、決意と覚悟を持ってやっています。
だから、コントは生活の一部で、自分とは切っても切れないものになっています。もはや日常さえもコントといってもいいくらいです(笑い)。変な話ですが、カメラも何もない普通のときにでも、今、ほんまに自分自身なのかどうか、分からないときがあるんです。
−−素の状態なのに、コントの役柄を演じているような気持ちになると。
そうです。だから、よく後輩から、「カメラ回ってないのに、何やってるんですか?」っていわれる。でも、無意識なんですよね。だからヘタすると、家に帰ったときも、父親みたいなキャラを無意識に演じているのかもしれないし。実は今も、取材というコントを演じているのかもしれない。たまに怖くなるときがありますよ。どれがほんまの自分なのか分からなくなってしまって。キャバクラに行ったときくらいかな? 素でいられるのは(笑い)。……まあ、そのくらいね、のめり込んでハマって考えて作ったコントですから、ぜひたくさんの人に見てほしいです!
<プロフィル>
1975年4月7日生まれ、岡山県出身。NSC大阪校13期生。井上聡さんとお笑いコンビ次長課長を結成して活躍する一方、俳優としても映画「サンブンノイチ」(2014年公開)など数多くの作品に出演。「CONTS」は28日・新潟市民プラザ、7月5日・北九州あるあるワイワイ劇場で開催。今後は、9月10日・大阪なんばグランド花月、10月13日・仙台青年文化センター、10月18日・名古屋芸術創造センター、11月8日・東京ルミネtheよしもとでの公演を予定している。
(インタビュー・文・撮影:榑林史章)