マンガ質問状:「プリニウス」 ヤマザキマリ×とり・みきの合作 「テルマエ」終了で機が熟した

ヤマザキマリさんととり・みきさんの合作「プリニウス」1巻
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ヤマザキマリさんととり・みきさんの合作「プリニウス」1巻

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、ヤマザキマリさんととり・みきさんの合作「プリニウス」です。新潮社の金寿煥さんに作品の魅力を聞きました。

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 −−この作品の魅力は?

 「テルマエ・ロマエ」の大ヒットが記憶に新しいヤマザキマリさんが、「遠くへいきたい」などで知られるとり・みきさんを迎え、ふたたび魅惑の古代ローマ世界を活写する……それが本作「プリニウス」です。

 見どころは、まずなんといってもその絵です。噴煙を上げる火山のド迫力の絵から始まり、ギリシャ神殿や公衆浴場、古代ローマの街並みといった建築物から、蜂やシャチ、マグロ、謎の怪物といった生物まで、精密な描写と大胆な構図を目で楽しむ……。ページを開いた瞬間、濃厚な古代ローマの世界へと一気に引き込まれます。

 そして、主人公・プリニウスのキャラクター。彼は実在の人物で、世界史上もっとも有名な博物学者。森羅万象を網羅した「博物誌」という著作を残しています。彼の“知”を愛する態度、権力におもねらない独立不羈(どくりつふき)の精神、そして周囲を唖然(あぜん)とさせる変人ぶり。懐深く人間味あふれる彼のキャラクターも大きな魅力です。

 さらに本作品が、作風も経歴も大きく違うマンガ家2人の“合作”であることも、ほかのマンガ作品とは一味違う魅力を生んでいます。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 ヤマザキさんは、以前からプリニウスという人物に引かれていて、「いつか彼を、そして彼の見た世界を描きたい!」とずっと思っていたそうです。「テルマエ・ロマエ」が終了し、その機が熟したと考えたヤマザキさんが、とりさんを誘い、2013年に「新潮45」というオピニオン誌で連載がスタートしました。プリニウスは道中、地震、津波、火山の噴火など、あらゆる自然災害に遭遇しています。イタリアは、日本同様に地震や噴火の多い国ですが、古代ローマの人々はいかにしてそのような自然災害と対峙(たいじ)したのか。そのことを、プリニウスを通して描きたいという意図も強くあるようです。

 −−編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください。

 「新潮45」誌に所属する連載担当者も、本アンケートの回答者である私も普段は“活字”の編集者。ともにマンガを担当するのは初めてに近い、いわば“素人編集者”です。

 それこそ、マンガはどのように描かれ、それを作品としてまとめるにはどうすればよいのかについて、知らないことばかり。文字通りゼロからのスタートでしたので、無知ゆえの苦労がたくさんありました。

 −−今後の展開は?

 第1巻は、南イタリアを調査していたプリニウス一行が、皇帝ネロの召喚命令に応じる形で、首都ローマへと北上し、ついに到着したところまでを収録しています。第2巻の見どころは、何といっても首都ローマを舞台に繰り広げられる、プリニウス対暴君ネロ! そして、プリニウスの見た古代ローマの風景や謎めいた生物、不思議な現象については、まだまだ取捨選択に迷うほど“材料”がありますので、そのあたりもぜひ楽しみにしてください。

 −−読者へ一言お願いします。

 まだまだ“プリニウスの世界”はその端緒が開かれたばかり。担当編集者としても、期待しかありません。月刊連載なので、単行本第2巻刊行まではしばらくお待たせしてしまうかもしれませんが、その期待で上がったハードルはやすやすと超えていくものになると思います。乞うご期待!

新潮新書編集部 金寿煥

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