落語家で「林家」と聞けば、東京では三平さん、正蔵さん、木久扇さん、木久蔵さんといった名前が浮かぶが、関西にも「林家」の一門がある。林家染丸一門の筆頭弟子で中堅世代の実力者、林家染二さん(53)が29日、東京・新橋の内幸町ホールで入門30周年の独演会を開く。ハイテンションでパワフルな染二さん。上方の大ネタ二席で、笑わせ、泣かせてくれるはずだ。
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演じるのは「らくだ」と「立ち切れ線香」。どちらもトリの大ネタで、一度に演じられることはまずない。表現力、そして体力がないとできないが、染二さんは「演じ分けを楽しんでいただきたい。落語が初めての方も喜んでいただけると思います」と意気込む。
「らくだ」は、長屋の暴れ者、嫌われ者で、体が大きいから付いた男のあだ名。落語は、らくだがフグに当たって死んでいるところから始まる。らくだを訪ね、死体を見つけた兄貴分と、たまたま通りかかった屑(くず)屋が繰り広げる騒動が、笑わせ、そしてホロッとさせる。
「屑屋も身を持ち崩して底辺の生活をしていて、兄貴分とは同じような境遇だから、どこか引かれ合うものがあるんです。2人とも不器用だけれども、らくだの葬儀をやってやろうとする。その人間ドラマを伝えたい」と染二さん。
もう一席は「立ち切れ線香」。大阪の商人の街、船場(せんば)の若旦那は芸者の小糸に入れあげてしまい、その結果、店の蔵に100日間閉じ込められてしまう。ようやく解放され小糸のもとに向かうと、位牌(いはい)を見せられる。小糸は恋わずらいの末、この世を去っていた。悲しみの中、線香を手向けると……。
「前半では若旦那と丁稚とのやり取りを笑っていただきながら、(東京にはない)”はんなり”とした世界を味わっていただきたい。いろいろ調べて、自分なりの解釈で演じたいと思います」と染二さん。
独演会のサブタイトルに「だんない だんない」と付けた。人気の時代小説作家、高田郁(かおる)さんの作品で、ドラマ化、マンガ化された「銀二貫」のせりふで、意味は「気にしなくていい。大丈夫だよ」。30年にして、新たな挑戦だ。
独演会は29日午後7時開演。問い合わせはSOMEJI(06・6355・4649)まで。(油井雅和/毎日新聞)