注目映画紹介:「イニシエーション・ラブ」ラブストーリーがミステリーに覆る瞬間きっとだまされる

映画「イニシエーション・ラブ」のワンシーン (C)2015 乾くるみ/「イニシエーション・ラブ」製作委員会
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映画「イニシエーション・ラブ」のワンシーン (C)2015 乾くるみ/「イニシエーション・ラブ」製作委員会

 俳優の松田翔太さんと女優の前田敦子さんが出演する映画「イニシエーション・ラブ」(堤幸彦監督)が23日に公開される。乾くるみさんの小説が原作で、最後の2行でラブストーリーが驚がくのミステリーに変貌(へんぼう)することが話題を呼んだ。1980年代後半の静岡と東京を舞台に、奥手な大学生・鈴木と歯科助手・マユの恋愛模様を描く前編(Side-A)と、遠距離恋愛を始めた2人の関係が崩壊していく後編(Side-B)の2編で構成されている。最後の5分で物語が一変する展開には驚きが詰まっている。

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 1980年代後半、バブル最盛期の静岡で、就職活動中の大学生・鈴木(松田さん)は、友人に誘われ気乗りしないまま合コンに参加する。そこで歯科助手のマユ(前田さん)と出会い、交際が始まる。彼女にふさわしい男性になろうとヘアスタイルやファッションを変え、自分を磨いていく鈴木。2人で楽しい日々を送っていたが、就職した鈴木は東京本社への転勤が決まり、週末に東京と静岡を往復する遠距離恋愛を始める。しかし、東京の同僚・美弥子(木村文乃さん)と出会い、鈴木の心が揺れ始める……というストーリー。

 原作小説が見事な叙述トリックで楽しませてくれていただけに、どのように映像化されるのかと期待と不安で作品を見た。クライマックスを迎え、思わず「そうきたか!」と膝を打ってしまった。この種明かしは強烈で、たとえ原作を読んでいたとしても、予想以上に驚くだろう。何を語ってもネタバレしてしまいそうだが、冒頭から物語世界に取り込まれ、どうなっているのかと見ていくうちに、仕掛けられたトリックにどっぷりとはまっていることに気付く。前田さんのカメラ目線を意識した演技がとにかく利いているのだが、結末を知ってから思い返すと少しだけ怖くなる。80年代カルチャーに造詣が深い堤監督だけに、さまざまな小道具やアイテム、楽曲を効果的に織り交ぜ、当時の雰囲気をリアルに再現。そのころを知っている年代なら楽しめる要素の一つだ。鈴木とマユの恋愛模様を楽しみつつ、最後に驚愕の瞬間を迎えたら思わず巻き戻したい衝動にかられる。ちりばめられた伏線の確認のためにも2回見たくなった。TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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