攻殻機動隊:黄瀬総監督が語る「新劇場版」 「新しいものを作りたかった」

「攻殻機動隊 新劇場版」を手がけた黄瀬和哉総監督
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「攻殻機動隊 新劇場版」を手がけた黄瀬和哉総監督

 士郎正宗さんのマンガが原作のアニメ「攻殻機動隊」シリーズの新作劇場版「攻殻機動隊 新劇場版」(黄瀬和哉総監督)が20日、公開される。「新劇場版」は、 2013年に公開された劇場版「攻殻機動隊 ARISE」シリーズに続く物語で、ヒロイン・草薙素子(くさなぎ・もとこ)の過去や公安組織・攻殻機動隊の創設秘話が描かれる。これまでの“謎”が明らかになるということもあり、注目を集める「新劇場版」を手がけたのは、“超一流アニメーター”とも呼ばれている黄瀬総監督だ。「新しいものを作りたかった」と語る黄瀬総監督に「新劇場版」について聞いた。

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 ◇大変な作品といわれるけど実感は…

 「攻殻機動隊」は、1989年に士郎さんが原作マンガを発表。近未来の電脳化社会を舞台に架空の公安組織が描かれている。劇場版アニメ「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(95年公開)、「イノセンス」(04年公開)、テレビアニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(SAC)」(02年放送)などが製作されている。

 黄瀬総監督は「GHOST IN THE SHELL」「イノセンス」の作画監督を務めており、「ARISE」「新劇場版」では総監督として作品に携わった。人気シリーズに総監督として関わることについて「大変な作品といわれるけど、現場にずっと関わっていて、実感があまりないんですね。気負いはないんですよ」とひょうひょうとした様子で語る。

 「新劇場版」で素子の過去や攻殻機動隊を創設秘話をテーマにした理由を「『イノセンス』『SAC』以降の世界を描くとしたら、新たな事件を解決する……という展開になると思う。それではない新しいものを作りたかった」と話し、原作者である士郎さんのプロットを基に製作したという。また、シリーズ全体のバランスを考え「『SAC』のスタッフが参加しているので、意見を聞きました。ズレがないようにしたかったんです」と話す一方、「GHOST IN THE SHELL」「イノセンス」を手がけた押井守監督については「話は聞いていませんね。押井さんは犬とバトーにしか興味がないんじゃないかな?」と冗談交じりに語る。

 ◇“超一流アニメーター”のこだわりは…

 黄瀬総監督がキャラクターデザインも担当している「ARISE」「新劇場版」では、素子が“前髪パッツン”になるなど大胆なデザイン変更も話題になっている。素子のデザインについて「最初は、士郎さんの基の絵に近い可愛い感じだったのですが、ほかのキャラクターとバランスが悪いので、修正しました。今回の素子は完ぺきではない。失敗もするし、可愛げもある。スーパーウーマンになる前の素子」と説明する。

 黄瀬総監督は、アニメファンの間で“超一流アニメーター”とも呼ばれているが、「新劇場版」の作画は、スタッフに任せたところも多かったといい、「手を入れようとすると、いろいろやりたくなるし、終わらないんですよ」と話す。さらに「作画監督の時も終わりはないと思っていましたね。ただ、お客さんが喜んでくれたら完成です。芸術家ではないので……」とも語る。

 国内のアニメは最近ではフル3Dの作品が増えているなど、転換期を迎えつつあるといわれている。「新劇場版」はCGを駆使しながらも、人物は2Dで製作されているそうだが、黄瀬総監督は「手描きのキャラクターは個性が出るんですよ。3Dのモデリング(造形)は人形に見えてしまう。(自分は)絵を描きたいですね。ただ、(フル3Dアニメの)『団地ともお』は好きですよ」と“職人”的なこだわりについて話した。

 ◇プロフィル

 きせ・かずちか 1965年3月6日生まれ。劇場版アニメ「機動警察パトレイバー THE MOVIE」(89年公開)の参加を機にアニメ制作会社「Production I.G」で活動。「機動警察パトレイバー 2 th  Movie」(93年公開)や「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(95年公開)、「イノセンス」(2004年公開)、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」(07年公開)などの作画監督を務めた。

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