「週刊少年ジャンプ」(集英社)で2004年から連載されている空知英秋さんの人気マンガを実写化した映画「銀魂」(福田雄一監督)がヒット中だ。主演の小栗旬さんは万事屋(よろずや)を営む侍・銀時を、俳優の菅田将暉さんは万事屋で働く志村新八役を演じている。福田監督の下、撮影中は毎日が「文化祭の前日、前々日のようなノリだった」という小栗さんと菅田さんに撮影エピソードや原作マンガやアニメへの思いなどを聞いた。
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「銀魂」は、天人(あまんと)と呼ばれる異星人に占領された江戸時代を舞台に、なんでも屋を営む侍・銀時らが難題を解決する姿を描くSF時代劇コメディー。06年4月にテレビアニメ第1期がスタートし、11年4月~12年3月に第2期、15年4月~16年3月に第3期が放送され、10年と13年には劇場版アニメも公開された。
――何度か共演しているというお二人ですが、お互いの印象は?
小栗さん (菅田さんは)今、一番勢いのある若手だと思いますね。才能もあるし、影響も受けているし。あと、僕が絶対に手に入らない部分ですごく興味があるのは、(菅田さんのように)関西人の方って面白いことを求めている。そのまま終わらせちゃいけないという感覚を持っている方が多い。すべての関西人の方ではないとは思うんですけれど。関西の方って「話にオチをつけずに終わらせるんじゃねえよ」みたいなそういう感覚の人が多いですよね。僕は関東出身なのでその感覚は全然ないから、現場とかで一番嫉妬(しっと)するのはそういう、話を面白くさせて終わらせないとだめ、みたいなことをなんですよね。
菅田さん まあ、そうですね。ずっとオチばかりつけていて、オチがないというオチもある。面倒くさいですよね。
小栗さん そういう菅田くんがということよりも関西の方たちの持っている笑いの感覚みたいなものはいつもうらやましいなと思っていて。菅田くんもそういう人なので。その感覚は結局、頭の構造もそういう感覚になっているから、何が面白いのか、どうしたら面白くなるんだろうというのを考える素養があるんですよね。それがいいなあと思います。
――菅田さんの小栗さんへの印象は?
菅田さん 小栗さんは小さいころから見ていた人で、そこから僕は俳優としていろんなことを学んで。ありがたいことに、毎回、分岐点のときに背中を押してくれる人。そこから数年たち、「銀魂」というところで、真面目に悪ふざけをさせてもらっているというのが、今回本当にうれしくて楽しくて。生きざまですよね。小栗さんが出演した(2007年の)「情熱大陸」(TBS・MBS系)を(中学生の)あのころ見たときの衝撃しかり。その生きざまに嫉妬しますけれどもね。
――福田組が楽しいと皆さんおっしゃっていますが、現場で一番面白かったエピソードは?
小栗さん 突出してこういうことがあったいうのはパッと思い浮かばないけれど、現場がずっと文化祭のみたいなムードだったんですよね(笑い)。
菅田さん すごいいい例えですね(笑い)。
小栗さん 文化祭というか、文化祭を迎える前日、前々日(の準備期間)みたいな。みんなで「もうすぐ文化祭だ。ここで頑張るぞ!」みたいな、そういう感じがずっと漂っている現場だったなと。
菅田さん 確かに。「誰かガムテープ持ってない?」みたいな(笑い)。
小栗さん そうそう。なんか変なテンションになって。放課後になっているのに誰も家に帰らない(笑い)。その先頭に福田監督が立ってますからね。座長、座長ってみんな自分のことを言ってくれていたけれど、福田組って福田さんが座長なんじゃないかな。気が付いたら、監督が一番面白そうに現場にいるから、みんなそれに当てられちゃって、なんか楽しい、みたいな(笑い)。
――そのワイワイした中で、現場で「こうちゃおう」みたいなアイデアが生まれました?
小栗さん そうですね。冒頭、菅田くんと監督とで「これ銀ちゃんの主題歌歌えば面白いかもね~」とか言っていたのが本番になっちゃったり。
菅田さん 歌関係はだいたいそうですよね(笑い)。
小栗さん 「銀魂音頭」っていうのも(ロケ地の)京都でみんな突然言い出したんですよ。「(この映画は)祭りみたいなもんだから、♪銀魂音頭でギンギンギンとか歌っちゃえばいいんじゃないかな」とか言っていたら、そのまま本番、録音しようみたいな(笑い)。
――菅田さんが面白かったエピソードは?
菅田さん あえてピンポイントで絞るなら、橋本環奈にはすごくびっくりしましたね。あんなに鼻ほじるのが目立ってて。一番おかしい。(主役を)食ってますよね。
小栗さん あれで10代なのが本当に信じられない。ある種、達観していて、俯瞰(ふかん)で自分のことを見ているというのもあるし。それでちょっと毒が強めなので(笑い)。
菅田さん 本当ですよ。衝撃的でしたね。他の人たちはみんな面白いのは知っているし、ある程度先入観があって、ちょっとショーを見に行くような感覚だったんですけれど、橋本環奈は予想外でしたね。
――お二人とも、この子はどう鼻ほじるんだろうと思っていたわけですよね?
菅田さん 絶対にこの神楽の役なんて照れるし、「やりたくない」っていうのが普通の感覚なんでしょうけれども、彼女は、初めて「やっていいんですか」と前のめりだったのが面白かったです(笑い)。
小栗さん 本当に気質としてすごい女優さんだと思う。あの環奈ちゃんが出てくるところ、「これはすごい女優さんに化けるだろうな」という資質を持っているように見えましたし。
菅田さん コメディエンヌって(日本に)あまりいないですもんね。
小栗さん なかなかの化け物ですよ(笑い)。それはあのビジュアルを持っているんですから。そこがすごいですよね。そのままでいればめちゃくちゃ可愛いですからね。
――1000年に一人ですからね。
菅田さん 「黄金比と白銀比、二つ持ってるんですよ、私」というのがこんなにもイラッとくる子はいない(笑い)。それが笑いにできるのがすごい。
――マンガ化やアニメ化された作品ですけれど、原作ものがある作品のキャラクターの寄せ方は?
小栗さん 難しいですね。自分の中では寄せているつもりはいろいろあるんですけれど、果たしてそれがキャラクターを通して出ているかというとなかなか、難しいところ。自分はキャラクターに寄せていっているつもりではいるんですけれど、どうも最近、自分の中で分かったのは、“小栗旬”っていう成分が大分強いみたいで、いろんなメガネをかけられた結果、小栗旬って何をやっても小栗旬だ、みたいなことを言われることが多いんですよ。自分の中ではじゃあ小栗旬って何?と思っているんですけれど、どうもそういうところがあるみたいで。そのへんはよく分かりません、はっきり言って。
原作については自分が好きなのはコメディー部分で、すごく長く続いている作品なので本当にそのときの世相とか持ってきてやっていたり、かなり繊細にその時代を捉えて(原作の)空知(秀秋)さんがギャグを作られている。そんな中でも僕は王道が好きなんだなと思ったんですけれど。やっぱり将軍のくだりの話だったり、あと結構笑った回は、みんなでトイレに入ったら紙がないっていう回。
菅田さん あれはおもろいっすね。
小栗さん ベタなんだけど、出て来て、かなり粗めの紙やすりで拭いちゃった、あのくだりが結構好きなんですよね。シリアスと笑いとのバランスが素晴らしいなと思います。
――原作について、菅田さんは?
菅田さん 僕もアニメーションを見て育ってきたので、印象がすごく強かったから、どうしたって無意識のうちに(アニメのように)やってしまうところもあるし、先入観ももちろんあるし。(アニメでの)「銀さーん」と言ってしまうところとか「おいー」とかが絶対にこの音だというのは(アニメで体に)染みてしまっていたので、それを体現はなるべくしたいなと思ってやっていました。
「銀魂」の面白さっていわゆるメタ的ないじりとパロディーだから、小栗さんが冒頭歌うあの曲の面白さだったり、このメンバーだからこそ枠を飛び越えてマンガのコマにいるキャラクターがコマのことをいじったら面白いという発明(発想)が「銀魂」の面白さなので、そういうところが高級食材(キャスト)が集まっているこの現場で一緒にやりたいなと思ったことですね。
――コメディーで笑わせるってすごく難しいことだと思いますが、コメディーに対してどういう意識で演じているんでしょうか。
小栗さん 先輩の古田新太さんが言っていたんですけれど、芝居には正解がないけれど、笑いには正解があるという。結局、この間(間)で何を言ったかでだいたい笑えるような仕組みになっていると。その間をつかめなかったり、勢いとかトーンが出ないと結局、お客さんは笑ってくれないということだから、その正解をちゃんとやれれば笑いに持っていけるはずなんだとおっしゃっていて。
実際に一緒に舞台に上がっていると、確かにそうだなと思う部分があったり。やっぱりちょっとした間だったりするんですよね。あと声のトーンとか。ようはここまで聞こえていたら、その後のせりふが聞こえていなくてもいいということもあって。結局、僕はその間が分からないので、そういうのを分かるようになるのは難しいな、と。
――今回は意識的にこの間で、というのは作っていった?
小栗さん 間については、ほとんど福田さんに聞きました。俺は面白いか分からないので(福田監督を信頼して)。
菅田さん 僕はお笑いが大好きなので、芸人さんたちのやられるお笑いとコントと、お芝居のコメディーはまた全然違うものだと思いますけれど。ただ、僕は福田組に入るときに心掛けていることは、大きい声を出すということ(笑い)。それくらいですね。
小栗さん ちょっと場違いに大きな声って面白いよね。今回もヤスケン(安田顕)さんが声デカイだけで面白い(笑い)。
菅田さん 逆にそれが最後悲しくもなりましたけれどもね(笑い)。
<小栗旬さんのプロフィル>
おぐり・しゅん 1982年12月26日生まれ。東京都出身。98年、「GTO」で連続ドラマレギュラーデビュー。2003年、蜷川幸雄さん演出の舞台「ハムレット」に初出演し、以降は蜷川作品の常連となる。ドラマ「花より男子」シリーズ(05~07年)、「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」(07年)、映画「クローズZERO」シリーズ(07、09年)などの出演で人気を不動のものにする。映画「シュアリー・サムデイ」(10年)では俳優として史上最年少となる映画監督デビュー。主な出演作は「岳 -ガク-」(10年)、「宇宙兄弟」(12年)、「ルパン三世」(14年)、「信長協奏曲」「ミュージアム」(共に16年)など。28日公開の映画「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」の公開も控える。福田監督作には「勇者ヨシヒコと魔王の城」(11年)のゲスト出演や、映画「HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス」(13年)の脚本協力、今年は「ヤングフランケンシュタイン」でミュージカルにも初挑戦する。
<菅田将暉さんのプロフィル>
すだ・まさき 1993年2月21日生まれ。大阪府出身。シリーズ最年少で主役に抜てきされた「仮面ライダーW」(2009~10年)でデビュー。13年の主演した映画「共喰い」で第37回日本アカデミー賞新人俳優賞に輝く。14年には「そこのみにて光輝く」などで、第24回日本映画批評家大賞助演男優賞他数々の映画賞を受賞。17年は主演作「キセキ -あの日のソビト-」「帝一の國」、寺山修司原作「あゝ、荒野」「火花」や初声優を務めた劇場版アニメ「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」などに出演。福田監督作には、映画「明烏 あけがらす」(15年)、ドラマ「宇宙への仕事」「勇者ヨシヒコと導かれし七人」(共に16年)などに出演。
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