ゲッターロボ アーク:“担当編集”中島かずきが語る誕生秘話 そして「グレンラガン」へ 受け継がれるゲッター線

「ゲッターロボ アーク」の一場面(C)永井豪・石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
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「ゲッターロボ アーク」の一場面(C)永井豪・石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所

 永井豪さん、石川賢さんの人気マンガ「ゲッターロボ」シリーズの最終章が原作のテレビアニメ「ゲッターロボ アーク」が、7月4日からAT-X、TOKYO MX、BS11ほかで順次放送される。原作は、2001~03年に「スーパーロボットマガジン」(双葉社)で連載されたマンガ。実は現在、脚本家、劇作家などとして活躍する中島かずきさんが、同誌の編集長をしていたのは、ファンの間では有名だ。中島さんは劇団☆新感線の舞台、アニメ「天元突破グレンラガン」「プロメア」「バック・アロウ」などで知られる人気脚本家。熱い展開が人気の中島さんの作品は“ゲッター線”の影響を大きく受けているという。中島さんに「ゲッターロボ アーク」の誕生秘話、同シリーズの影響などについて聞いた。

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 ◇地獄の釜の蓋を開けるような気持ちで

 「ゲッターロボ アーク」は、1974年に連載が始まった「ゲッターロボ」をはじめとする「ゲッターロボ・サーガ」の最終章。「ゲッターロボG」(1975年)、「ゲッターロボ號」(1991年)、「真ゲッターロボ」(1997年)などが描かれ、「ゲッターロボ アーク」は、「アクションピザッツ」増刊の「スーパーロボットマガジン」で2001年に連載スタートした。掲載誌休刊に伴い連載も休止となったが、その後、石川さんが亡くなったため、「ゲッターロボ アーク」は未完となっている。

 連載誌「スーパーロボットマガジン」は、ゲーム「スーパーロボット大戦」に登場する作品を中心に、かつて人気を博したスーパーロボットアニメのコミカライズを柱とした専門誌として2001年に誕生した。中島さんは当時、双葉社で「スーパーロボット大戦」シリーズの攻略本やコミカライズの編集を担当しており、同誌の柱として「ゲッターロボ アーク」の連載を提案した。

 「『ゲッターロボVSゲッターロボG』というゲームに準じた設定のコミカライズをお願いしたところ、評判がよかったんです。続けて『ゲッター』の新作をお願いしたかったんですが、『ゲッターロボ號』がきれいに完結していたので、そこをいじる気はなかった。ただ、『號』の中で、真ゲッターロボが開発された時期のエピソードには触れられていなかった。だから、そのミッシングリンクを描いてもらえないですか?とお願いしたんです。そこから『真ゲッターロボ』が始まりました。これが完結した後、『スーパーロボットマガジン』スタート時に、雑誌の柱としてお願いする以上、いよいよ『號』の先の新しい物語を始めてもらえないかと相談したんです」

 「ゲッターロボ アーク」は、中島さんのアイデアも盛り込まれているが「賢先生にほとんどお願いする形」で連載が始まった。

 「僕が提案したのはカムイの設定ですね。ハチュウ人類と人間のハーフにしませんか?と提案しましたが、ほかはもう賢先生にお任せしました。あとはゲッターロボの名前ですね。アーク、キリク、カーンはどうですか?と提案しました。梵字(ぼんじ)にしようと言ったのはどちらであったか、細かく覚えていませんが、いろいろな話があり、何となく出てきたんじゃないかな? 賢先生の作品は、仏教的なイメージで宇宙戦争を描かれている印象があります。『5000光年の虎』の単行本で描き足した見開きで、仏教モチーフのキャラが宇宙空間にひしめき合っているシーンのインパクトは忘れられません。その辺から、梵字が似合うのではと思ったのかもしれません」

 「スーパーロボットマガジン」は、2003年に休刊してしまう。

 「新作をお願いするときも地獄の釜の蓋(ふた)を開けるような気持ちでした。毎回、原稿をいただきながら、このスケールの作品を最後まで掲載できるのか……という一抹の不安はありましたね。雑誌の売れ行きも分かっていましたし。申し訳ない気持ちです」

 ◇マンガ版はアニメよりもお行儀が圧倒的に悪い

 「ゲッターロボ・サーガ」には、ゲッター線という言葉がある。生命の進化を促すエネルギー体で、「ゲッターロボ・サーガ」に影響を受けたことを比喩として「ゲッター線を浴びた」などと表現することもある。中島さんもゲッター線をもろに浴びた一人だ。マンガ版「ゲッターロボ」の連載が始まった1974年、同作を読んで衝撃を受けた。

 「僕は、賢先生をデビュー時から見ている読者で、原作原理主義者なんです(笑い)。『サンデー』で『ゲッターロボ』の連載が始まったのが中学生の時。当時のアニメのコミカライズって、アニメの放映が終わると連載も終わるし、どこか刺し身のつまのようなイメージがあったんですね。ところが、『ゲッター』は第1話からスケールが違うんですよ。これはむしろ『空手バカ一代』じゃないか、というところから始まって(笑い)。『石川さん、本気だ。これはすごい!』となった。アニメよりもお行儀が圧倒的に悪い(笑い)。そこが面白いんです」

 何が「お行儀が悪い」のだろうか?

 「隼は過激派崩れで、人の皮を剥ぐし、竜馬も戦うことに躊躇(ちゅうちょ)しない。犬の首も斬る……。ひどいですよね(笑い)。ただ、当時の少年マンガ誌の感覚では、そこまでお行儀が悪くないですよ。『サンデー』で当時、連載していたのは『男組』ですからね。ただ、コミカライズとしては行儀が悪い。コミカライズでこれを描くのは賢先生ならではですよ」

 ◇ゲッター線を浴びた人が絶滅せずに残っていけば…

 中島さんは「天元突破グレンラガン」「プロメア」「バック・アロウ」などゲッター線を感じる作品を世に送り出してきた。

 「影響は大きいですよ。野放図な主人公が個人的な動機から動き、それがやがて神や宇宙や進化といったマクロな世界を揺るがす物語となっていく。そのドラマツルギーは石川作品に大きく影響を受けています。あんな作品が書きたいと思っていた。賢先生の作品のせりふは体の奥底に染みついていて、ついそのフレーズを使ったりする。『ちったあ驚れえたか』とか『追い詰められた人間の恐ろしさ、見せてやるぜ』とか、賢イズムなせりふをつい書いてしまう。そういえば、庵野秀明さんも『トップをねらえ!』でやってましたね。『合体したガンバスターをただのマシンと思わないでよ』って。あれは『ゲッターロボ』にあるせりふのもじりです」

 ゲッター線を浴びたクリエーターが、次の世代に向けてゲッター線を放つ。その影響は脈々と受け継がれている。一方で「最近、ロボットアニメは元気がない」という声もある。

 「自分が面白いと思ったものが、次の世代にも面白いと思ってもらって、つながっていけばうれしいですね。時代が違うと言われたら、そうなのかもしれないし、しょうがないところもあるのかもしれません。だから、自分たちが面白いと思ってきた要素をそのままやるのではなく、今伝わる表現方法でエンターテインメントにしていきたい。そう思ってやっています。中学生の頃から、賢先生の作品は大ヒットするものではなく、好きな人がディープに好きになるマンガだと思っていました。ただし、一度好きになったらその熱は冷めない。エンターテインメントには、はやり廃りもありますが、ゲッター線を浴びた人が絶滅せずに、恐竜帝国のように残っていけば、また波がくると信じて。それでこういう破天荒な面白さがつながっていけば」

 テレビアニメの放送に向けて「自分がかかわって始めたけど、中途半端に終わってしまった。アニメにすることで、ある種のけりがつけばと期待しています。動くエンペラーが見たい!」と話す中島さん。アニメ「ゲッターロボ アーク」が新たなに“波”になることを期待したい。

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