夏達:「外見ではなく作品を見て」 “美人すぎる”中国人マンガ家インタビュー

中国人女性マンガ家の夏達(シャア・タァ)さん
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中国人女性マンガ家の夏達(シャア・タァ)さん

 マンガ誌「ウルトラジャンプ」(集英社)に連載中のマンガ「誰も知らない~子不語(ツプゥユウ)~」の作者で、インターネットで「美人すぎるマンガ家」として話題の中国人女性マンガ家・夏達(シャア・タァ)さん。初来日した夏達さんに、作品やマンガへの思いを聞いた。(栗原拓郎・毎日新聞デジタル)

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 来日後、都内で行ったサイン会では、「繊細で、温かくて懐かしい感じがする」などとファンから感想をもらえたことが「本当にうれしいです」と笑顔を見せる。一見、あどけなく見えるが、作品やマンガについて語り始めると、表現者としての理知的な素顔がのぞく。マンガとは「生きた証し。自分がいなくなった後にも残るもの」、漫画家に必要なものは「努力と継続」と話す29歳。「もっと速く描けるようになって、ひと月に二つの連載を持ちたい。いろいろな世界を作っていきたいと思っています」と意欲的だ。

 マンガに興味を持ったのは12歳のころ。よく読んでいた日本のマンガを聞くと、車田正美さんの「聖闘士星矢」や鳥山明さんの「ドラゴンボール」、井上雄彦さんの「スラムダンク」、冨樫義博さんの「幽遊白書」……と次々と作品名が挙がった。「家では小説ばかり読んでいて、友だちも多くなく、あまり目立たない子だった」という夏達さんが初めてマンガを描いたのは中学生になってから。学園モノのマンガを描いたところ、友人からは描いていること自体を驚かれたという。

 夏達さんは高校生のときに、雑誌で新人作品を掲載する枠が募集されていることを知り、自ら応募。学園モノの短編「成長」でデビューを果たした。大学では1年に短編1作品を描いていたが、プロになる決意をしたのは大学卒業後。「(企業の)インターンをしていたが、作品を描きながら働くのは不可能だと思った。会社員は自分に向いていない」とマンガ家の道に進む。以後、学園モノや想像上の中世ヨーロッパを舞台にした作品、古代中国のストーリーなどの作品を発表。多数のファンを獲得している。

 現在は中国・杭州に住み、アシスタント1人をつけて作品を作っている。「昼夜逆転した生活なので、仕事場がグチャグチャになっていることがあるんです。原稿に墨をこぼしてしまったこともあるし、一度、水の入ったコップと墨を入れた瓶を間違えて、飲んでしまったこともあります」と照れ笑いする夏達さん。7時間続けてサイン会を行ったこともあるそうで、「あまりにたくさんのファンが集まってくれたので、途中で打ち切るわけにいかなくて、会場を何回も変えて、最後は外の庭でやりました。人数は……ご飯も食べないで、昼間から夜までやっていたのでわかりません」と苦笑い。

 最近のお気に入りは、連載中の作品のサブタイトルと同名の中国・清時代の小説「子不語」だといい、「古い言い伝えや妖怪の話などが書かれていて、(自身の作品と)内容は違うけれど形式は似ているかもしれません」と話す。日本の作品では、羽海野チカさんのマンガ「ハチミツとクローバー」が好きだという。「ゲーム好きというのは本当?」と問いかけると、「漫画家になる前はやっていたけど……」と照れ笑いしていたが、仕事のないときは、オンラインゲームを楽しんでいるようだ。

 09年3月には「ウルトラジャンプ」で連載を開始。「日本デビューのオファーは突然でした。びっくりしたのと同時に、すごくうれしかったし、(同誌の)他の作者の方たちの作品は、今まで私も読んでいたし、すごい方たちばかりだったので、緊張もしました」と当時の心境を説明する。「誰も知らない~子不語(ツプゥユウ)~」。サブタイトルの「子不語」とは、孔子の「論語」からの引用で、「『不思議な世界のことは議論するな』というような意味で、『語』というのは中国では言語のこと。この物語では主人公の名前にもなっていますし、言葉の力というのがすごく重要になっている。口にしてはいけない言葉もあれば、口にすることで変えられる力もある」と冗舌に語る。

 作品を描く際は「誠実に、うそのないように描くことを大事にしています」と語る夏達さん。見どころを聞くと「それはわからない。読んでいただいて決めていただくのが良いと思う」と話す。ネットを中心に「美人すぎるマンガ家」などと話題になっていることについて質問すると、複雑な表情を浮かべながら「私の外見ではなくて、作品を見てくれるとうれしいです。マンガ家が本分ですから」と控えめに訴え、日本のファンには「自分の感情や世界を、みなさんと共有していけたらうれしいです」とメッセージを送った。

 「誰も知らない」は、大自然と古い文化が混じった不思議な空気で満たされた山村を舞台に、異世界と交流できる不思議な能力を持った少女・語(ユウ)が、大人たちに見えない何かを感じ取り、数々の不思議な出来事と出合いながら成長していく姿を描くファンタジー作品。

<夏達さんプロフィル>

 中国・湖南省懐化市出身。29歳。高校のときに短編「成長」でデビュー。主な作品に「同類」「安多莉」など多数。2008年中国金龍賞最優秀作品賞受賞。同年5月に中国・杭州で開催された第6回「中国国際アニメ・漫画祭」では「イメージ大使」を務める。日本では、09年3月から「ウルトラジャンプ」で「誰も知らない~子不語(ツプゥユウ)~」を連載。単行本は現在2巻まで出版されている。

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