注目映画紹介:「ザ・ロード」 終末は人類の終わりであると同時に始まり、寓意に満ちた物語

「ザ・ロード」の一場面
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「ザ・ロード」の一場面

 映画「すべての美しい馬」(00年)や「ノーカントリー」(07年)の原作者として知られるコーマック・マッカーシーさんの小説を映画化した「ザ・ロード」(ジョン・ヒルコート監督)が26日公開された。主演のヴィゴ・モーテンセンさんが今年の米アカデミー賞で主演男優賞にノミネートされた作品でもある。

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 なんらかの理由で滅びた人類。太陽は姿を見せず、辺り一面が灰色に沈み、身を切るような寒さの中を、薄汚れた身なりの父親と幼い少年が南に向かって歩き続けている。歩きながら父親は息子に道徳心を説き続け、息子は飢えてもなお、他人に手を差し伸べる優しさをみせる。果たして、2人の行く手に未来はあるのか……。

 くしくも、先ごろ公開された「ザ・ウォーカー」も世紀末の話だった。あちらは本を運ぶ男の話。こちらは「火」を運ぶ父子の話。ここでいう火とは「心に宿るもの」。つまり、希望であり、夢であり、愛であり、未来を生きるための生命の糧のことだ。

 オーストラリア生まれのヒルコート監督は、これまで数本の長編映画を手掛けているが、日本では未公開の作品が多く、また、脚本を担当したジョー・ペンホールさんも、過去に「Jの悲劇」が公開されているが、日本ではまだなじみが薄い。一方で、主人公を演じるモーテンセンさんやその妻役のシャーリーズ・セロンさん、そして父子が旅の途中で出会う老人ロバート・デュバルさん、さらにガイ・ピアースさんと、俳優陣は豪華だ。

 色彩の加工程度で、コンピューターグラフィックス(CG)の利用を最小限にとどめたという風景描写。うつうつとした映像に心は沈むが、同時に希望も感じる。なぜなら、絶望と希望、死と誕生が表裏一体であるように、終末もまた、人類の終わりであると同時に始まりでもあるからだ。寓意(ぐうい)に満ちた物語に魅了される。26日からTOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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