溝端淳平さん主演の映画「君が踊る、夏」が11日に公開された。難病にかかり、「5年は生きられない」と余命宣告された少女・さくらの「よさこいを踊りたい」という願いをなんとかしてかなえてやろうとする人々の献身的な愛が胸を打つ感動作だ。さくらの姉で、溝端さん演じる寺本新平の高校時代の恋人・野上香織を演じた木南晴夏(きなみ・はるか)さんに話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
ウナギノボリ
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映画「20世紀少年」では、ヒロイン、カンナの元気のよい友人、小泉響子役、4~6月に放送したドラマ「素直になれなくて」では、東方神起のメンバー、ジェジュンさん演じる兄思いの妹役で、それぞれに異なる顔を見せてきた。そしてこの映画では、難病で苦しむ妹を、自らの夢をあきらめ、亡き母に代わって面倒を見る姉を演じている。
今回の香織役を、「耐えたり、強がったりばかりで、(香織としての)本当の気持ちを外に出せるシーンがほとんどなかった」と振り返る木南さん。「木南晴夏の上に、香織(という役)をかぶせ、その上にさらに、(香織の本心を気取られないように)香織をかぶせなければならなかった」というところに苦労を感じたという。
難病を抱える妹がいるが、香織自身はいわゆる普通の女の子だ。原作があるわけでもなく、役作りは「私自身、どうしたらいいんですかと誰かに聞きたいくらいでした」と打ち明ける。それでも、「さくらの病気について調べたり、モデルになった少女のドキュメンタリーを見たり、実際に(モデルの子の)お母様とお会いしてお話をうかがったり、難病の子の親御さんが書いた本を読んだり」と、とにかくできることはすべてやった。「そうやって、香織がどういう気持ちなのかを自分の中に植えつけることぐらいしか、やれることがなかったんです」と語る表情は、困難なことをやり遂げた後のすがすがしさにあふれていた。
内面的なアプローチもさることながら、よさこい鳴子踊りもマスターする必要があった。「振り付けを覚えるのに、まず時間がかかるんですが、その振り付けも、作りながら変わっていくという試行錯誤の中での特訓だったので大変でした」と、約2カ月の特訓のつらさを語ったが、「踊りのシーンは本当に楽しかった」と笑顔を見せる。「芝居の面ですごく思い悩むシーンが多かったので、よさこい祭の踊りのシーンを撮る日は、今日は踊れるんだ!と、本当に楽しんでやれました」と振り返る。
映画の序盤と終盤に登場するよさこい鳴子踊りは、もちろん見どころだが、木南さんが個人的に印象深いシーンを挙げてもらうと、それは、「5年前の高校生のときのシーン」だという。「いろんなものを抱えた香織から全部を取り除いて、夢を持っているただの女子高校生に戻れたので、唯一楽しめるシーンでした」。ただ、新平役の溝端さんと、新平の親友役の五十嵐隼士さんからは、「私が一番年上なんですけど、『はるちゃん、キツいなあ』と、さんざん(25歳で)制服が似合わないといじられました」と笑う。
最近は難病を扱って涙を誘い、感動作として打ち出す作品が多い。そんな中で今作は、確かに涙腺が緩む場面は何度もあるが、それが決して悲しみから来るものでないのが心地よい。
「病気を抱えた少女がよさこいを踊るということに、最初は、周囲の人々は心配したり、『うそでしょ』と言いますが、最後には、元気に踊ります。これは実際にあった話で、あきらめないことの大切さみたいなものを、台本を読んだときに一番強く感じました。それは、病気を現在抱えている方たちだったり、それ以外の方たちにも勇気や元気を与えられるテーマだと思います」
「よさこい祭り」は1954年、戦後復興の町おこしとして高知市で開かれた。つまり“人々を元気づけるための祭り”であり、そこで踊られるのが、よさこい鳴子踊りで、溝端さんと五十嵐さんが振る色鮮やかな纏(まとい)が風を切り、木南さんとさくら役の大森絢音ちゃんが鳴らす鳴子が高らかに響き渡る。その音や舞、息のあった踊り手たちの掛け声が、躍動感をもたらす。木南さんは「私はこの物語から元気をもらいました。観客の方々にも、同じように感じていただけたらうれしいです」とさわやかな笑顔でしめくくった。
<プロフィル>
1985年8月9日、大阪府出身。第1回「ホリプロNEW STAR AUDITION」でグランプリを獲得し、芸能界デビュー。映画「20世紀少年」第2章・最終章(09年)やドラマ「銭ゲバ」(09年)などに出演。10年のドラマ「素直になれなくて」では、今作「君が踊る、夏」の主題歌を担当した「東方神起」のジェジュンさん演じる「ドクター」の妹を演じた。初めてハマったポップカルチャーはマンガの「ドラゴンボール」。「兄が全巻を持っていて、いまだに実家に帰ると読み返しています」という。
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