注目映画紹介:「恋愛戯曲」 劇作家・鴻上尚史さんのメガホン 深キョンの3変化も見どころ

映画の一場面。(C)2010「恋愛戯曲」製作委員会 配給:ショウゲート
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映画の一場面。(C)2010「恋愛戯曲」製作委員会 配給:ショウゲート

 人気劇作家で演出家でもある鴻上尚史さんがメガホンをとり、深田恭子さんと椎名桔平さんを主役に迎えて、自身の戯曲を映画化した「恋愛戯曲 私と恋におちてください。」が25日に全国で公開された。

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 スランプ中の人気脚本家、谷山真由美(深田さん)は、まもなく締め切りだというのに、新番組の台本を、いまだ一ページも書けていなかった。そこへ、彼女の尻をたたくためにテレビ局から送り込まれたプロデューサーの向井正也(椎名さん)。「なんでもしますから書いてください」という彼に、向井は「じゃあ私と恋に落ちて」と言い放つのだった……。

 映画は、谷山がシナリオを書くのに苦労している現実の世界が「第1階層」、その谷山が考える、脚本家志望の主婦がシナリオを書いている「第2階層」、さらにその第2階層の主婦が構想する、セレブ作家の登場するゴージャスな「第3階層」の三つの世界から成り立っており、それぞれの世界で、深田さんが人気脚本家、疲れた主婦、セレブ作家という異なるキャラクターを演じ分けているところが見どころの一つだ。

 01年に初演、06年に再演された鴻上さん自身の戯曲が原案。映画化にあたっては、設定がいくつか変更された。その代表的な例が、テレビ局内について描いたこと。谷山と向井のラブコメディーだけに終始することなく、彼らを取り巻く人間同士の駆け引きを描いてみせることで “お家事情”がうかがえて興味深い。

 それぞれの階層ごとにセットを作り、特に第3階層は、「いかにも舞台用です」といわんばかりのセットを使っているところも、劇作家の鴻上さんならではで面白い。

 また、深田さんの“3役”もさることながら、これまでコメディーとは縁遠かった椎名さんが見せる、抑制の利いた演技が、さりげない笑いを誘う。軽過ぎず、緩過ぎず。ラブコメディーというより、肩の力を抜いて見られるヒューマンドラマだ。25日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)、シネセゾン渋谷(東京都渋谷区)、新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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