06年のミス・ユニバース世界大会2位を獲得、モデルとして活躍している知花くららさんが、開発途上国の実情を伝え、市民参加型の国際協力活動を推進する「なんとかしなきゃ!プロジェクト」(JANIC=国際協力NGOセンター、JICA=国際協力機構、UNDP=国連開発計画主催)のメンバーとして8月にスリランカを訪れた。国連世界食糧計画(WFP)のオフィシャルサポーターとして同プロジェクトに参加する知花さんに、約26年間続いた内戦が昨年終結したばかりのスリランカの復興の様子を聞いた。(毎日新聞デジタル)
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インド洋に浮かぶ島国スリランカは、主に仏教を信仰するシンハラ人が74%、主にヒンズー教を信仰するタミル人が18%、ほかに、スリランカ・ムーア人など約2000万人が住む多民族国家。09年5月に、約26年間続いた民族問題を背景とする内戦が終結したが、内戦が繰り広げられたスリランカ北部の町では、その傷跡が深く残されている。知花さんはWFPとJICAが行う現地での活動を視察した。
知花さんは初めて訪れたスリランカの感想を「きれいな国だと思いました。戦争が終わったばかりということもあったし、もっと殺ばつとしているのかと思っていたのですが、そんなこともなくて人も温かいし、穏やかな感じのする国でした。ただ、南部から北上するにつれ、戦争がひどかった北部は倒壊している建物がまだまだ残っていました。検問所などのチェックポイントもあり、地雷が除去できていない地域もあるという話でした」と語る。
WFPの活動現場として学校給食の現場を視察。知花さんが訪れた学校では、約310人の生徒がWFPから配給される給食を食べながら学んでおり、学校給食が栄養不足の子供たちの命を支えるばかりか、学校へ通うための動機付けになるという。知花さんも子供たちと一緒に給食のカレーを食べた。「あんなにおいしい給食は初めてで、食文化が豊かなんだと思いました。ダールという豆のカレーがとてもおいしかったです」と感想を話した。
また、難民キャンプから人々が再定住している村を訪れた際は、飲み水も電気も通っておらず、木にビニールシートなどを覆っただけの簡素な家で生活している姿を目の当たりにし、実際に住民から話を聞いた。「避難民キャンプから出られたのはよいものの、いろいろな事情で元の自分たちの土地にまだ帰れないという人たちが住んでいる場所です。食料がまず足りていない。日常生活を営むのさえも難があるという状況で、『砂糖をくれ、もっと食料をくれ、土地に返してくれ』という生の声を聞きました」と長期間の内戦で生活を奪われた人々の苦しみを語った。
内戦で荒廃した村を住民自らの手で復興しようとするJICAの支援活動も視察した。「活動員の方が、内戦が終わって地元の人たちが元の土地に戻ってきた時点で、何が実際に必要なのか、人々の声をそのまま拾って、上に上げていくという活動が興味深かったです。援助って実際にそこで必要とされているものでないと、長く続かなかったり、うまく根付かなかったりすると思うんです。ここで村の人々が欲しいものを、何とかしてみんなで作り上げていくという形はすごく効果的だなと思いました」と振り返った。
普段はモデルやタレントして華やかな舞台で活躍す知花さんが、国際協力に興味を持ったのは「大学で国際教育の授業を取ったこと」がきっかけという。「ただそのころは現地を見たこともないし、それほど海外に出たこともなかったので、リポートを書いていても壁にぶちあたったようなジレンマがありました」と明かし、「その後お仕事を通じて、テレビ番組で実際にODA(政府開発援助)の援助の現場を見ることになりました。世界各国に行って、そこから学ぶことが多かったです。学生の時に分からなかったことが、実際目にして分かりました」と話した。
「これから先も現地の活動を見つつ、私がそこで見たことや感じたことを、いろんな媒体で皆さんに伝えていけたらと思います。まだ決定ではありませんが、来年ハイチに行きたいんです」と話す。理由は、「スリランカでお会いしたユニセフ(国連児童基金)の井本直歩子さんが今度ハイチに赴任されることになり、がんばっている姿を見にいきたい」と、スリランカでの新たな出会いをうれしそうに明かした。井本さんは元五輪の水泳選手で、現役引退後、英国の大学院で紛争・平和構築に関する修士号を取得。昨年からスリランカでユニセフの活動を行っている。
知花さんは、特設サイト「なんとかしなきゃ.jp」(http://nantokashinakya.jp/)で、スリランカで撮影した動画を公開している。「スリランカって私たちにとってすごく遠い国だと思うし、内戦があったということもうっすら覚えているくらいで、危ない国なんじゃないかという印象をたくさんの方が持っていると思うんですけれど、実際はすごくすてきな国。でも戦争の傷あとも癒えずにいることもあり、私が見たところでは、『これから』なんだなと思いました。終戦から1年ちょっとたったとはいえ、彼らが以前の生活を取り戻すにはもう少し時間がかかるんだろうなという印象です。国の状況を少しでも、何となくでも分かっていただけたら」とアピールした。
同サイトでは、多くの著名人が、国際協力をテーマに「なんとかしなきゃ!」の思いを発信。身近にあるNGO(非政府組織)の活動や、インターネットチャリティーなど、一般市民が簡単にできる国際協力についても紹介している。知花さんは「いままで国際協力って、言葉は知っているけど何をやってるのか分からない、どこから参加できるか分からないっていうイメージがあったと思う。私たちがいろんな情報を発信して、みなさんが自分にもこんなことができるかもって思ってもらえるきっかけになれば」と呼びかける。同プロジェクトでは、著名人が海外での国際協力活動を訪問するリポートや、サポートソングの制作、コンサートなどで情報を発信していく予定。