前回のコラムで「今のゲーム業界は、若手が台頭できない環境にあるのではないだろうか」と言ったことについて、もう少しを触れたいと思います。
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大物クリエーターが会社組織を離れるタイミングや理由は、「経営・管理に回って創作活動ができない」「開発企画力が乏しくなった」「他社からのスカウト」「会社側から持てあまされて外で勝負せざるを得ない環境になった」などの事情があります。移籍したクリエーターは話題性もあり、新作を世に問い、ヒットを飛ばせば莫大(ばくだい)な収益が手に入るチャンスでもあります。ですが会社にいた時よりも輝くケースはまれです。
カプコンは数年前にも、まとめて大物クリエーターが退社することがありました。ヒットゲームを生み出す大物クリエーターは“知的財産”に等しく、当然ながら株主から経営陣への突き上げはすさまじいもので、会社の行く末が不安視されたこともありました。しかしその後、カプコンはV字回復を果たしました。なぜこういうことが起きたかといえば、大物クリエーターがいなくなったことで、新しい才能が芽生えた……ということです。経済学における「補完財」のようなもので、どちらかが上がれば反比例して下がるという現象に近い……といえば分かるかもしれません。
ですが、これらはプレーヤー(消費者)にとってはどうでもいいこと。「面白いゲームさえリリースされれば、それで良し」とされるのがゲームソフトというコンテンツの特色です。しかし、ゲームソフトの価値判断が難しいのは、書籍や映画と違い、ソフトを完成させて遊んでみないと分からないことにあります。
さかのぼれば90年代の「プレイステーション」も多くのソフトが生まれ、新しい切り口のソフトは生まれたものの、駄作も多く出たため、ライトユーザーから拒否反応や失望感を与えてしまったこともありました。つまりコンテンツに対して疑問を持たせたのは明らかなマイナス要因です。もちろん、突然変異的に生まれたコンテンツもあります。また、一度は「脳トレ」などで多くのライトユーザーを捕まえて巨大化したニンテンドーDSも、獲得した多くのファンに多様なソフトを提示できないまま、市場は縮小しているのは周知に通りです。もちろん一概には言い切れない、さまざまな要因が複雑に絡み合ってはいるのですが……。
市場縮小の要因の一つには、クリエーター側の姿勢にもあるでしょう。あえて言うなら、ベテランクリエーターによる、不要な作家性の“押し売り”です。「新人だったころの気持ちを忘れるな」とまでは言いませんが、「まずはプレーヤーに楽しく遊んでほしい」という純粋な気持ちは重要です。本来プレーヤーは「有意義な無駄な時間の過ごし方、遊びを提供してくれるコンテンツ」を求めているだけなのですから。
そう考えるとクリエーターが入れ替わることで新しいものが生まれる……というのは現状のアンチテーゼであり、皮肉な現象だと思うのです。
著者プロフィル
くろかわ・ふみお=60年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。
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