注目映画紹介:「洋菓子店コアンドル」 甘く、温かく、ちょっぴりほろ苦い人間再生の物語

「洋菓子店コアンドル」のイメージカット (C)2010「洋菓子店コアンドル」製作委員会
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「洋菓子店コアンドル」のイメージカット (C)2010「洋菓子店コアンドル」製作委員会

 「60歳のラブレター」(09年)や「半分の月がのぼる空」(10年)、さらに公開中の「白夜行」でメガホンをとった深川栄洋監督の新作「洋菓子店コアンドル」が11日に全国で公開された。蒼井優さんが見習いパティシエ、江口洋介さんが伝説のパティシエにふんしている。

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 鹿児島育ちの臼場なつめ(蒼井さん)が、上京してケーキ職人の見習いになる。その彼女のひたむきさと、周囲に疎んじられようとめげない強さが、やがて、過去のある出来事から菓子作りをやめた伝説のパティシエ十村遼太郎(江口さん)の生き方に影響を及ぼしていく……というヒューマンストーリーだ。

 江口さんと蒼井さんのダブル主演と、心が落ち着く柔らかな色彩の映像、さらにスイーツをネタにした物語ということで、タイトルからして少女マンガのようなニュアンスを与え、メルヘンチックな物語を想像しがちだが、実はもう少し深刻なテーマをはらんでいる。もちろん、なつめと十村、そして2人を取り巻く人々の成長が主軸だが、同時に、なつめ世代の若者、十村世代の中年、さらに加賀まりこさん演じる店の常連客という年配世代と、3世代にわたるドラマがバランスよくまとめられているのだ。

 最近の映画にはめずらしい、正真正銘のオリジナルストーリー。いながききよたかさんと前田こうこさんによる台本に、深川監督が筆を加え、彼なりの物語を作り上げた。人間がスイーツによって癒やされ、再生していく話だ。甘く、温かく、ちょっぴりほろ苦い。なかなかコクのある作品だ。11日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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