栗山千明:歌、女優、モデルの三つともバランスよく「直前にカチッとスイッチが入る」

「どの仕事でも『オン』するスイッチがある」と話す栗山千明さん
1 / 1
「どの仕事でも『オン』するスイッチがある」と話す栗山千明さん

 昨年2月に念願の歌手デビューを果たした栗山千明さん。ロック好きが高じて、初のアルバムをコラボ企画でやろうという話が持ち上がったときに、「せっかくだから私が普段聴いているアーティストだったり、以前から聴いていた好きな方にお願いしたいと思い、名前を挙げさせていただきました」という“無理め”なラインアップを提出したところ、日本を代表するギタリストの布袋寅泰さん、元ブランキー・ジェット・シティの浅井健一さん、シンガー・ソングライターの椎名林檎さんなどトップクラスのアーティストがプロデュースした色とりどりの“ロック”なアルバムが出来上がった。レコーディング秘話を含めて栗山さんの仕事に対する取り組み方について聞いた。(細田尚子/毎日新聞デジタル)

あなたにオススメ

 今回のコラボ企画は、「正直無理だろう、と思いながら言うのは自由なので一応挙げてみたんですよ。皆さんやっていただけると思っていなかったので、えっ、いいの?って感じです」とうれしい半面、プレッシャーも感じた。昨年11月にリリースした布袋さんプロデュースの「可能性ガール」は、「私が歌うことを想定して書いてくださっているのに、すごく可愛い曲だったので意外でした」と振り返る。

 布袋さんからは曲作りの前に「何かワードをください」と言われ、いくつかフレーズを書いてわたした。そこから想像もつかなかったアップテンポの可愛らしい曲が出来上がってきた。レコーディングでは「布袋さんはすごく気持ちを上げてくれながら、『いいね、いいね、もう1回』と、ちょっと最初緊張しているところから始まったんですけど、本当に楽しい気分で乗せてくれました」という。

 浅井さんが作った1月発売の2つめのコラボシングル「コールドフィンガーガール」は色気のある曲だ。「デモは浅井さんの弾き語りで歌詞もほとんどできた状態のものを聴かせていただいたんですけど、これを私はどう歌おうかと。ブランキーのときも感じていた浅井さんの個性というか、色気というものをすごく感じたので、私にそれはあるのか、と(笑い)。私だったらどう表現すればいいんだろうということで、難しいなと思っていました」と明かす。

 レコーディングでは「浅井さんはずっと『1回目が一番良かった』と言われました。1回目を超えるようにという緊張感を私に与えつつも、少人数の方がやりやすいんじゃないかと提案してくださって、エンジニアさんと浅井さんと私だけでレコーディングをして、初めてだったんですけど、世界に入りやすくてカッコつけやすいというか、そういう意味ではやっぱり少人数がよかったかなと思っています」と自身の新たな面も発見したようだ。

 コラボ3枚目のシングル「おいしい季節/決定的三分間」をプロデュースしたのは椎名さんだ。曲を聴いて大喜びしたという。「私、東京事変の『能動的三分間』が大好きなんです。私に書いてくれた曲が『決定的三分間』と聞いてちょっと(気分が)上がりました」と笑顔で話す。レコーディングでは「林檎さんはすごく分かりやすく指示を出してくれるというか、すごく感覚的に言ってくださるんです。映画とかドラマの監督さんのような感じというか、具体的なことと、すごく感情的なこと、雰囲気を伝えてくれるんです」と歌は簡単ではなかったが、楽しくレコーディングできた。

 16日に発売したアルバム「CIRCUS」には3人のほかに海外アーティストもプロデュースに参加。計10アーティストがプロデュースした全11曲を収録する豪華な作品となった。「緊張がとぎれないという意味ではすごく大変だったんです。初めましてと言ってレコーディングしてというのを10組の方にお願いしているので、慣れないというか、人に対して緊張するので結構大変ではあったんですけど、やっぱり自分だけではなかなか気づけない歌い方だったり、レコーディングの仕方だったりを経験させていただきました」と歌手としての大きな一歩を踏み出すことができた。

 歌手はもちろん、女優、モデルとしても第一線の活躍をしている栗山さんだが、その切り替えについては「全く違うようで違くもなかったりするので、すごく不思議な感じがするんですけど。お芝居は(役の)この人だったらこうかな、こういう雰囲気だからこんな感じかなって、自分の好き嫌いの基準じゃなくて、その役で考えるんですけど、歌の場合は表現するという意味ではお芝居と近いのかもしれないですけど、自分がこれカッコいいと思ったとか、これが好きというものを表現する場所なのかなと思って。モデルは、すてきだったらいい。こうじゃなきゃいけないというのがあまりなかったりするので、アーティスト写真とかジャケット写真とかって自分がメーンで、自分がカッコよければいいというか、そういう風に特になれるのがモデルなのかなと」と表現の方法としては根本は一緒だと考えている。

 三つに共通するのは「スイッチが入る感じは近いのかなと。モデル業もやるぞと思わないとできないし、芝居もせりふが出てこなかったりするし、歌もカッコつけてなんぼじゃないですか。普段の自分だったらそういうのが絶対に恥ずかしいので、何カッコつけてんの?ってなってしまう(笑い)。そこは振り切ってというかスイッチをオンにしないと変に恥ずかしくなっちゃうので、どの仕事でも『オン』するスイッチがあるなと」という。スイッチが入る瞬間は「お芝居だったらカチンコが鳴ったときだし、モデルだったらカメラマンさんがカメラ構えたとき、歌だったらイントロが始まったときという、すごくぎりぎりな感じなんです」と笑う。

 この三つの仕事は「歌はまだデビューして1年ですけど、まだまだ始めたばかりなので、そちらの基盤作りに集中はしていますが、将来的にはアーティストとしての基盤ができたら歌と女優とモデルとバランスよくできたらいいなと。お芝居をやっていて、たまに雑誌とかモデル業が入ったらちょっとした息抜きができたりするので、(切り替えが)心のバランス的にすごくいいなと自分で思っていたんですね。それがもう一個増えた感じです」と三つのことを今後もバランスよく続けていきたいという。

 次回は「基本的には緊張しいで恥ずかしがり屋なんです」と話す栗山さんの人となりや生き方について聞く。

 <プロフィル>

 1984年10月10日生まれ、A型。「ニコラ」などのティーン誌のモデルとして活躍。99年に、「第1回ミス東京ウォーカー」を受賞し映画「死国」で女優デビューを果たす。00年に出演した映画「バトル・ロワイアル」での演技がクエンティン・タランティーノ監督のの目にとまり、03年に「キル・ビル Vol.1」に出演。同作のユマ・サーマンさんとの戦闘シーンがMTVの「ムービーアワード2004」で「ベストファイト賞」を受賞した。04年、「下弦の月~ラスト・クォーター」で映画初主演。05年、モデルとして資生堂「マキアージュ」の広告に起用される。07年、映画「エクステ」に主演。連続ドラマ「ハゲタカ」(NHK総合)に出演。10年にOVA「機動戦士ガンダムUC episode1」の主題歌となった「流星のナミダ」で歌手デビューを果たす。同年11月に布袋寅泰さんがプロデュースした2枚目のシングル「可能性ガール」(アニメ「よりぬき銀魂さん」オープニング主題歌)を発売。今年に入って1月に元BLANKEY JET CITYの浅井健一さんがプロデュースした3枚目の「コールドフィンガーガール」(アニメ「レベルE」オープニング主題歌)、今月2日に椎名林檎さんがプロデュースした4枚目の「おいしい季節/決定的三分間」をリリース。16日に待望の初アルバム「CIRCUS」を発売。

芸能 最新記事