注目映画紹介:「わたしを離さないで」 カズオ・イシグロの小説を映画化 残酷さが直接伝わる

「わたしを離さないで」の一場面 (C)2010 Twentieth Century Fox
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「わたしを離さないで」の一場面 (C)2010 Twentieth Century Fox

 英国最高の文学賞「ブッカー賞」の受賞作家で、映画「日の名残り」などの原作者として知られるカズオ・イシグロさんの小説の映画化「わたしを離さないで」(マーク・ロマネク監督)が全国で公開中だ。イシグロさん自身が製作総指揮を務めた。ある宿命を背負った若者3人が、愛に癒やされ傷つきながら、人生を懸命に生きようとする姿を描く。「17歳の肖像」(09年)で米アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたキャリー・マリガンさんが主人公のキャシーを演じ、その相手役トミーには「ソーシャル・ネットワーク」(10年)で注目されたアンドリュー・ガーフィールドさん。さらに、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのキーラ・ナイトレイさんがキャシーの親友ルースを演じる。

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 原作では、真相は少しずつ少しずつ明かされていくが、アレックス・ガーランドさん(「28日後…」など)による脚本は、最初の数分で多くのことを明かしている。小説が持つ静ひつさや親密さがこそげ落とされ、SFやミステリー映画のような表現の仕方をしている。小説を先に読んだため、その展開に違和感をおぼえたが、一方で、本を読みながら頭の中に巡らせた“映像”が、そのままスクリーンに広がっていることに感動する。また、映像になったことで、小説にひそむ残酷さが一層ストレートに伝わってくる。

 イシグロ作品のファンは、この映画の世界観をどう受け止めるだろう。ちなみにイシグロさんご本人は、「私の書いた原作より、映画は一層素晴らしいものになった」と称賛している。TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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