マンガ質問状:「ゴーガイ!」 岩手を舞台に女性新聞記者が活躍 震災後の物語も描く

「ゴーガイ! 岩手チャグチャグ新聞社」(講談社)の表紙
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「ゴーガイ! 岩手チャグチャグ新聞社」(講談社)の表紙

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、岩手県を舞台に架空の地方新聞支局に勤務する女性新聞記者の活躍を描いた飛鳥あるとさんのマンガ「ゴーガイ! 岩手チャグチャグ新聞社」です。「BE・LOVE」(講談社)編集部の岩間秀和さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 抜群の動体視力が武器、岩手県南の地方紙記者・坂東さきるが、岩手の知る人ぞ知るトピックを突撃取材。“脳内ナビゲート”が武器の支局長、遠野の民話に“ハマる”ドイツ人バックパッカーという変人(?)仲間とともに、岩手の魅力を伝えていく物語です。地元在住の飛鳥あると先生ならではの岩手のリアル。岩手日報社監修だからこその地方紙のリアル。読んでいるうちに、いつの間にか心は岩手に……。そんなバーチャル旅行を楽しめるマンガです。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 東京都内に半年しか住んだことのない(なじめなかった)私としては、「時代は地方だ!」という“アンチ東京”な思い込みがありました。「BE・LOVE」は地方の読者さんに支えられている雑誌ということもあり、岩手在住の飛鳥あるとさんに「岩手で勝負しましょう!」と話を持ちかけたのです。企画会議には「岩手を舞台に、念写が武器の新聞記者が主人公」で出したのですが、見事にボツ。岩手と記者を残し、飛鳥さんがうまく今の形にしてくれました。念写はダメですかね、やっぱり。

 −−登場する新聞記事が本格的ですが、実際の新聞記者が書いているのでしょうか?

 どうせなら「読者の方に読んでもらえる本格派の記事を!」ということで、私が現役の記者さんの指導を受けながら書いてます。第1稿を私が書く→記者さんの添削→完成という流れ。しかし、次第に添削が多岐にわたって、最近はほぼ記者さんのオリジナルに、という体たらく……。新聞記事って難しいんですよ。ちなみに、ほとんど気づかれませんが、単行本カバーの背景は新聞記事仕様になっていて、あれもすべて私が書いてます。身内以外ほぼスルーですが、もの好きな方、読んでみてください。

 −−編集者として作品を担当するうえでうれしいこと、逆に大変だったエピソードを教えてください。

 多くの岩手の方に支えられてマンガが出来上がっていく過程を、目の当たりにできたのがうれしかったです。漁師さん、遠野の語り部のおばあさん……。究極は岩手県知事(笑い)。大変だったのは1話目。時代に即したテーマでいこうと「限界集落」を描いたのですが、硬すぎてあえなくボツ。締め切りが迫る中、思い出したのが9年前のわんこそば対決(飛鳥先生VS私で、やせの大食い、飛鳥先生の圧勝)。「岩手といえばこれでしょ!」と当時を思い出しながら描き直してもらい「わんこ冷麺大会」のエピソードに。冷や汗をかきました。

 −−今後の展開、読者へ一言お願いします。

 ひとまず、13日発売のコミックス「3号目」で、「ゴーガイ!」はひと区切りとなります。あとは、みなさんの反響次第でしょうか(笑い)。ただ、まだ公表できない動きが、なきにしもあらずで……。もしかしたら、また会えるかもしれないので、そのときにはよろしくお願いします。

 単行本3冊のうち大半は震災前の物語ですが、2号目と3号目には、東日本大震災後の岩手を描いた話が載っています。地元の惨状に言葉を失うも、飛鳥先生が葛藤と闘いながらこん身の力で描いた物語を、読んでいただけたらうれしいです。

 講談社 BE・LOVE編集部 岩間秀和

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