注目映画紹介:「孔子の教え」 チョウ・ユンファが孔子の温かく深い人柄を演じ切った

「孔子の教え」の一場面 (C)2009 DADI CENTURY(BEIJING)LIMITED ALL RIGHTS RESERVED
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「孔子の教え」の一場面 (C)2009 DADI CENTURY(BEIJING)LIMITED ALL RIGHTS RESERVED

 「己の欲せざるところ、人に施すなかれ」など「論語」があれほど有名なのに、それを説いた孔子はどんな人だったろうか、という素朴な疑問に答えてくれるのがこの映画「孔子の教え」(フー・メイ監督)だ。孔子役は香港が生んだ映画スター、チョウ・ユンファさん。孔子の温かくて深い人間像を演じ切り、リーダーとしてのあり方も示唆する。映像化に当たっては「レッドクリフ」(08~09年)や「グリーン・デスティニー」(00年)のスタッフが担当した。孔子は文化大革命時代は批判の対象だったというが、時代が変わり、中国で初めて孔子を題材にした大作として製作された。

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 紀元前6世紀の春秋時代の中国。周王朝が没落し、諸侯国が争っていた。孔子(チョウさん)は魯の没落貴族に生まれ育った。小国である魯は国政が混乱。君主の期待通り孔子は頭角を現し、魯は強国となっていく。隣国の斉とのもめごとも、非凡な才と知恵で収め、紀元前498年、孔子は国相代理に上り詰める。因習を撤廃し、国造りに励む孔子だったが、政治的陰謀に巻き込まれて国を追われてしまう。放浪の旅に出た孔子を、弟子たちが追いかけ、孔子と弟子たちの過酷な旅が続く……。

 製作は「レッドクリフ」をはじめ数多くのヒット作を生み出しているハン・サンピンさん。音楽は、チャン・イーモウ監督やチェン・カイコー監督の作品を手がけるチャオ・チーピンさん。そしてチャン監督やチェン監督らとともに中国ニューウエーブ世代と呼ばれる女性のフー・メイ監督が手がけた。スターが集まり過ぎて「あらら」と思うような大作もあるが、優秀なスタッフが集まると、さすがの完成度だ。国同士が覇権争いしている歴史の中で、孔子だけがただ民の方に向いている。今の日本の政治家に「この映画を見て」と言いたくなる。主人公を演じるチョウさんは存在感たっぷり。道を閉ざされた後の芝居は特に味わい深い。人間味のあふれる描き方で弟子との絆にジーンとさせられた。12日からシネスイッチ銀座ほか全国で順次公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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