朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第79回 ヘミングウェー「老人と海」

「老人と海」作・ヘミングウェイ(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「老人と海」作・ヘミングウェイ(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第79回はアーネスト・ヘミングウェーの「老人と海」だ。

ウナギノボリ

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 全国的に梅雨明けを迎えたこの時期、二十四節気の一つ「大暑」を迎え、本格的な夏日はまさにこれからといった感じですね。

 特に節電が叫ばれていることもあって、海やプールはますます混みあいそうです。

 避暑地へ行く方は、出発準備に余念がないのでは?

 ちなみに私は、暑い日は街中の避暑地「図書館」に出かけるようにしています。

 読んだことのない本を探して、ゆっくり館内を巡るのも楽しいですけれど、今回は探すよりもすぐに読みたい方のために、この時期お誕生日を迎える作家さんの作品をいくつかご紹介してみたいと思います。

 世界的なベストセラーを読みたいという方には、アーネスト・ヘミングウェーさん(7月21日生)の「老人と海」はいかがでしょう?

 ハードボイルドな世界に浸りたい方は、レイモンド・チャンドラーさん(7月23日生)による「さらば愛しき女よ」などはどうですか?

 児童文学をお探しでしたら、アルフ・プリョイセンさん(7月23日生)の「スプーンおばさん」がおススメですよ。

 2代にわたって名作を送り出した、アレクサンドル・デュマ親子の作品も見逃せません。

 大デュマさん(7月24日生)は「三銃士」で、小デュマさん(7月27日生)は「椿姫」で、それぞれ有名ですね。

 ほかにも、ジーン・ウェブスターさん(7月24日生)の「あしながおじさん」、日本の文学を読みたい方に谷崎潤一郎さん(7月24日生)の「痴人の愛」「細雪」、ビアトリクス・ポターさん(7月28日生)の「ピーターラビットのおはなし」シリーズなど、名作・傑作が目白押しです。

 なお、もっと「涼しくなる」本はないかという方には……。

 以前ご紹介した田中貢太郎さんの「四谷怪談」などいいかもしれません。

 だって7月26日は、「幽霊の日」ですから……(>_<)

 ではここで、朗読倶楽部のお話……最後の大会前のお話、第7回です。

 大会で知り合った、小口のどかさんが所属する文芸部に交流戦を申し込んだ朗読倶楽部。

 小口さんの承諾を得た私たちは翌週の週末、彼女が通う鎌倉の学校を訪れたのです。

 この時、朗読倶楽部の運命が決まる最後の大会まで、あと2週間に迫っていました……。

 校門をくぐり、初めて訪れる他校に興味津々の私たち。

 普通だったら間違いなく緊張しているはずの私も、まるでおのぼりさんのようにキョロキョロしてしまって、先生にたしなめられてしまいました(>_<)

 あらかじめ教えてもらっていた事務受付で私たちの学校名を告げると、ほどなくして小口さんがやってきました。

 大会で会ったときと同じ、口数と表情の動きが少ない彼女を前にすると、無理なお願いで週末をつぶしてしまったようで申し訳ない気持ちになってしまいます。

 ともあれ、他校の朗読活動を見るのは初めての経験です。

 小口さんの案内で文芸部の部室へ向かう私たちの心中は、不安よりも期待で占められていたのでした……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 アーネスト・ヘミングウェー「老人と海」

 こんにちは、今回ご紹介する一冊は、アメリカの作家、アーネスト・ヘミングウェーさんの「老人と海」です。

 たとえ読んだことがなくても、本と作者の名前は知っている、というほどの著名な作品はそう多くはありませんが、この「ヘミングウェー」さんの「老人と海」は、間違いなくその中の一つだと言えるでしょう。

 映画にもなった「誰がために鐘は鳴る」などでその名を知られていたヘミングウェーさんが、晩年の1951年に執筆、翌1952年に出版されたこのお話は、1954年のノーベル文学賞受賞に大きく貢献したと言われています。

 メキシコ湾流を漁場にする老漁師のサンチャゴさんは、彼を慕う少年マノーリンさんに漁を教えながら、長年の経験を生かした一本釣りで魚を取って暮らしていました。

 ところが、ある日を境に彼の小さな帆かけ舟には全く魚が掛からなくなってしまいます。

 何日か釣れない日があるのは漁師として別に珍しいことではないのですが、さすがにそれが40日も続いてしまうと話は別。

 老人の助手として船に乗っていた少年は、両親から別の船で仕事をするように言い渡されてしまいました。

 少年は親の言いつけに逆らえず別の船に乗るようになっても、陸に上がったときは老人を助け、励まし続けましたが、彼の献身に反してその後も何も釣れない日は続いたのです。

 そして、不漁の記録が実に84日に達し、85日目を向かえた夜明け前。

 老人はコーヒー1杯の朝食を取って少年と別れ、いつもより早い時間に沖に向かって船をこぎ出しました。

 うんと遠出をするために、今日こそは大物を釣るために……。

 このお話は、ヘミングウェーさんがキューバの漁師から聞いた実話を元に執筆したと言われています。

 緻密に描かれる漁師の生活、獲物との根気比べ、思わぬ伏兵との戦いという娯楽要素の半面、淡々と描かれる点や、自然の厳しさを見せつけられる結末など、読者の評価は分かれるところがあるようです。

 でも、このお話でサンチャゴさんが体験する「成功と失敗」は、すべての人が一度は経験したことがあるだろう、大きな共感を呼ぶポイントなのではないでしょうか。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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