吉本百年物語:芸人支える裏方にスポット 松澤一之&長原成樹が語る魅力

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 大阪・なんばグランド花月で今月30日まで上演中の舞台「吉本百年物語 焼け跡、青春手帖」は、戦後、劇場を失った吉本興業が立ち直るまでの苦労を描いている。作家の長沖一を演じる松澤一之さんと吉本の若手社員で、後に社長を務める八田竹男を演じる長原成樹さんに聞いた。(毎日新聞デジタル)

ウナギノボリ

 −−松澤さんは大阪で吉本の舞台は初めてですか?

 松澤さん 初めてです。ザ・ぼんちのおさむ師匠が盛り上げてくださるので、みんなが楽しく演技をしています。

 −−松澤さんが演じる長沖一は、花菱アチャコと浪花千栄子のラジオドラマ「アチャコ青春手帖」「お父さんはお人好し」などを手がけ、後に吉本の文芸部長を務めますね。浪花さんというとオロナイン軟膏(なんこう)のCMが有名です。

 松澤さん 僕らもオロナイン軟膏の看板がすぐ頭に浮かびますよね。長沖さんはほとんどの方がご存じでないと思います。すてきな方だったようなんです。東大を出て、インテリで、でもさらけ出すこともなく、気さくで、おしゃれで、ダンディーで、物腰の柔らかい方だったようなんです。どうしても(長沖さんから指導を受けた)演出の湊裕美子さんはそうさせたいようで、「松澤さん、そんなにガハハハと笑わない」とか、「そんなに足は開かない」とか(笑い)。僕の役は作家ですが、作家の作業をしているとか、お客さんが見て、ああこの人作家なんだ、という場面がないんですよ。その中でどうしたら作家らしさを出せるのかというのは大変ですよね。

 −−今回は芸人を支える関係者にスポットを当てた作品です

 松澤さん 僕のセリフの中で「せっかくこの戦争をくぐってみんな生きてここにいてますのやから、きっと神さんに生かしてもらった命やと思うんです」と浪花千栄子さんに話すシーンがあるんですが、阪神大震災や東日本大震災のイメージがオーバーラップするんです。震災で亡くなった方々に対して、僕たちはその分まで生きなきゃいけないんだと、すごく感じるんです。「毎日こんなしょうもないことしてたらアカンで。何か一生懸命にがんばろう」と僕は感じるんですよね。

 −−長原さんは後に吉本興業の社長となる若き社員、八田竹男を演じます

 長原さん 今回、珍しく、吉本の歴代社長3人が出るんです。これから先にないでしょうねえ。これはすごいですよ。実は八田さんは全然知らないんです。八田さんのお名前は知ってますが、お会いしたことがないんです。おさむ兄さんが知っていて、「八田さんは割とスマートな方やで。成樹、八田さんやらなアカンで。成樹演じたらアカンで」と言われてます。

 −−今回の見どころはどこでしょうか

 長原さん 浪花千栄子さんに復帰をお願いするシーンでしょうか。邪魔になったらいけないし。松澤さんは大阪弁できないから大変ですよね。でも松澤さんは完璧にやっておられますよ。

 −−当時の吉本は芸人がアチャコさん1人ですね

 長原さん そうですよね。だって今回は花月のシーンがないですからねえ。でもこの作品はこれから先の芝居でターニングポイントになると思いますね。

 −−演じて何か感じられたことはありますか

 長原さん やっぱり、何もないところから立ち上げていくところがすごいですね。このころの吉本は働いた人には十分お金をあげてたんでしょうね。それは今でも吉本は、頑張った人には報酬をたくさんあげてるじゃないですか。吉本の上の方の芸人さんってあんまりお金のこと言わないでしょ。もらっているから(笑い)。よくできた会社ですよね、吉本は。

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 吉本百年物語9月公演「焼け跡、青春手帖」は、なんばグランド花月(大阪市中央区)で、30日まで。黒谷友香、兵動大樹、ぼんちおさむ、高川裕也、松澤一之、へびいちご、西川かの子ほかの出演。1階席6000円、2階席5000円。問い合わせは、チケットよしもと(0570・036・912)。

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