歌舞伎俳優の尾上菊之助さん(35)と歌舞伎俳優・中村吉右衛門さんの四女の波野瓔子(ようこ)さん(30)の結婚会見が14日、東京都内で行われ、菊之助さんの父で歌舞伎俳優の尾上菊五郎さんと吉右衛門さんも同席した。会見の主な一問一答は以下の通り。(毎日新聞デジタル)
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菊之助さん 皆様、本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。歌舞伎の偉大なる柱をこのごろ亡くしまして、日数の浅いこの時期ではございますが、4月に歌舞伎座の開場が迫っております。喪が明けてからの祝賀が通常の判断と思っていましたが、同じ環境で育った女性を伴侶に選び、この難局を乗り切っていくことこそ務めと思い、寺島家、波野家の結納を取り交わさせていただきました。未熟な2人ですが、温かく見守ってくだされば幸いでございます。
瓔子さん 本日は大勢の方にお集まりいただきありがとうございます。
−−結婚に至るまでの推移は?
菊之助さん 初めてお会いしたときに明るくて可愛らしい方だと思いました。小さい頃からよく知ってはいたんですが、2年前のコクーン歌舞伎で会食してそれから個人的に、友達として会うようになりました。そのときは結婚を考えるとは思ってなかったです。昨年12月に(中村)勘三郎さんが亡くなり、息子の2人(勘九郎さん、七之助さん)の必死な姿を見て自分も家庭を持たなくてはと思って、会食を得る機会を作り結婚の申し込みをしました。
−−瓔子さんとの結婚を決めた理由は?
菊之助さん 明るくて和む女性。2人でいて楽しいと感じています。
−−プロポーズの言葉は?
瓔子さん プロポーズは和康(菊之助)さんの自宅で、「家を守ってください」という言葉をいただきました。最初に食事をしたときは特に意識はしていなかったです。去年の11月に食事をして、自然に和康さんを支えられればいいなと思いました。和康さんは温かく優しい空気をまとっている方。羽毛布団に包まれているような温かい気分になれる方です。
−−エンゲージリング(婚約指輪)は? 「月給3カ月分」なのでしょうか?
菊之助さん 私は薄給なものですから……瓔子さんとこれから歩いていくので精いっぱいの気持ちを形にして買いました。
瓔子さん 私が勤めていた(宝飾店の)和光で買っていただきました。
−−結納を終えて。
菊之助さん 結納は特別な感じ。結納の言葉がかわされたときゾクッとしました。
−−(菊之助さんに)お相手を何と呼んでいますか?
下の名前で「瓔子さん」と呼んでいます。
−−デートはどこに?
菊之助さん 芝居や映画に足を運んでいます。
−−瓔子さんの手料理は?
菊之助さん 手料理はまだ食べたことはありません。これから楽しみにしています。
−−結婚の準備は?
瓔子さん 花嫁修業は1月から。料理を中心に練習しています。
−−本日の着物は?
瓔子さん おめでたい柄と春らしいものを選びました。帯は成人式の時に両親からもらったものです。
−−今後の意気込みを。
菊之助さん 新しい歌舞伎座が開くので、今まで見てくださったお客様にも、まだ歌舞伎を見たことのないお客様にも愛していただけるような歌舞伎にしていきたい。
−−姉の寺島しのぶさんへの報告は?
菊之助さん 電話で報告しました。まだ直接会っていないです。
−−お子さんの予定は?
菊之助さん 子どもは授かり物なので天に任せたい。
−−今後の予定は?
菊之助さん 2月26日に神田明神で挙式、9月に披露宴を予定しています。
−−どんな家庭を築きたい?
菊之助さん 最初は探っているところもあるだろうし、できないこともあると思う。できることを一つずつ乗り越えて喜び合えるような家庭にしたい。
−−菊之助さんは色男ですが心配は?
瓔子さん (照れながら)大丈夫だと思います。
−−ご両親への報告はどんなふうに?
菊之助さん 母に報告したら、母も和光に買い物に行ったりしたときに、瓔子さんにお世話になっていたので、喜んでくれました。父はびっくりしていました。
瓔子さん 母に伝え、父にどう伝えるか作戦を立てて伝えました。母はびっくり。父は「菊之助君は大好きな役者だからよかったね」と言ってくれました。
−−デートで見た映画は?
菊之助さん 最近は「レ・ミゼラブル」を見ました。
−−○○婚で言い表すと?
菊之助さん 「幸せな結婚」です。
−−中村吉右衛門さんが義父となることについては?
菊之助さん 先輩として仰ぎ見る存在。精進していきたいです。
(ここで、菊五郎さんと吉右衛門さんが登場)
菊五郎さん どうも、菊五郎です。この話をうかがって娘の(寺島)しのぶがフランス人のだんなをもらったとき以上にびっくりしました(一同笑い)。瓔子さんは可愛い聡明(そうめい)なお嫁さん。まさか播磨屋さんと縁戚関係になるなんて。
吉右衛門さん 一般常識からいうと花嫁の父親がこういうところに出て座っているのは恥ずかしいけれど、職業柄、役者ということで恥をさらしにきました(一同笑い)。
−−顔合わせは?
菊五郎さん 播磨屋に電話して先方と6人で会食しました。彼女の趣味、できることとできないことは何なのかとか、根掘り葉掘りいろいろ聞いた。
−−2人の結婚の報告を受けたときの気持ちは?
菊五郎さん 菊之助は女性と縁がなかったので趣味が違うのかなと思っていた。フランス人よりびっくりした! 全然知らなかった。自分のことで精いっぱいだったから。
吉右衛門さん ただただびっくりしました。暮れに菊之助さんがお願いがあるということを娘から聞いて何だろうとと思っていました。和康君から「娘をいただきたい」と聞いて。知らなかった。僕も家内もびっくり! 菊之助さんはいい役者になると思っていたので、真摯(しんし)な態度が僕としてはありがたいなと思いました。急だったもので「いいの? こんなんで?」という言葉しか出なかった。梨園(りえん)に嫁がせようとか思ってなかった。一般の家庭でもらってくれるかなあ……って思っていたから。歌舞伎のことも教えてなかったので。(菊之助さんは)1月にお相撲の役をやっていたせいか押しが強かった。
−−息子(菊之助)さんは「押しが強い」ということですが……。
菊五郎さん 私の時は「待った、待った」だったから(笑い)。
−−歌舞伎界を背負っていくことになる菊之助さんについて。
菊五郎さん 苦しいこと悲しいことつらいこといっぱいあると思うけれど、支え合って波を乗り越え絆を深めていってもらえれば。奥さんは裏に回ってゼネラルマネジャーとして。奥さんは大変だと思う。こっちは今まで通りのことをやっていけばいいと思うんだけれど。初めてのことだから。徐々に覚えていけばいいと思う。
−−(吉右衛門さんに)娘(瓔子)さんについては?
吉右衛門さん 普通の娘。勤めもしていたので、世の中のことは少しは分かっているのかな。寺島家は「菊五郎劇団」を背負っているので、足を引っ張らないように。
−−菊之助さんは瓔子さんの「明るいところ」が好きということですが。
吉右衛門さん 娘は明るい。僕が暗いから(笑い)。
−−花嫁修業を始めたということですが、娘さんの料理の腕は?
吉右衛門さん 娘の料理は……へへへへへへ(ごまかす)。
−−孫は楽しみ?
菊五郎さん プレッシャーかけちゃかわいそう。授かり物ですから。
吉右衛門さん プレッシャーをかけるのはご遠慮してほしい。
−−嫁いでくる瓔子さんに言ったことは?
菊五郎さん 何もいらない。パンツ一丁でくればいい。
−−菊之助さんの母の富司純子さんは何と言っていましたか?
菊五郎さん 家内は(瓔子さんを)気に入っていた。和光で助けてもらったりして。せがれは「播磨屋さんが怖い」って言ってた。
菊之助さん そんなこと言ってない! なんてことを。言ってないですよ! ちょっと飲み過ぎじゃないですか!
−−菊之助さんの印象は?
吉右衛門さん 菊之助さんは真面目な人。真面目さにいろいろなものがついて、お父様の不真面目なところがついていけば。
−−夫婦へのアドバイスを。
吉右衛門さん 信頼関係、長所をほめて。うまくいかなかったときは優しい励ましの言葉を掛けて。
菊五郎さん 奥さん怖いからなあ……でも怖いくらいの方がうまくいくのかも。
−−今後の歌舞伎界について。
菊五郎さん 寂しいことがあったから明るい話題で歌舞伎座を開けたい。せがれを突っついた。おめでたいことは早いほうがいいと。
吉右衛門さん 新しい劇場を維持していかなければ。我々もこの年だから次代が頑張って、我々は次世代にどう継がせていくかが大事だと思う。(瓔子さんには)内助の功を発揮してほしい。
−−瓔子さんからバレンタインデーのチョコはもらいましたか?
菊之助さん 会見の前にハンカチをもらいました。
吉右衛門さん 別れのアイテムだよね?
菊五郎さん おとっちゃんの涙をふこうと思ったんだよね。
−−孫に歌舞伎はやらせたい?
菊五郎さん 無理強いはできない。ご先祖さまの名前を借りているだけなので。やりたければ教えます。
吉右衛門さん 環境で舞台を好きになるかどうか決まるのでは。