歌手の美輪明宏さんが主演・演出を務める舞台「黒蜥蜴(とかげ)」が4日から「ル テアトル銀座 by PARCO」(東京都中央区)で上演されている。美輪さんが演じる女盗賊の愛人役は、約200人の中からオーディションで選ばれ、見事、その座を勝ち取り今作で俳優デビューした中島歩さんだ。88年10月生まれの24歳で、183センチの長身に端整な顔立ちをもつ中島さんに、美輪さんとの日々や、自身の素顔について聞いた。(毎日新聞デジタル)
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中島さんが演じるのは黒蜥蜴に“拾われ”て愛人になる美しい青年・雨宮潤一。中島さんはこれまで、モデルをしながら役者を志望していたが、本格的に演技をするのは今作が初めて。美輪さんを前にしたオーディションでは台本を読む「本読み」だけが行われ、受かった時は「人生で一番うれしかった」と振り返る。
合格後、美輪さんと初めて会ったのは同作の写真撮影。美輪さんから細かな指示を受けながら行う撮影は「それまで(のモデルの仕事)とはわけが違った。僕がいいと思うものが、はたして美輪さんがいいと思うものなのかと思うと、“何もできません状態”。汗をだらだらかきながら撮影しました」と緊張し通しだった。
その後、美輪さんが求める美の世界観を知るため、薦められた「天井桟敷(さじき)の人々」「第三の男」「オルフェ」など、数多くの映画作品を鑑賞。また「もっと体を大きくするように」という指示を受け、体重を増やそうと「食べて、筋トレして、走って、プロテイン飲んで、飯を食って」を繰り返した。ほかに作中に登場する実際の場所を訪れてみるようにと言われ、黒蜥蜴と雨宮が出会った場所とされる聖徳記念絵画館(東京都新宿区)など、現地でせりふのけいこをしたという。
オーディションで選ばれたとはいえ、美輪さんが中島さんの長所や魅力を面と向かって語ることは「一切ない」。「なにもほめられないです。『ちょっとよくなった』と言われるぐらい。手取り足取りで(美輪さんから)『本当に手がかかるわね』って言われて。ごめんなさいっていう気持ち」と明かし、「必死で食らいついています」という。
一方で、「オーディションで美輪さんに選んでいただいて、稽古(けいこ)で落ち込んで……という自分のストーリーこそが雨宮に反映できる。それこそが黒蜥蜴と雨宮の関係。(美輪さんが)そうしてくださっているんだと思います」と目を輝かせた。そして「美輪さんはやっぱり魅力的。演出の時もすごく丁寧で的確」と語り、「美輪さんに認められるための芝居」をすることも、自分と雨宮の共通点だと話した。
舞台では「純粋ゆえのみじめさがある雨宮を見てほしい。彼の人生が変わっていく瞬間を見ていただければと思う」と語り、「(芝居の)最後に彼が本当の自分の幸せに気づく瞬間は胸を打つものがある。自分で思い込んでいる(人生の)“呪い”みたいなものが解けていくところがすばらしいシーン」と力を込めた。
「小さい頃から目立ちたがり屋だった」という中島さん。普段のキャラクターを聞くと「冗談しか言っていないタイプ。おしゃべりです」という。高校では漫才をしていたほか、コピーバンドでギターとボーカルを担当。大学では軽音楽部と迷った末、落語研究会に4年間、所属した。
中島さんは「演じることのデビューは落研かもしれない」と振り返り、俳優を志すようになったきっかけを「自分の体と声とを使って表現することがフィットした。平凡な人生だったので物語に身を投じることで大きく心が動いたりすることが魅力だった」。古今亭志ん朝が好きで、落研では「火焔太鼓(かえんだいこ)」、「崇徳院(すとくいん)」、「宿屋の富」などを披露していたという。
舞台「黒蜥蜴」は江戸川乱歩原作、三島由紀夫脚本。1934年に小説が発表され、1961年に三島が脚本を発表。翌年に美輪(当時は丸山明宏)さん主演で初演された。美輪さん演じる美貌の女盗賊・黒蜥蜴と探偵・明智小五郎の対決が、ドラマチックかつスリリングに描かれている。美輪さんは同作の美術や衣装も手がけた。5月6日まで「ル テアトル銀座」で上演された後、大阪、名古屋、仙台など全国7カ所で上演予定。
なかじま・あゆむ。88年10月7日生まれ。宮城県出身。O型。趣味・特技は落語、釣り、写真、ギター。空手初段、書道準二段の資格と、国語(中学・高校)の教員免許を持っている。
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