1940~60年代に米国の近代主義から生まれたインテリアデザインの潮流「ミッドセンチュリーモダン」の旗手で、シンプルで美しい椅子で有名なイームズ夫妻を追いかけたドキュメンタリー映画「ふたりのイームズ 建築家チャールズと画家レイ」が11日に公開された。当時の米国の社会背景とともに、夫婦二人三脚の歩みを刻んでいる。
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建築家チャールズと画家レイ。2人は恋におち、「イームズ・オフィス」を創設した。戦後、豊かになっていく時代と重なって椅子が大ヒット。チャールズのほか、多くのデザイナーが関わり、レイが色彩を担当。しかし当時は妻は夫の陰に隠れている時代。脚光を浴びるのはいつもチャールズの方だった。2人はおもちゃや建築、映像も手掛け、まだ一般社会にコンピューターが浸透していなかった時代に、映像でIBMと一般大衆を結びつけるなど、企業とも組んでビジュアルコミュニケーターとしてさまざまな分野で活躍をしていく……という展開。
短い尺の映画だがイームズを知らない人でもたっぷり楽しめる充実した内容だ。当時の夫妻の映像、スタッフ、家族のインタビューだけでなく、イームズ夫妻が作った映像作品も挿入。米ソ冷戦時代に行われた博覧会での映像、理系嫌いの子どもたちのための映像、おもちゃを使った遊び心たっぷりな映像……と夫妻を物語るのに大いに役立っている。さまざまな業績の根幹にあるのは、2人のおもてなしの心だったようだ。プライベートにも切り込み、チャールズの不倫相手も登場する立ち入りぶりだ。チャールズが亡くなった1年後の同じ日にレイが亡くなったという。「一心同体だった証し」と元スタッフは語る。夫妻の人間的な素顔も垣間見られるが、きっちり時代と結びつけて編集されていて、デザイナーの社会的な意義についても思いが至る仕上がりだ。11日から渋谷アップリンク(東京都渋谷区)、シネマート六本木(東京都港区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに単館映画館通いの20代を思い出し、趣味の映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心に活動するライター業のほか、ときどき保育士と二足のわらじでとぼとぼ歩き中。
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