はじめの1巻:「重版出来!」 新米マンガ編集者が奮闘 書店員らとのチーム戦を描く

松田奈緒子さんのマンガ「重版出来!」(小学館)1巻の表紙
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松田奈緒子さんのマンガ「重版出来!」(小学館)1巻の表紙

 1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、月刊!スピリッツ(小学館 )で連載、柔道部出身の新米マンガ編集者が書店員らと奮闘する姿を描いた松田奈緒子さんのマンガ「重版出来(じゅうはんしゅったい)!」です。

ウナギノボリ

 出版社「興都館」の最終面接に臨む日体々大学女子柔道部所属の女子学生・黒澤心(こころ)。2次面接で腕立て伏せをするなど異色の存在で、社内でうわさの人物になっていた。心が「面接は柔道と同じだ」という気持ちで、出版への熱い思いを語っていると、武器を持った男が乱入。心はとっさにその人物を投げ飛ばすが……。

 ◇編集部からのメッセージ 週刊ビッグコミックスピリッツ編集部 山内菜緒子さん 「13年に描く出版業界とは?と考えた」

 「重版出来!」は当初、「火曜日はダメよ。」というタイトルでした。

 著者の松田奈緒子さんは今まで女性誌で描いていらして、スピリッツなので「お仕事モノにしましょう」と相談しました。松田さんは旦那様も妹さんも編集者なので「編集者マンガなら……」とお返事をいただき、最初に見せていただいたネームが「火曜日は校了日だからデートはダメよ!」というコメディータッチのマンガ編集者モノでした。

 そのネームも面白かったのですが、過去の“編集者マンガ”の名作たちが頭をよぎり、それらとの違いや13年に描く出版業界とは?と考え、私は松田さんの決めせりふが元々好きだったので、やはり熱いマンガを描いてほしいなと。

 そのため、(以前在籍していた)ヤングサンデーの休刊時に自分が編集部にいて感じたことをリポートにして松田さんに提出し、マンガ「岳」を仕掛けた営業担当や「売るプロ」である書店員さん、製版の神様と呼ばれている印刷所の方など……熱く働いている方々を松田さんに取材していただきました。

 それらの取材を経て「編集者から書店員までのチーム戦」、本を売る現場までを描く「重版出来!」というマンガが生まれました。

 おかげさまで発売5日で重版決定。著者の松田さんも「いろいろな方が関わってくださって描けました、皆さんのおかげです」とおっしゃってるのですが、読者の皆様まで、多くの方々の手でこのマンガを育てていただいているなあと痛感します。本当にありがたいです。

 ◇書店員の推薦文 伊吉書院類家店 中村深雪さん 「働く人、特に新社会人の方にオススメ」

 一つの作品が生まれ、本として形作られ読者の手元に届くまで、そこには単なる流通の仕組みだけでなく、工程に携わる人々の熱意、それがリレーのように伝わっていくドラマが存在するのです。読者の方はそんな裏側のことはもちろん知らなくていいのですけど、それを知ると書店での本選びがもっと楽しくなるかもしれません。また、組織で働く自分の役割をどう考え責任を果たすかということなど、出版業界に限らず働く人なら誰にでも共感ができ、学べることが多いのもこのマンガの魅力だと思います。新社会人の方に特にオススメしたい作品です。

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