ブック質問状:「ミステリガール」 ミステリー3冠作「二流小説家」著者の最新作

「ミステリガール」(早川書房)のカバー
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「ミステリガール」(早川書房)のカバー

 話題の書籍の魅力を担当編集者が語る「ブック質問状」。今回は、米作家のデイヴィッド・ゴードンさんのミステリー小説「ミステリガール」(早川書房)です。早川書房の山口晶さんに作品の魅力を聞きました。

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 −−この書籍の魅力は?

 上川隆也さん主演で日本で映画化された「二流小説家」の著者の最新作です。妻に捨てられた小説家志望の中年男が、探偵の助手となって再起を図るという筋立てなのですが、なんといっても登場人物がみな個性的なのが一番の魅力ですね。特に主人公・サムのダメっぷり、オタクっぷりは愛さずにいられません。また、後半の伝統的なミステリーの枠を打ち破るような趣向も読みどころです。

 −−翻訳を出版することになったきっかけは?

 やはり、著者のデビュー作だった「二流小説家」がベストミステリーランキング3冠(「このミステリーがすごい! 2012年版 海外編1位」「週刊文春ミステリーベスト10 2011年 海外部門1位」「ミステリが読みたい! 2012年版 海外編1位」)という偉業を成し遂げたこともあり、2作目もすぐに版権を取得しました。1作目は、どちらかといえば通好みのメタ・ミステリーだったので、あんなにたくさんの読者に支持していただいたのは意外でしたね。2作目は「二流小説家」のテイストを維持しながらも、さらにパワーアップしていると思います。

 −−作者は先日、来日したようですが、どんな方だったのでしょうか?

 かなりの文学・映画マニアでした。世界中の本や映画を見まくっているようです。大変なインテリだと思いますが、ある意味、マニアとか、オタクとかといってしまっていいかもしれません。日本の小説や映画にも詳しくて、「仁義なき戦い」「子連れ狼」「座頭市」のシリーズは全作見られているとか。来日時は、「仁義~」が撮影された、京都の東映スタジオに見学に行ってらっしゃいました。

 −−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。

 なんといっても、主人公というか、著者の語るうんちくが素晴らしいと思います。この本を読むと、読みたい本とか、見たい映画が増えすぎてしまって困ります。作業上は、その本や映画の邦題のチェックが大変でしたね。

 −−最後に読者へ一言お願いします。

 「ミステリガール」は、ゆっくり読んでほしい作品ですね。細部にもいろいろな仕掛けや含蓄(がんちく)があって、一気読みするよりはだらだらと少しずつ読んだ方が味わい深く、楽しく感じられると思います。これから読まれる方がうらやましいくらいの傑作です。

 早川書房 編集本部 山口晶

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