ブック質問状:「チャイルド・オブ・ゴッド」 マッカーシーの迫力ある文体 ノーベル文学賞候補?

「チャイルド・オブ・ゴッド」(早川書房)のカバー
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「チャイルド・オブ・ゴッド」(早川書房)のカバー

 話題の書籍の魅力を担当編集者が語る「ブック質問状」。今回は、米作家のコーマック・マッカーシーさん作、黒原敏行さん訳の「チャイルド・オブ・ゴッド」です。早川書房の永野渓子さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この書籍の魅力は?

 「チャイルド・オブ・ゴッド」は、1960年代のアメリカ・テネシー州の山あいの町を舞台に、レスター・バラードという名の青年が次第に社会とのつながりを失っていき、ついには凄惨(せいさん)な犯罪に手を染める様子を描いた小説です。衝動的な暴力、行き場のない欲望、身をさいなむ孤独を描写する徹底してリアルで乾いた文体は迫力にあふれています。また、シビアな描写に不思議に美しい風景が挟まれるのが魅力です。

 −−作者はどんな方でしょうか?

 作者のコーマック・マッカーシーは、現代アメリカを代表する作家です。1933年生まれなので今年80歳ですね。作品数は多くないのですが、研ぎ澄まされた文章と突きつめられた哲学的ともいえる思索は比類なく、毎年ノーベル文学賞を受賞するんじゃないかと言われています。「すべての美しい馬」や「ザ・ロード」など、映画化された作品をご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。この11月に公開される映画「悪の法則」ではオリジナル脚本を手がけています。

 −−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。

 マッカーシーの文章には思わず引き込まれ、仕事中でも圧倒されてぼんやりしてしまいました。一から本作りに関われたのは幸せでした。黒原敏行さんのすばらしい翻訳を最初に読めるのも役得ですね。大変だったことは、お恥ずかしいですが思いつきません……。

 −−最後に読者へ一言お願いします。

 コーマック・マッカーシーの作品には、実際に読んでみないと分からない強さがあります。強烈に心を揺さぶる何かがあります。ぜひお手にとっていただけるとうれしいです。

早川書房 第一編集部 永野渓子

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