ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
「HUNTER×HUNTER」のゴン役などで人気上昇中の声優・潘めぐみさんと、「機動戦士ガンダム」のララァ役などの声優としても知られる母親の潘恵子さんが、さまざまな思いや出来事を交換日記形式でつづります。今回は、“潘ちゃん”ことめぐみさんが、“潘さん”こと恵子さんと母子2代の“競演”を果たした映画「キャリー」(公開中)への思いを語ります。
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みなさん、おはようございます! こんにちは、こんばんは、はじめまして! 潘めぐみです!
さてさて、このあいさつも3回目となるということは、3カ月の時がたったということでしょうか。時がたつのも、あっという間です。しかしながら、この3カ月の間に、いろいろなことがありました。「振り返ってみれば、とても長く濃密な日々で」と、時間の経過について、そして、ある作品について、“潘さん”もおっしゃっておりました。
そう、その作品とは、30年以上の年月を経てリメークされ、現在公開中の映画「キャリー」です。本作で、私はキャリー役の吹き替えを担当させていただくこととなりました。
スティーブン・キングの同タイトルのホラー小説が原作となっている本作は、1976年に映画化されていて、シシー・スペイセクが演じた初代キャリー役の吹き替えを担当していたのが、私の母・潘さんだったのです。
お母さんがキャリーを演じたのも、今の私と同じ年のころだったね。そのときの話を小さいころから聞いていた私。母が「キャリー」に決まる前、母の身に起きた超常現象、収録現場でラストシーンを見て出演陣が絶叫した時の話。幼かった私は、どんな映画なのだろうと思いながら、お母さんは「もう少し時間がたってからね。見るときは誰かと一緒に見るのがいいわ」と、いつもさとしてくれていたよね。
それから私がキャリーと同い年くらいになった、ある日。
私が1人自室で勉強していた時のこと。突如、電源を切っていたCDプレーヤーが動き出し、最大ボリュームまで上がってしまったのです!
その時は、とにかくあわててボリュームを下げ、電源を切り、勉強に戻ったのだけれど、よく考えてみれば、CDプレーヤーの電源は切ってあって、ボタンじゃなくてツマミでボリューム調節するタイプだったから、誰かが触れない限り起動するなんてことはあり得ない。
この現象は、引っ越し先でも、CDプレーヤーを変えた後も、起こり続けました。しまいには、私が居間で母とご飯を食べていて、部屋にいない時にまで鳴り出したんです!
そのCDプレーヤーは、今でも使っているけれど、もうそういった現象は起きません。でもなぜか恐怖は感じなかったなあ。不思議な経験だったなあ。
そうして、今に至るわけだけれど、やっぱり、我が家に起きる超常現象は、ラッキー&ハッピーなことが多いね、お母さん。潘さんが30年前に初代キャリーを演じたこと。そして、キャリーを演じる前に超常現象を体験していたこと、必然か、運命か、重なるように……。
2013年版の「キャリー」でキャリー役を演じたクロエ・グレース・モレッツ。実は、彼女の吹き替えを担当するのは、今回が2度目です。
私が初めてクロエに出会ったのは、日本で2011年に公開された映画「モールス」。
クロエ演じる吸血鬼のアビーがオーウェンという少年に出会い、モールス信号を通じて心を通わせていく。甘くも苦い、時として残酷な、切ない物語。この作品は、私にとって初めての吹き替えを経験させていただいた作品で、このとき初めて彼女に声を当てたのでした。
その1年後ぐらいに「キャリー」のリメークの話を聞き、そのキャリーをクロエが演じることになったと聞いたのです。
潘さんと私は「キャリー、できたらいいね」と、“たられば”の話を冗談のように話していたのですが、まさか、実際に演じさせていただけるとは、夢にも思わず。そして、今回の「キャリー」で、私はキャリーを、母の潘さんもキャリーの母・マーガレットを演じさせていただくことになりました。
潘さんとは今まで数回共演していますが、吹き替えで共演したのは、今回が初めて。
一緒に住んでいる手前、台本とリハーサル用の映像をチェックするタイミングが潘さんと同じになることも多いのですが、今回も他の現場同様「初めて相手と掛け合うのは現場で」という状態を心がけました。
というのも、一緒にせりふを掛け合い始めると、ああでもない、こうでもないという芝居の討論から、いつしか「昨日、トイレの電気消し忘れてたわよ!」とたわいもない親子ゲンカへと発展(?)してしまうんです……。
それでも、同じ家に住んでいることもあり、互いに練習する姿が見えたり、声が聞こえたりする状況はありましたが、今回は、互いが互いに練習している姿や声を見聞きすることはなかったのです。
収録日も、潘さんと私は、それぞれ別の日でした。
しかしながら、収録したスタジオは母が演じた後の同じ場所。今回「キャリー」を収録したスタジオは、私が母のおなかの中にいたころから通っていた場所だったのです。なんとも言えぬ、不思議な感覚に見舞われながら、母の声に、お芝居に、想像を巡らせて、すべての感情を全身全霊で表現しました。
演じ終えた瞬間に「キャリー」という作品が時を超えて伝承されたように思えて。母と同じ役を演じさせていただいた上に、共演させていただけたこと、本当に光栄なことだと、出会えた全ての人に感謝しています。この仕事を始めてからというもの、運命的なものをより感じるようになりました。
そして、さらに、運命的な出来事が起きたのです。
日本での「キャリー」公開に向けて来日していた彼女、クロエとの対談が実現したのです。「めざましテレビ」さんの企画で、母と2人、クロエにインタビューをするというすてきな機会をいただきました。
ハリウッド映画の、主演の女優さんに会える機会なんてめったにないこと。それも自分が初めて吹き替えをした女優さんで、今回、会えるキッカケとなった作品が、母と2代にわたって吹き替えを担当した「キャリー」。
本人を目の前に、この感動をうまく表現できなくて、インタビューが終わり、クロエと感謝と別れの言葉を交わした瞬間、涙となってあふれ出てしまいました。母もまた目に涙を浮かべて。そんな親子をクロエは、そっと抱き締めてくれました。
今もこうして言葉にしている最中にも視界がにじんできてしまうのですが、彼女は、本当に堂々としていて、すてきな女優さんでした。キレイでキュート、クールでホット。全ての要素が彼女の中に凝縮されていて、それらが惜しみもなく言葉や仕草にあふれていたのです。はあ、本当にすてきだった……。と、幸せのため息、おすそ分け。
現在公開中の「キャリー」は、ホラーにカテゴライズされながらも、本当に怖いのは霊ではなく人であるということ、そして、その人のみにくさや怒り、痛みや苦しみ、喜びや悲しみが、思春期の中で痛烈に描かれています。76年版の「キャリー」を見られた方も、今回「キャリー」を初めて見られる方も、何かを感じていただける作品だと思っています。キャリーと同じティーンエージャーの方にも、ぜひ見ていただけたらうれしいですし、字幕版と吹き替え版、両方見ていただけるともっとうれしいです(笑い)。
そうそう、劇場版といえば「キャリー」の収録と同時期くらいに「劇場版 HUNTER×HUNTER~The LAST MISSION~」を収録しておりました。
「HUNTER×HUNTER」の劇場版第2弾です。12月27日ロードショーということで、公開まであと1カ月ほどとなりました。今回も豪華なゲストの方々をお迎えしております。去年の劇場版から1年がたったと思うと、これまた時間の流れの速さにおどろきを隠せずにはいられません。
まだまだ語りたい気持ちですが、公開寸前まで気持ちを高めつつ、次回のコラムで思いのたけを言葉にするため、この辺で、潘さんにお渡しすることにしましょう。
潘めぐみ(はん・めぐみ)=1989年、東京都生まれ。2008年に映画「櫻の園」の一般公募オーディションに合格し女優デビュー。ドラマ「オトメン−乙男−」のほか舞台などにも出演。11年に、100人を超えるオーディションをへて、アニメ「HUNTER×HUNTER」の主人公・ゴン役に抜てきされた。アニメ「ジュエルペット ハッピネス」の月影ちあり役、ゲーム「The Last of Us」のエリー役などを好演し注目を集めている。
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