77歳の婚活を描いた異色作「燦燦−さんさん−」が16日、公開された。吉行和子さんが70代のヒロインを可愛らしく演じていて、笑いと涙を誘う。メガホンをとったのは今作が長編デビュー作となった外山文治監督。33歳の若い監督が高齢者の心情をすくいとり、現代の社会を映し出す。「第6回シネマプロットコンペティション2011」グランプリとSKIPシティ賞をダブル受賞した。
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鶴本たゑ(吉行さん)は77歳。街の結婚相談所のショーウインドーに飾られたウエディングドレスに引きつけられ、残された時間を充実して輝きたい……という思いから婚活を始めることにする。介護の末、夫を亡くしたたゑは、団地で1人暮らしだ。老人クラブ「燦燦会」に所属しているが、本当はお年寄りじみた活動があまり好きではない。たゑの亡き夫の親友で「燦燦会」会長の森口慎二(宝田明さん)に異論を唱えられても、「毎日がスタートライン」をモットーに、お見合いを重ねていく。結婚相談所の女性担当者も、次第にたゑを応援するようになっていく。ある日、ついにもう一度会ってみたいと思わせる男性が見つかった。その男、能勢雄一郎(山本學さん)と初デートに出かけ、幸せを感じるたゑだったが……という展開。
新人監督の下に吉行さん、宝田さん、山本さんという名優たちが集まった! それだけ脚本と企画が面白かったのだろうと想像させるが、その期待を裏切らない出来だ。吉行さんが演じるたゑは素直で可愛らしく、見ているだけで楽しい。お見合い用の映像に「主人の看病を10年しました」といちずさをアピール。宝田さんも、ダンディーだが不器用な男を軽妙なタッチで演じ、クスクス笑いを誘う。“王子様”役の山本さんは、爽やかにテニスで奮闘する。70代も体力が年々アップする現代。この世代の明るさを描きながら、後半から介護、死、孤独といった要素も盛り込まれ、生きていれば誰にもやってくる「老い」のシビアな面にも目を向けさせる。とはいうものの、映画全編をたゑの芯の強さと行動力が覆っていて、明るい映画に仕上がっている。たゑの内面を表現したようなピアノ音楽もいい味わいだ。70代のニューヒロインの誕生だ。ヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほか全国で順次公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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