今年流行した言葉を決める「2013 ユーキャン新語・流行語大賞」の候補が20日に発表された。予備校講師の林修さんの「今でしょ」、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」の「じぇじぇじぇ」、連続ドラマ「半沢直樹」の「倍返し」などの流行語が50語ノミネートされた。その中の一つ、「こじらせ女子」は、Yahoo!検索急上昇ワードでもランクインするなど話題になっている。もともとは雨宮まみさんのエッセー「女子をこじらせて」(ポット出版)から広まったこの言葉。いったいどういう意味、どんな女性を表した言葉なのか。“生みの親”の雨宮さんに聞いた。(毎日新聞デジタル)
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「こじらせ女子」とは、2011年12月に出版された雨宮さんのエッセー「女子をこじらせて」から派生した言葉で、自らの女性性に自信が持てなかったり、自意識にとらわれ、世間でいう“女性らしさ”に抵抗を感じ、生きづらさを感じている女性のことを指す。モテないというニュアンスが強い“非モテ”や“喪女”という言葉もあるが、「こじらせ女子」は異性との交際経験もあって周りからは“普通の”女性と見られていても、女性としての自分に自信がなかったり、そのために自己評価が低かったりするなど、女性の内面や自意識に焦点を当てた言葉だ。「こじらせ女子」という言葉が生まれたことで、今まで世間から見えにくかった“こじらせている”女性の存在が浮かび上がったといえる。
「女子をこじらせて」はライターの雨宮さんの自伝的エッセーで、雨宮さんが女性には珍しいAVライターという職業に就いたいきさつを振り返りながら、雨宮さん自身がどう「女」を「こじらせて」きたのかという雨宮さんの“こじらせ半生”をつづった本だ。「スクールカースト」の最下層にいることを自覚し、“女として価値がない”と確信したあまり、個性的なファッションや行動に走った学生時代のエピソードなどを赤裸々につづっている。
「こじらせ女子」の“生みの親”となった雨宮さんは新語・流行語大賞にノミネートされた率直な気持ちを「『なんか、とんでもないところまできちゃったな』という感じです。日本ってどうなってるんだろう?と思いました」と驚きを隠せない様子だった。
◇こじらせについて語る論客が活躍
「女子をこじらせて」の出版から丸2年がたとうとしているが、この2年間で「こじらせ女子」や「こじらせ」について語る論客が雑誌やテレビ、ラジオといったメディアに頻繁に出演するなど活躍の幅を広めている。「モテキ」で知られるマンガ家の久保ミツロウさんと「くすぶれ!モテない系」(07年)などの著書で知られるエッセイストの能町みね子さんがパーソナリティーを務める深夜ラジオ「久保ミツロウ・能町みね子のオールナイトニッポン」(毎週火曜深夜1時)は、2人が夜な夜な繰り広げるローテンショントークが話題となり、13年4月に深夜3時の放送帯の「2部」から「1部」へ昇格した。また、12年12月から不定期で放送されていた久保さんと音楽プロデューサーのヒャダインこと前山田健一さんがこじらせトークを展開するバラエティー番組「久保ヒャダこじらせナイト」(フジテレビ)も13年10月から能町さんを迎え「久保みねヒャダこじらせナイト」としてレギュラー化(毎週土曜深夜1時35~55分)し好評を博している。
一方、出版界でも今年8月に新潮社から女性誌「ROLa(ローラ)」が創刊され、新風を吹き込んだ。同誌は28歳を中心とした20代後半から30代前半の女性をターゲットとしたカルチャー系女性誌。“こじらせ女子”がターゲットとは銘打ってはいないものの、「恋より楽しいことがある」をキャッチコピーに、マンガ家の峰なゆかさん、コラムニストの少年アヤちゃんといった「こじらせ女子」の支持を集める執筆陣が才筆を振るっている。
雨宮さんに入賞への期待を聞くと「かつてない勢いで真剣に予想してみましたが、大賞は確実にないと思います(笑い)。強豪ぞろいの中、10位以内にランクインできたらうれしいですね」と話す。雨宮さんは「劣等感や卑屈さに『どうせ私は』と開き直ったり、あきらめたりするのではなく、それに向き合って乗り越えようともがいているのが、心正しいこじらせ女子の姿」という。そしてこじらせ女子に向けても「生きてる限り、劣等感を感じることは誰でもある。たまたまこじらせてしまった人生でも、楽しんで、心のままに生きていきましょう!」とエールを送っている。
新語・流行語大賞は「現代用語の基礎知識」(自由国民社)の読者審査員のアンケートで候補語を選出し、選考委員会がトップテンと年間大賞を選出する。今年の発表は12月2日を予定している。